ナナシとストーカー
文字数 1,300文字
あのさぁ、ナナシくん……
ちょっと、相談があるんだけどさぁ……
前の席に座るナナミが
振り返り小声で話し掛けて来た。
なんかここ数日、学校帰りに
誰かに後をつけられているような
気がするんだけど……
家の前にも不審者が居たって
お母さんが言ってたし……
もしかして
ストーカーなんじゃないかなと思って、
ちょっとコワクなっちゃって……
いつからなんだ？
なにか思い当たる節はないのか？
そう言えば、この間
駅にカニが落ちていて……
珍しいからスマホで撮って
インスタにＵＰした直後からかなぁ……
――カニ事件の被害者、居たーー！
ビッチキラー先輩から聞いたカニ事件をナナシが説明すると、ナナミはコワくなったのか、震えはじめる。
でもインスタにＵＰしたぐらいで
私の家まで分かったりするかなぁ……？
よし、では
俺が証明してやろう
昼休みに部室で
ＰＣを使って検証してみる
ナナシとナナミ。
では、お前の
インスタを見てみせてもらおう
――カニの画像は
もう削除してしまっているようだが
使っている路線は特定されている
という前提からはじめることにするか……
こいつのインスタのアカウントには、顔出しの画像こそないものの
やはりいくつか
手掛かりになるようなものがある……
これは中学時代に
ＵＰした画像のようだな
〇月〇日が体育祭……
×月×日から修学旅行で京都……
この路線近辺で
そのスケジュールで体育祭、
修学旅行があった中学校は
かなり絞られて来る……
お前が撮った桜などの風景や街並みも
地域を限定するには十分だな……
ある程度、
地域の絞り込みは済ませた
室内の様子が分かる画像
もちろん顔などは写っていないが
窓から外の景色が見えている
この画像がＵＰされた時間と
窓の光の入り具合からして、
この窓が南向きだと仮定
南向きでこの景色が見えるとなると……
ナナシはＰＣを操作しながら、
何やら一人で呟いている。
それから数分後、
ナナシがＰＣに出した画像を見て
ナナミは驚嘆の声を上げる。
ナナシくんて、
ストーカーやったことあるの？
まさか俺をストーカーの犯人に
仕立て上げようというのか！？
いや、そもそも最初から俺を
ストーカーの犯人だと睨んで
このトラップを
仕掛けて来たのではあるまいな！？
これで俺には
こいつの家を知っているという
既成事実が出来てしまったではないか
「俺、お前の家とか知らないから俺は全く関係無いから」と
言えなくなってしまうんだぞ！？
この先俺はストーカーの容疑者の一人として
疑われ続けなくてはいけないということか！
今俺は、こいつの家を
知らないという事実を失った
こいつの家を知らないという俺は
もう既にどこにもいないということか！
決してやってはいないが
お前が警察に届けないと約束するのなら
俺がストーカーの犯人として謝罪してやろう
それでお前が安心出来ると言うのならな！
それではナナミが安心したとしても
根本的な解決にはならないのだが。
