第12話

文字数 2,618文字

ロボサムライ駆ける■第13回 霊能師、落合レイモンの関西下りが始まる。異様なる行列は東日本都市連合の力を見せつけるためでもある。早乙女主水も同道した。

ロボサムライ駆ける■第13回 第三章 霊能師(2)
第三章 霊能師(2)

■霊能士 落合レイモン屋敷前

 出発日がやって来た。
 主水は落合レイモンの屋敷に旅装で出向く。予備の品をいれた旅装バックパックである。門前が騒がしい。
「何だ、この行列は」
「おお、よいところへ来られた、主水殿。我が行列に加わられい」
 ざわめく人々の群から夜叉丸が現れ、挨拶する。
「夜叉丸様、この行列は」
「我がレイモン様の御行列じゃ。このまま復旧しつつある東海道高速道路をくだる」
「が、この行列、まるで大名行列ではござらぬか」
 というよりもチンドンヤかと、思いが頭をかすめた。
「よいか主水殿。今度のこの落合レイモンの西下りは、東日本都市連合の力を見せることにもあるのじゃ。またまた落合レイモンの霊能師としての力を見せつけなければならぬ。その威光を見せつける行列でじゃ。装飾の一部と思ってくれ」
 金属でできた機械籠が四つ。加えてそれを抱えて進むカーゴ型送行ロボットが数機。
先触れを伝えるスピーカーロボットが四機。
レイモンの旗持ちロボット十機。
東日本都市連合の各市の旗を持つ旗ロボット二百機。生命液、潤滑油、洗浄液などを運ぶタンク型ロボット二十台。
警備隊ロボット三百機などなど。 
おまけは振袖チアガールズだった。振袖でありながら、下位置はミニスカートになつている和洋折衷のコスチュームをきた妙齢の三十名の女性群。まるで色物の世界である。
 主水はくらくらと、倒れそうだった。さすがにロボットなので倒れはしなかったが。
「これでは、私など必要ないのではございませんか」
 嫌みを言う。
「そうはいかぬ。よいか、主水殿は護衛ロボットとはいえ、徳川公の使い番でもあらせられる。従って、カゴ形バンを用意しておる。どうぞお使い下されい」
 夜叉丸は行列の後ろにある、行列よりもっと悪趣味なバンを示した。ゴテゴテした装飾がバンのスタイルをくずしている。
うむ」
 主水は逃げ腰になった。ひらめいた。よーしこれでいこう。断りの文句は。
「夜叉丸どの、私はこの籠の回りを警戒いたしましょう」
「と、いわれると」
「遊軍でござる」
「主水どの、まさか、我が行列をあざ笑っているのではあるまいな」
「いえさようなことはございませぬ」
 おぬしよく分かってるのじゃないと思う主水であった。
続く続く20240531改訂

13回
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14回

ロボサムライ駆ける■第14回■バイオ林の中から、霊能者、落合レイモン一行を探る西日本都市連合が派遣したロボ忍者達。しかしレイモンの『霊返し』で一人が倒れた。

ロボサムライ駆ける■第14回■第三章 霊能師(3)

■東海道沿岸
 復旧しつつある東海道は中世世界のようになっていてとても静なのだ。
 特に早朝は、鳥たちの歌声がハーモニーを奏で、道いく人々の気持ちを和ませるのだが。 今、この東海道は、『いろは組』によって復旧工事が急がれていた。
 静寂の中ににぎやかな音がだんだんと近づいてくる。工事中のロボットたちが手を休めた。
「あの騒がしい、恥ずかしいご一行は」
 工事中の東海道を下る一行を見ていたロボットの一人が尋ねた。
「おお、あの昔、騒音条例があったころなら絶対つかまっておる団体か」
わざとらしい説明を付け加えるロボットだった。
「知らないのか、霊能師落合レイモン様のご一行じゃ」
 もう一人が答える。
 ロボット工事集団「いろは組」にしきられたはぐれロボットの一群が、道路復興の建築工事を行い、そのエリアの霊写真をとらされていた。霊戦争のおり、なくなった人々の過去の霊をなぐさめるのである。
 このあたりは、空中衛星ボルテックスによって滅びた全日本連邦軍の残滓がいまだに発見される所である。にぎやかに打ち騒ぐ一団が通っているのはもとの高速道路である。
 近くに森林地帯が広がっていた。霊戦争後の生やした比較的新しい森林である。
 この東海道から遠く離れたバイオ林の中から、この一行をのぞきみる四つの眼。
突然、うめき声を上げて、その一人が倒れた。
「うっ、何ごと」
 もう一人が相棒を介抱する。が、事切れている。
咄嗟に自分たちが仕掛けた罠が返されたことを知る。
「恐るべきよ、レイモン」
 残った一人は独りごちた。
 二人は西日本都市連合が派遣したロボ忍群であった。
落合レイモンの霊力を調べるために、ここまで遣わされていた。
 霊写真を盗み取ることで、実力のほどを調べようとしていたが、逆に落合レイモンの『お霊返し』の術でロボ忍の一人が倒れたのだ。
 『霊返し』とは、霊写真への霊力を、送った本人に何倍もの霊力に倍増して返すものである。
「おじさんたち、何しているんだい」
 その時、背後から、子供ロボットが急に現れていた。
作業ロボットらしく、蓬髪で、汚れた小袖姿である。賢そうな顔をしている。というかやんちゃな顔である。
靴みがき少年の顔である。漫画の古典[ジャリンコちえ]タイプの顔である。
『いろは組』のはんてんを着ている。
「何でもない、あっちへいけ」
「おじさんが倒れているじゃない、大変だ」 といいつつ、子供はそのおじさんの顔を踏んでいた。
「大丈夫ぶーい」
 と叫んでいる。
「こやつ、騒ぐとためにならぬぞ」
「ははっ、わかったぞ。おじさんたち、忍びのロボットだね」
「なぜ、わかった」
「だ-って、忍者スーツをきているんだもん」 どーっとすべりそうになるロボ忍者。
「小僧、我々の姿を見たからには生かしてはおかぬ」
「うわっ、やめておくれよ、くれよ」
 その「ジャリンコちえ」風の、子供ロボットは逃げようとした
「まて、まて」
 続いて旅装姿の侍ロボットが急に現れ、子供を庇う。
「貴様、何やつ」
 叫び、身構える忍者ロボット。
「待ってました」
 子供は叫ぶ。
 深編み笠が空中に、まるでフリスビーのように勢いよく飛んでくる。すんでのところでこのロボ忍は、深編み笠から逃れた。それは近くのバイオ樹木に深く突き刺さる。
 (こやつできる)
 そうロボット忍者は読んだ。このフリスビー野郎には、助成を頼んだ方が得策だろう。 後詰めの連中が別にいるのである。
続く20240531改訂

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

14回
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