ナナシとツイッター

文字数 1,643文字

ねぇ、ねぇ?
……あのさぁ

――入学から四日目、


なんだかんだこいつは

毎日話しかけて来るな……

ちょっと、おかしくないか?


これまで前の席に座った女子と話したことなど、一度もなかったぞ?


前の席が男子でも、話すのは月イチぐらいのものだったのに……

前の席に座っているのだから

なんら不思議なことではないのだが、

ナナシからすれば不思議らしい。

お前、これで四回目だぞ?
えっ? 何が?
お前が俺に話しかけて来た回数だ

えっ…… ナナシくん、

女子と話した回数とか数えてんの?

……キモッ
――クッソ! この女!

お前は美少女だから、そういうのは全く気にしないだろうがな


隠キャの身になって考えてみろっ!

人生の中であと何回美少女と会話が出来るか、分からないんだぞっ!?

もしかしたらこれが美少女との、人生最後の会話になるのかもしれんのだっ!

今日を最後に、

この先死ぬまで何十年も

美少女と話す機会は二度となかった……

そんな可能性は

充分過ぎる程にある

むしろそっちの方がリアルだ

その貴重な最後の瞬間を

鮮明に脳裏に刻み込んでおかなくてはならないだろうがっ!

……まさしくこれが一期一会というやつだ


まぁ、美少女限定ではあるがな

明日以降の幸せなんて

陰キャにはとても想像出来ない……


常に絶望を想定して生きて行く


これが傷つかないための最善策だ

ま、まぁ、いいだろう……


して、肝心の要件はなんだ?

SNSとか、やったことある?
―― SNS、だと!?
…………。

ソーシャル・ネットワーキング・サービス


直訳すると『社会的な繋がりを提供するサービス』って


知らないわけじゃないよね?

――社会的な繋がりを提供してくれる、だと!?

なんだその、いかにも陽キャが上から目線で、陰キャを憐れんで見下してそうな呼び名は

「まぁまぁ、お前等もさ

リアルで友達いないだろうからさ

せめてネットぐらいだけでもさ

社会と繋がっておけよ、なっ」


そう言わんばかりではないかっ!

もちろん知っている、

知っているが……


もっとも自分が必要としていそうで


もっとも自分が必要がないものだな……

社会的繋がりが

著しく欠如している自分には

かなり必要だという気がしなくもないが


個人情報保護の観点からすれば、

まぁ、まずありえんな

ツイッターとかさぁ
ツイッター、だと!?

あの、

自由に思ったことを発言出来ると

意気揚々ではじめてはみるが


当初はフォロワーが付かなくて

がっかりして寂しい思いをし


付いたら付いたで、フォロワーが減るのが気になって気になって仕方なくなり、フォロワー数の増減で一喜一憂し


DMで挨拶されても

ただの挨拶なのか

発言を求められているのかわからず


こちらから積極的に行っても

こいつうぜぇと思われるかもしれないし


儀礼的な挨拶だけで済ませるべきなのか、

返信をどうするべきか延々と悩むことになる



そして、フォロワーに配慮する余り、自分の意見を言うどころではなくなり


やがてROM専化し、タイムラインの流れを見るだけになってしまい


結局、やっぱり陰キャはネットでも陰キャであることを痛感させられ


鬱になって死にたくなって来る

メンタル破壊ツール、アレのことか?

もしくは、

数万のRTやいいねに

承認欲求が刺激されて、


ツイートする内容、動画や画像、発言などが、ついつい過激なものになって


しまいには後に引けなくなり


エスカレートし過ぎて

一線を越えて大炎上、

実生活にも多大な被害を及ぼすという


世間ではそうした者達をバカッターなどと呼び、〇〇発見機などと呼ばれている、アレのことか?

もしくは、

世論の動向を見据えながら、

炎上しないギリギリのラインを探り、おそるおそるイキッた発言をし合う


ラインの見極めを間違えて、言い過ぎてしまうと人々から叩かれ大炎上してしまうという


数十万人単位のレベルで

チキンレースが行われている、アレのことか?

他人に途中で遮られることなく

最後まで喋り切りたいという

ユニークな悪癖を遺憾なく発揮し

気持ち悪い甲高い声の早口で喋り続けたナナシ。

それ、全部同じツールだからっ!
絶対、登録したことあるよね?
いや、断じてそんなことはない!!
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