ナナシと筋肉

文字数 1,529文字

なるほどな……

ナナミくんが、ストーカー被害に

あっているかもしれないのか……

二人は個人情報保護部の先輩たちに

相談してみることにしたのだ。

クケケケケッ……

他の先輩達が同情的な中、

ビッチキラー先輩だけが

薄気味悪い笑い声を上げている。

――この人だけは、

ホントにブレないな

しかし、仮にも個人情報保護部を名乗っているのだから


それなりに役に立つ助言をしてもらえるだろう

それに俺にも考えが無い訳ではない……

可愛い後輩が困っているのだ


ここは個人情報保護部の名にかけて助けてやらなくてはいかんなっ!

学校の帰りに俺と二号が

ナナミくんの護衛をしつつ


ストーカーらしき不審者がいないか調べてみることにしよう

――言っとくけど、

あんた達を越える不審者って

そうそういないからなっ!

普通にあんた達の方が

よっぽど不審者だからっ!

部長、それに関しては

自分から提案があるのですが……

これから学校がある日は毎日

個人情報保護部のみなで集まり


スマホで写メを撮って、

ナナミのインスタアカウントに

UPするというのはどうでしょうか?

なるほど……


彼女の周囲には

強力なボディーガードがいると


インスタを通じて

ストーカーにメッセージを送る訳だな?

この俺の屈強な肉体を見せれば、

この筋肉にストーカーもビビって

ストーキング行為を止めるだろうと……


つまり、俺の筋肉で

ストーカーを牽制しようと言うのか

……えぇ、まぁ
――とりあえず、そういうことにしておこう

それは素晴らしい!


部長の筋肉を見ればストーカーもきっと逃げ出しますよっ!

――普段は真面目で理知的な二号先輩も

敬愛する筋肉部長のことになると

途端にダメな人達の仲間入りをしてしまう

なにせ部長を尊敬するあまり、

部長と同じマスクを被り

二号と呼ばれる道を

自ら選んだというぐらいだからな

二号先輩はもうすでに

自らのスマホを取り出し


マスクを被った部長の姿を

何枚も画像に収めはじめている……

いいですね!

いいですよ、部長!

ポージングとか決めてもらえますか?

――なんだこのボディビルダーの撮影会みたいな感じは


さっきから、二号先輩のスマホのシャッター音が鳴り止まない

部長……

上裸(じょうら)って、いけますかね?

――嬉々として目を輝かせている二号先輩が勢いに乗って


またロクでもないことを言い出した……

なにっ! 上裸(じょうら)だと!?


上裸(じょうら)、それは『()()()()


その意味が分かっていて

俺に聞いているんだろうなあ? もちろん

決まってるじゃあないですか! 部長!

そ、そうか……


ついに俺も、可愛い新入生、後輩のために


一肌脱かねばならない時が来たようだな……

――上半身裸、だと!?


まさか、リアルに一肌脱ぐというのか

ついに俺のこの筋肉が、

人助けをしてしまう日が来たのか……

――筋肉を使った人助けの方法が

全力で間違った方向な気がするんだが

いいだろうっ!


この俺の筋肉を思う存分

ナナミのインスタにUPするがいいっ!

――もうそれ、新手(あらて)のセクハラだろ

ここの人達、

個人情報保護には厳しいが


ハラスメントには

寛容過ぎるにも程がある


ビッチキラー先輩が

後輩を辞めさせたというのも

普通ならパワハラみたいなものだろ

上着を脱いで

上半身裸となった筋肉部長は


二号が構えるスマホのカメラを前に、


ボディビルダーのような

渾身のポージングを決める。


もちろん覆面はしたままで。

――もうこれ、ただの覆面レスラーだな
フロント・ダブル・バイセップス!
サイド・チェスト!
部長! キレてます! キレてますよぉ!
――もうこれ、なんの撮影会なんだよ

ナナシは個人情報保護部みんなの

集合写真ぐらいに考えていたのだが


提案は渾身の力づくで曲解され

どんどん変な方向に全力疾走して行き


個人情報保護部では大撮影大会がはじまった。

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