ナナシのネガティブなレジ待ち
文字数 2,155文字
あの人はなぜ自分と同じ
陰キャという人種であるにも関わらず
サービス業などという
とんでもなくハードルの高い仕事を選んでしまったのか?
短時間で何十人、何百人の見知らぬ人々と接触しなくてはならないなんて
もはや拷問以外の何ものでもないではないか!
違うっ、違うのだ、
そうではないのだ!
これはあくまで会計する際のリスクや効率生を重視した結果であって
決してレジの女性が可愛いからとか
あわよくばお釣りをもらう際に、お互いの手と手が微接触することを期待しているとか
そういうことでは断じてないのだっ!
どうかそこだけは誤解しないで欲しい!
しかし、ナナシが列に並ぼうとすると、先程のオネイサンが横からスッと入って来て先に並んでしまう。
い、いかん……
これではまた、
たまたま偶然同じタイミングで
レジに並んだ風を装って、
本当はオネイサンと
ラッキースケベ的な接触を期待して、ずっと後を追い回している
盛りのついた高校生のようになってしまうではないか
しばらくしてようやく自分が思うような順番で、レジの待機列に並ぶことが出来たナナシ。
レジの店員は
「いくらになります」とか
「いくらのお釣りです」とか
決まった定型のセリフを言うだろうが
こちらは何も言わなくても特に問題はない
そもそも会話を必要としてすらいないのだ
だから、キリのいいお釣りをもらおうとか、大それたことを考えなければ
どうということはない
もしキリよくお金を出そうなんてして
端数の一円玉を財布から出すのに
手間取ってモタモタしてしまったら
待っているみなさんに、どうやって詫びればいいと言うのだ?
あの地獄のような空気感、
想像するだけで身震いしてしまう
そんな遅延行為をしでかすなど
人としてあってはならないこと
そんなことを考えていたナナシだが、
次の瞬間、驚愕の光景を目にすることになる。