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文字数 1,401文字
ブラインドからは西日が差し込み、執務室のデスクを照らしている。
デスクの前に置かれた長机には影が掛かり、影首先に居る吉野首相の手には熱が感じられた。
彼女の手は机上の資料を片そうとして伸ばされているが、対岸の蓮池大尉は只々煙草をくゆらせて、首相の動きを見るでもなかった。
蓮池大尉は少し笑った。
不貞腐れる吉野首相は手元に集めた書類をやや乱暴に整えた。
蓮池大尉の口角が上がった。
吐き捨てる姿に蓮池大尉は噴き出した。
それを見て吉野首相は何か諦めたように溜め息をついた。
蓮池大尉はそう言って珈琲の残りが溜まるマグカップに煙草を押し付けた。
一瞬ジュッと音がしたが、吉野首相が気付いた時には既に口を開いていた。
蓮池大尉は立ち上がり、吉野首相の横まで来て、腰を落とした。
首相は理念に沿って反論できない。
現実を知らない身ではないのだ。
蓮池大尉は少し笑った。
分かってるけど。
そう言いたくはなった。