ナナシとお泊まり

文字数 1,011文字

教室に戻って来たナナシは、先程の話をずっと考えていた。

――しかしなぜ他人と一緒に電車に乗ると


必ず気まずい空気になるのだろうな

仲が良い相手と乗ったとしても

必ず微妙な空気感になるものだろう?

沈黙に耐え切れずに


無理矢理テンションを上げて喋り続け、余計に微妙な空気になるか


黙ってひたすら沈黙に耐え続けるか


どちらにしても

まぁまぁの耐え難さだな

これはやはり自分が

陰キャだからであろうか?

陽キャはそう感じることはないのか?

あと友達と二人で

泊まりの旅行した時なども


やはり何度か必ず微妙な空気になるな

そんなことを考えているナナシの耳に、

すぐ横で話していたクラスメイト、

男子二人の会話が聞こえて来る。

今度の週末さ、

俺ん家泊まりに来いよ、

オールでゲームしようぜ

――友達の家にお泊りする、だと!?

ナナシがそちらを振り向くと

その話をしているのは田中公平と、

最近彼が仲良くしているツレであった。

――おい、ちょっと待て……

そんな大それたことをしていいのか?

田中公平よ……

まだ知り合ってから

わずか一週間程度しか

経っていないというのに


もう自宅に招き入れるというのか!?

家を知られることが

どれ程危険なことか分かっていないのか?

今はまだ知り合ったばかりで

毎日ドキドキして、気持ちも熱く

相手が魅力的に見えるかもしれないが


しばらくしてみると

『こいつやっぱりそんな気が合わないしちょっと違うかなぁ』と思えて来て


疎遠になってしまった場合

どんな報復をされるか

分かったものではないのだぞっ!?

頼んでもいないのにデリバリーでピザや寿司が大量に家に届いたとか

ネット通販で高額商品が

代引きで送られて来たとか

「なんか最近冷たいよね」などと言って、突然家に押し掛けて来るとか


「家に居るのは分ってんだからね」と言って、家のピンポンを小一時間連打されるとか

そんな報復をされる可能性を

考えたりはしないのか!?

それどこの別れた元カノ(ヤンデレ)なのか。

――まだお互いよく知らないのに

相手の家に行って


『こいつの家ってこんなにすごい金持ちだったんだぁ』


とまるで別世界の人間のように

感じてしまったり


『こいつも本当はすげえ苦労してんだな』


そう感じてそれ以来

無理に遊びに誘えなくなってしまったり


破局の原因になる可能性も

充分有り得るんだぞっ!?

お前は婚活中の女子か。

――しかもまだ信頼のおけない

相手の家にお泊りするなど


いつ寝首をかかれるか

分かったものではないではないかっ!

いやそれ、どこの戦国時代だよ。
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