葬送
文字数 2,201文字
夢のようだった。がむしゃらだった。泣いた。怒り狂った。苦しんだ。それは遠い日にあって今に至るまでの事。そこに君は常に居た。傍らでなくとも声を聞けなくても君は常に我と共にあった。だが、遂には終わりがやって来る。皺の手を握り締めて去って行った君。もう一緒には居られない、我が友よ。だからせめて見届けるよ。君と歩いた夢路の果てを。
「飄々として尊大、それでいて人当たりの良い事。これで始末に悪くなければ実に愛らしいのにね」
「宿命に義理堅い事だ」
伝承 大いなる意志
「その存在は幾多の災厄に勝る悲劇」
「婆一人に手間を掛けるか」
傭兵達のぼやき
「希少だろ?」
「物言う廃墟だ」
「惜しくはない」
「実にユーモラスだ。頭がな」
「
「安心しろ。すぐ連れて行ってやる」
「世代的には肉弾三勇士ってとこか」
「見事に砕けたものな」
アーニャ
「なんで!? なんで酷い事するの!?」
「ガリア人の暇潰しか」
白衣の研究員
「我らが戴く存在に穢れなどあってはならぬ。我らを統べる存在の意志が我らと異なってはならぬ。彼女は実に素晴らしい! これ以上の潔白は無く、これほどに染め易きモノも無いのだからな」
不老不死 囚人より科学者達への警句
「結末を先に延ばした所で、時は戻らん」
「魂が宿る事が必ず良いとは言えないのよね」
「お休み、マザー」
暗殺者
「祝福あれ」
宇都宮宗房
「屈服せぬ敵は嫌いじゃない。圧倒は詰まらんのだ」
「幾つもの結末を見た。驚く事でもない」
「ゴールは眼の前だ」
「死の時に悔いを遺すな。貴様の全てが決まるのだからな」
生月島の噂好き
「異端の聖女、とは言い得て妙だね」
「幾らでも掛かって来い。群れを作り、揃って我が鑓のサビと消えるがいい!」
捕食
「苦しみは僅かに聞こえた。それからは何も聞こえなかった」
「反乱者は生死いずれの結末を以て己が始末を得る覚悟はある。私の父は良く背き、良く死んだ。それが報いだ。喜ばしき最期を得た。しかし、現世はあまりに不快だ。反乱者の一味の
その後、戦線は安芸・石州方面で膠着、これを機に停戦協定が結ばれたが、屋代島失陥後に畿内海軍が無差別攻撃を実行したため、東京政府内には「新兵器」を使って畿内を武力制裁せよ、との強硬論もあるという。
だが…吉野首相にとっての真の脅威は、彼女のすぐ近くに迫っていた。
吉野首相の側近にして相棒でもある蓮池夏希…彼女の正体は、首相の親米左派路線に反発してクーデター(光復十五年の九州政変)を謀り、そのために戦死した
首相に近侍した本当の目的は言う迄も無く、亡き父の仇を討つ事…復讐にほかならない。
だが、怨敵として憎むにはあまりにも不器用で、アイドル的パフォーマンスの裏で、孤独に喘ぐ首相を前にして、果たして彼女を殺すべきなのか、あるいは共に生きる道があるのか…蓮池大尉の心中は、惰性と葛藤に揺れ動いた。
しかし、先の戦闘で邂逅した、宇喜多軍のある傭兵の言葉が、最後の決心を促した。
彼は、「ヨルダンの男」は言った。
「己の生まれ、成り立ちを忘れて生きられようものか!」
方広院の仰る通り、言の葉には人の心を動かす力がある…良い意味でも、悪い意味でも。
蓮池こと江上夏希は、「己の由来」から逃れたくない自分に気付き、後は「それを為せ」との
彼女のような不穏分子を未だ抱える九州軍の中には、東京の
共産主義、軍国主義、そして教会過激派…様々な勢力の思惑が交差する中で、日本列島は夏を迎える事になる。