ナナシとLINE

文字数 1,509文字

燃え尽きて真っ白な灰になったナナシ。


しかしまだこれだけでは、過酷な入学初日は終わらなかった。


ホームルームが終了した後、前席の美少女が突然振り返って、ナナシに話しかけて来たのだ。

ナナシくん、だっけ?
――俺が美少女に話しかけられる、だと!?

貴様、先程の仕打ちだけでは飽き足らず


まだ俺に何かトラップを仕掛けようというのか?

女生徒に話し掛けられるのは

一年に三回までと決まっているのだぞ?

その三回の内の一回を

入学式初日でもう使って来るというのか?

これで、もう残り二回しか残されていないではないか……

なるほど、

早々に三回を使い切らせて


俺を一年間女子と喋れなくさせ

孤立させるという作戦か……

ちなみに


自分からは女子に話しかけられないので


女子から話しかけられた回数イコール


女子と話した回数だからな

まぁ、しかし、例え

三回の内一回だとしてもだ……

入学早々、

美少女に話しかけられるというのは、悪い気がしないでもない


めちゃめちゃキラキラ輝いているし


そこはかなとなく

髪からいい匂いがするではないか

なんだかんだ言って

照れて顔が赤くなってしまった……

い、いかん、

ここで油断する訳にはいかない


この女にはさっきも

出し抜かれたばかりではないか……

最初に好感を持たせて上げておいて


後で下げて来るパターンのやつかもしれん……

LINEって、やってる?
―― LINE、だと!?

クッ、これは

面倒くさいパターンのやつではないのか?

やっていると言ったが最後


蟻地獄にはまった獲物が如く


なんだがんだ言って

ズルズルとLINEグループに

参加させられていまうという

新興宗教やマルチ商法の勧誘並みのしつこさと言っても過言ではないだろう

もうこの際、ハッキリ

先に言ってしまった方がいいのか!?

俺はネットの中でも

他人と全く交流出来ないタイプの人間だと!!

あぁ、

あの自動表示で出て来る『知り合いかも?』が、ガチでいい線の知り合いばかりだったから


個人情報を抜かれているのではないかと不安になってアンインストールしてしまった


あのアプリのことか

暗に今LINEはやってないアピールをしなくては……

ここは個人情報保護主義者の名にかけても、断り切らなくてはならん

試しに入れただけなので

詳しくはないのだが……

友達登録の人数が多過ぎたり、

大人数のグループに入ってしまうと、ひっきりなしに通知が来て


うるさいから通知音なしに設定するが、それでも画面に通知の表示が出てしまい


試験期間中でも、気になって気になって、仕方がなくなって、勉強が全く手につかなくなってしまうという


おそろしいツールのことだな

もしくは


全くLINEを開かないと

LINE読めと怒られて


読んだら読んだで既読スルーするなと怒られる


返事をしなくてはならないという状況を生み出し、コミュニケーションを無理矢理強制されるという


コミュ障撲殺ツールのことか?

まぁ、残念だが、

今はやっていない

(なんでこの人、こんなにものすごい早口で一気に喋るんだろ……)

ナナシの見た目はそんなに悪くはない。


しかし、あまりにも圧倒的な陰キャぶり、コミュ障に起因する喋った時の気持ち悪さが、


見た目の好感度を一気に台無しにし、生理的な嫌悪、もしくは憎悪へと昇華させてしまうのだ。


それで中学時代に最初に声を掛けて来た女子は、見た目にだまされた怒りと憎しみ、自分の不甲斐なさを呪い、気持ち悪いと女子の間で触れ回った挙句、


ナナシが女子と話すのは

年に三回までとなっていた。

そしてナナシは、鏡などを普段全く見ないため、自分のルックスについては何も気づいていない。


小学生ぐらいの顔のイメージで、ナナシの中の本人像は止まってしまっていた。

LINE、結構詳しい、よね?
いや、断じてそんなことはない!!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色