第9-2話 狩り狩る
文字数 1,479文字
『特別な人達』と『普通の人達』を公平にすると発言したジィズマイが所属するガリカルの目的は『特別な人達』にヘイトを向ける『特別狩り』を狩るための行動だった。
広報担当と言ったジィズマイをリーダーか上司のように言うガリカルの一員である男は『休日の女子高生』スキンに変更した
「………」
男の前進に、和技は無意識に一歩後退し身の危険を感じとったが、情報を取り出すため、それ以上の後退をやめて、気になった事を聞いてみた。
「さっき『この時間から、この町で一番偉い』って言っていたけれども…どういう事?」
「ジィズマイ姐さんの粋な計らいで『特別狩り』を狩るため、この
強力な通信障害を起こして外には一切つながらないから、何をしても通報されない。
イベント中は物を破壊しても、代金を払わなくても、捕まらない。
もちろん『特別狩り』をやっても罪にはならないんだよ」
『特別狩り』たちに瞬間移動能力をつけさせた理由は、無法状態にした基他新町に集めてガリカルに始末させるため。
ジィズマイは、そもそも公平にするつもりはなかったのだ。
「まあ、やるとは言っても、あいつらは本当の世界で大切に管理されているんだから、キルにはならない。合法なんだよね」
「……」
その発言は、ここが架空世界だと分かっている者から見れば、ゲームのような感覚だろう。
だが、ここが架空世界だと知らない『普通の人達』は、今いる世界こそが本当の世界で、向けられる脅威は現実で起きているものになる。
「ああ、秘密の話もプログラムには分からないんだっけな。
まあ、秘密を話ちゃったって事は、君も野放しにするわけにはいかない事になるよね」
「…」
和技は男が腕を伸ばして捕まえようとしたが、素早くかわし、商店街から逃げだした。
「数値を変更してて良かった」
普段、修復士として作業するため、身体能力の数値を許可付きで変えられる。
基他新町で何かあるのは予想できたので、あらかじめ高めに設定していた。
「え?」
なので、足首を掴まれて薄暗い商店街に引っ張り込まれるなど予想外だった。
和技は体勢を崩し床に倒れ込んだ。起き上がる暇なく、体は後方に引きずられていく。
「逃げるなんて、躾のなってないプログラムだなぁ。これは調教しないと」
男の声が背後から聞こえ、急いで起き上がろうとしたが、足が自由に動かない。
半身をひねり、声をする方向を見上げると人の姿はなかった。
モンスターの姿はあったが、
「何で、モンスターが?」
「もちろん、ジィズマイ姐さんのお陰さ。あの方は本当の『特別な力』をガリカル達にくれたんだよ」
ギザギザに尖った歯を見せ、男の声を放っていた。どういう仕組みかはわからないが男が姿を変えたのは間違いないようだ。
それは人間サイズまで巨大化した柄のないモップの化け物。簡単に説明するならそんな所だろう。
「最初、モンスター化するって聞いた時は『正義がモンスターってありえねぇ』と、思ってたけど、ありだね、これ。すんげぇ、楽しい」
横側、縦長になった方向に大きな目と口が一つずつあり、茶色の紐状になった毛に覆われたボディで獲物が逃げないように脚に絡めついていたが、わさわさと動き始めた。
「すげぇ、感触がする、女の子の感触が伝わってくる」
「…」
『さすがにマズイ状況になったと』と焦りながら和技はスマートウォッチを操作するが、モップモンスターが言った通り通信障害は復旧する様子はない。
「これ全身を取り囲んだら、もっとすごいんじゃね」
紐状の触手のような手が、和技の視界を覆った。
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