第28話

文字数 2,540文字


ロボサムライ駆ける
■第28回 東京の徳川公、徳川空軍の飛行船をつかい西日本に侵入し、徳川公国ロボ侍早乙女モンドを西日本からすくい出せと、モンドの妻に依頼する。

ロボサムライ駆ける■第28回 第四章 剣闘士(2)

「何でございます」マリアが、叫ぶ。
「落合レイモン閣下はいかがなされたですか」マリアは尋ねた。
「レイモン殿も行方不明じゃ」
「た、大変だあ」
 鉄が飛び上がった。
「何の手掛かりもないのでございますか」
 マリアが続いて尋ねる。
「そうなのじゃ、レイモンの行列だけはかえってきよった」
「大変だよ。モンドのだんながバラバラにされちゃって、今頃は大阪のロボットごみの島のごみ捨て場の中だよ」
 急に鉄が泣き声を上げて人工涙をよよと流し始める。
「おい、おい」
 徳川公が驚いている。
「鉄、先走って騒ぐなというに。それでお前たちに助けて欲しいのじゃ」
「わかりました。がってんだ。西日本都市連合め、眼にものを見せてくれるってんだ。ねえ、姐さん」
「鉄さん、落ち着きなさいませ。あなた、頭のボルトが三本くらいおっこちているんじゃございませんか」
「あーあ、姐さんも酷いことをおっしゃる。私がこんなにだんなのことを心配しているってえのに」
「鉄、頼むから、静かに私の話を聞いてくれ」 徳川公が呆れている。
「だから、静かに聞いてるじゃありませんか。あっしのどこがうるさいってんいすかい」
「この、へらず口」
「あーあ、どうせ、あっしはへらず口でござんすよ。あっしはこの体に生まれつく前から口だけでしゃべってたってことで有名なロボットでござんす」
 鉄もしゃべりだすと止まらない。
「わかった、鉄。お前とマリアで、主水を探しに行ってくれ。そしてレイモン殿をな」
「わかりやした。さすがは殿様だ。家来の難儀をほってはおけない。さすが名君。世界で一番偉い殿様ってのは、徳川公のことだね。地球史に残る。ほんとに、この…」
 しゃべりのエンジンがかかって、どんどんがなっているのだ。
「マリア、この男、大丈夫かのお。役にたつ、、、」
「お任せくださいませ」
 マリアは、鉄の首の一点を急につかむ。
「な。何をするんですかい。姐さん」
「あなたのその役たたずの口を塞ぐつもりです」
「それはいけねえや。ロボット人権を認め…」
 あとは無音となる。鉄は口をパクパクさせているが、声は聞こえて来ない。マリアが鉄の声のアンプを切ったのだ。
「あ、これで、そちと話ができる」
「いかようにして私たちは西日本へ参りましょうか」
「済まぬが、徳川空軍の飛行船で行ってくれぬか」
「飛行船でございますか」
「そうじゃ、陸上を移動すると、どうも眼につくのでのう。それに、お前は外国ロボットじゃ、よけいにのう」
「わかりました。もし主水様を見つけましたら、いかがいたしましょう」
「捕らわれておれば助けだし、二人でもってロセンデールの野望を探って欲しいのじゃ。おお、そういえばマリアは、ロセンデール卿を知っておったのう」
「さようでございます」
 マリアは顔色一つ変えなかった。
(続く)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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28回ロボサムライ駆ける
■第29回 早乙女モンドの妻マリアは神聖ゲルマン帝国の出身であり、西日本に向け出発。しかし、西日本のロボ忍者花村一去が、逆に東京城を襲い徳川公を拉致する。

ロボサムライ駆ける■第29回 第4章 剣闘士(3)

■早乙女主水の屋敷アパート。

「ロセンデール公とは、神聖ゲルマン帝国のルドルフ大王の宮廷で、何度かお目にかかっております」マリアは顔色一つ冷静に話す。
「どうじゃ、お主はゲルマン製ロボット。いざというとき、つまり、もしロセンデールと戦わなければならなくなったとき、そちは徳川、いや日本のために戦ってくれるかのう」
「もちろんのことでございます。私を受け入れてくれました日本こそ、今の私の故郷でございます」
「それは、ありがたい」
 といいつつも、不安を隠せない徳川公廣だった。
もしマリアが変身するような事があったらどうなるのだ。
マリアの変身は、世界に恐ろしい効果を及ばす。
マリアの体にゲルマン製だけにいろんな秘密があるのだ。
その心配が幸いに徳川公廣の心を占めていた。
が、他に方法はないのだ。
「鉄、よいか。今からお前は旗本に回状を出して皆を集めよ。一丸となって、大阪湾に向かうのじゃ。ロセンデールの野望を崩せ。頼むぞ、マリア」
「わかりました殿様。お望みの通りにいたしましょう」
     ◆
 三時間後、

鉄、マリア、そして徳川公がつかえわせたロボット旗本組の面々は、徳川空軍機「高千穂」「飛天」に乗り込み、西日本へと向かった。
 徳川空軍基地から飛行船が飛び立つのを見送る男が一人。
「これで仕事がやりやすくなったわ」
 その影は走り去った。
     ◆
 その日の夜、東京城の建物は、夜風が吹いてビューツと唸っている。上層から東京の夜景が奇麗に見える。
徳川公廣は、その夜景を楽しんでいた。
「徳川公でござるか」
 急に声がした。
「誰じゃ」
 徳川公は回りを見る。
数十メートルの高さにある、東京城展望オフィスの窓から侵入して来るものがあった。
展望オフィス警報装置は作動していない。
その男は黒い服で身を固めている。顔も覆面で隠れている。
「貴様、何奴」
 徳川公は小刀を引き抜いていた。
「やつがれは、西日本都市連合に仕えるロボ忍。花村一去(いっきょ)でござる。お見知りおきいただきたい」
 ぐいと徳川公に近づいて来る。
「その一去とやらが、余に何用がある。また、この東京城の展望オフィスまで、どうやって上がってきたのじゃ」
 あとずさりしながら徳川公は問いただす。
「ふっふ、ロボ忍にとってはたやすいこと」
「が、我らが護衛いかがいたした」
「全員、眠っていただいており申す」
「くそっ、肝心のおり役にたたない奴らじゃ」
「何しろ、ロボ忍者は、西日本が、もともとの生産の本場にて。徳川公、お体をお預かり申す」
「何を申すか」
一瞬後、徳川公は花村の当て身を食らわされていた。
「ふふっ、たわいもないのう」
にやりと笑う花村の笑みに折から上がる月の光が凄絶な凄みを与えている。
(続く)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
29回
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