第25話

文字数 1,458文字

ロボサムライ駆ける
■第25回左腕を失い侍衣装を剥がれた主水は、
ロセンデール卿の機械城地下にあるロボ獄に、
ロボット精神懐柔師サイモンから取調べをうける。しかし東日本のロボ侍身分が証明できない。

ロボサムライ駆ける■第25回
第四章 剣闘士1)

 ■機械城の牢獄

ゆっくりと主水の意識が戻ってきた。
両眼が開く。
体の下の冷たさが感じられた。
「気が付いたかね」
 見知らぬロボットの顔が主水の前にある。
「ここは」
 周りを見る。ぼんやりと薄暗い冷たい石の壁。蛍光灯の照明が、天井からぶら下がって揺れていた。
厳重な扉がロボットの後ろに見える。
このロボットは僧服をきていた。
 死二三郎に切り取られた左腕はなく隻腕そのままで、応急に処置されているだけだ。
着物も剥ぎ取られていた。まるで奴隷ロボット扱いだ。
「ここか。ここは機械城の中だ」
 相手は高飛車に言う。
「お主は」
「私か。自己紹介しよう。私はロボット精神懐柔師サイモンだ」
「精神懐柔師だと、止めてくれ、私は由緒正しいロボザムライだ」
精神懐柔師とは、品行の良くないロボットの精神を悔い改めさせ元の従順なロボットにしたてる
ロボットである。聖職であった。は
「これは、これは、世迷い事を、お主言っておるのう。どこにその証拠がある」
 サイモンは驚きながら言う。
「この私の右肩にある桜吹雪マークと、製造コードを調べてくれればわかる」マークとコードはロボットのアイデンティである。
 サイモンは念入りに主水の体を自分を見てみる。
「そのようなものはない」
「そんなはずは」主水も調べる。確かにない。
 マークとコードは知らぬ間に巧妙に削り取られている。そのコードとマークがなければ
身分を証明するものがないのだ。さらに、主水は続けた。
「新京都ホテルにお泊まりになっておられる、霊媒師、落合レイモン閣下に連絡をとってくれれば、すべてはわかる」
 サイモンは連絡を取るために外に出て行ったが、やがて戻ってきた。
「落合レイモン閣下のご一行は、すでに京都を離れ、東日本に帰られた。東日本政府にも連絡をとったが、早乙女主水なるロボザムライ、現在、東京市にいるとの連絡があった。我々に無駄な労力をかけさせたな。このお返しはたっぷりとしてくれる」
 サイモンは、冷たく笑った。
「待ってくだされ。それは何かの間違いでござる。今一度、お調べくだされ」
 サイモンは無言で、別のロボットに主水を引き渡した。
「こやつを例のところへ。性懲りのないロボットだ。鍛えなおしてくかわそう」
 主水は、機械城の地下にあるロボ獄につれていかれる。
反乱ロボット専用の獄舎である。
 暗い。照明がない。太陽の光りも差し込んでこない。
機械油のすえた匂いがした。
加えて、何かが腐敗しているようだ。
獄の中には数体のロボットがすでに入っている。
「ここで待っておれ、いずれご沙汰がある」
 ロボットは言い置いた。
獄の中は、不法を働いたロボットで一杯だった。
ここに連れ込まれる折、手荒なことをされたらしく、各々のボディはかなり痛んでいる。手足のもぎ取られているロボットも何体かある。
「お前さん、どんな悪事を働いたのかね」
 ドアが閉まると一人のロボットが擦り寄って話しかけてきた。
「失礼ながら、貴公は」
「貴公ときたか、お前さん、服装を剥ぎ取られているからわからないが、お侍さんかい」
「さようじゃ」
「へっへっへっ、よけいにかわいそうにね」
 言葉の裏には何かを隠しているようだ。
「待て、その笑いはどういう意味だ」
「知らないのかね。かわいそうにね」
 はっきりとは答えぬ。
(続く)
25回
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