第40話

文字数 2,716文字

回の2
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ロボサムライ駆ける■第38回-2ロボットの反乱に手を焼いたロセンデール卿は、秘密兵器をだす。それに対峙する早乙女モンドにロボガール知恵より取り返した愛刀ムラマサが手渡される。

ロボサムライ駆ける■第38回-2■第五章 機械城(2)


 ロセンデール卿は、もう下の動きが気になっていて、思わず安全な艦橋の特殊グラス展望台、別名、金魚鉢から出て、下にいる自分のロボットたちに直接叫んでいた。
 見上げるロボットたち。一瞬、ロセンデールと早乙女主水の眼があった。
「これはロセンデール卿ではござらぬか」
 主水はにらみつける。ロセンデールも顔を真っ赤にし、どなり返す。
「主水くん、ここがあなたの墓場ですよ、覚悟しなさい」
 が、主水の手練の剣は、次々とロセンデール卿のロボット軍団をなますにして行く。残るはロボットのがらくた。
「ええい、秘密兵器を出しなさい」
 様子を見て怒り狂うロセンデール卿だ。
「でも、殿下、あれは、特別では」
 鷲顔のクルトフが、注意をうながした。
「あやつ、主水くんは私にとって生まれながらの宿敵なのです。できれば自分の手で戦いたいものです」
 ロセンデールが、クルトフや水野たちに言う。
「殿下、そ、それは、お止めください。この状態です。日本の反乱ロボットを収拾するだけでも一苦労いたしておるのですぞ」
 じゃがいも顔のシュトルフが言った。
「まあ、よいでしょう。ではあやつ主水くんを、反乱ロボットの見せしめとしましょう」
「何ですと」クルトフが言う。
「いいですか、早乙女主水君、我々が代表してロボットを西日本都市連合に送り込みます。そのロボットに勝てば、お主ら反乱ロボットの意見に耳を傾けましょう」
 ロセンデール卿は、美しい顔ににやりと恐ろしい笑みを見せながら言う。
「いかぬ、罠じゃ。早乙女殿、止められるがよい」
 味方の反乱ロボットが言う。
「そうじゃ、名指しじゃ」
「が、拙者はロボット旗本の武士でござる。相手からの挑戦を断ったとあっては、ロボット武名に響きまする」
 ロセンデール卿を見上げて、声を引き絞る。
「しかとあいわかった。ロセンデール卿。私が勝てば話を聞くというのじゃな。皆様方、争いの手をしばし休められい。この早乙女主水が皆様にかわって、体制側の繰り出すロボットと一対一で戦い申す」
 あたりはシーンと静まり返る。
 一体どんなロボットが出現するのか。固唾を呑んで見守る。
 飛行機用甲板に、そいつがエレベーターとともに競り上がって来た。
 バイオコプター群がガチャガチャと音を立て始める。自らの機械を解体し始めた。それが中央で集まり、姿を取り始める。
 やがて、甲板上には巨人が立っていた。
バイオコぷたーが、合体したのだ。大仏ロボットの移動の秘密はこれである。

 黄金の大仏ロボットである。
 大仏は座禅を組んでいたが、ゆっくりと立ち上がる。
 空母がぐらりと傾く。全長三十メートルであった。
「よろしいか。主水くん、大仏が相手です」
「相手に不足なし」
 と大音声で答えるが、主水はびびっていた。果たしてこれを倒すことができるのか。氾濫の様子はなにわテレビで流されている。
「むちゃやがな」
 これが試合を見ている大阪人、大多数の反応だった。
「卑怯だっせ、ロセンデールはん」
 主水の前に大仏が立っている。
 反乱ロボットの何人かが口にだしていた。
 大きい。
 ともかく普通の相手ではない。主水も攻撃方法を考えあぐねていた。その図体にも拘わらず、所作の素早いのが気に掛かる。腕の一振りでもまともに受けてしまえば、恐らく主水の体はぺっちゃんこになってしまうだろう。主水の体機能は、むろんすべて麻痺してしまう。
 そうならないようにどうすればよいか、主水も考えているのである。
「主水のおじさん、ムラマサだよ」
 反乱ロボットの中から、誰かが主水の刀ムラマサを投げて寄越した。
主水は刀をハッシと受け取る。国境の検問所で取り上げられた刀である。
「おお…、これは…、どなたか知らぬが、ありがとうござる」
 ムラマサを掴み、いままでの剣闘士の刀と両刀を構える主水だった。
 鑑橋の上を見る。知恵が主水に手を振っていた。
「がんばりーに。主水のおじさん」
 どうしてこのムラマサを、と聞きたい主水だったが、今はそれどころではない。
 が、いかんせん、飛行甲板の上では限られている。地上で戦う必要があるだろう。一瞬、主水は大仏の方に向かい、走り続けた。
 すわ、戦いをすすめるかと皆注目する。が、主水は大仏の手に捕まる前に、足元を通り過ぎ、甲板の端まで来ていた。
「大仏、ここまでこい」
 そう大声で叫び、甲板から水面へ飛び降りた。大仏も、甲板から海上へ。大仏のジャンプの瞬間、流石の空母「ライオン」もぐらりと揺れた。大波が起こり、波の上の主水は、やがて港の上に投げ出されている。
「おじさん、早く、あの大仏を穴の中に落とし込むんだよ」
主水に知恵が叫ぶ。が聞こえない。
『大仏に勝つには、穴じゃ、穴に連れて行くのじゃ』
 続いて、誰かが叫んでいた。
この声はどうやら主水のみに聞こえるようである。心の中に直接届いているよであった。聞いたことのある声だった。
「穴ですと」
 空に向かって、主水はうめく。どういう意味なのか。
『ええい、じっれったい奴じゃの。お前が穴を掘っておったろうが。あの地盤の弱いところまで連れて行くのじゃ』
 その声にはあせりが見えていた。
「なるほど、わかり申した」
 主水は、大仏ロボットの攻撃をうまくかわし、走りに走った。マラソンではないが、丘を越え、山を越え、川を越えといいたいが、近畿新平野はフラットなので、主水はジグザクに走る。
いままで、こんなに必死で走ったことはない。まるでマラソンランナーである。 
空母の人々は思う。あいつら、一体どこまで。主水の奴、逃げたのかとか。なさけないなあとか、色々憶測を呼んでいた。
「ここだ」
 思わず叫ぶ主水だった。主水の足元が、違う。体の感覚が告げていた。問題の地へやっとついた。一時間ばかり走っていただろうか。
「ここを戦いの場所としよう」
 続いて疾走して来る大仏を待ち構える主水。大仏がその地に足をつけた瞬間、地面が割れ、大仏と主水は体ごと地中へ。
大暗渠である。
簡単にいえば落とし穴。
 ロセンデール卿たちは、二人のロボットを追って映像を送って来る監視ヘリを送っていた。
「いかん、化野(あだしの)まで連れていかれたぞ」
 空母の上で叫ぶロセンデール。
(続く)

ロボサムライ駆ける第五章 ■ロボサムライ駆ける■
38回の2
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