第12-1話 女帝
文字数 2,265文字
テントに隠れたままの和技 こと『休日の女子高生スキン』に変えた和胡 は、何も進まずまない事に焦っていた。
とはいえ、モンスター騒動のショックから動けない粂戸 を一人にできず、時間だけが過ぎていく。
「通信障害、直っていないかな」
スマホを取り出して操作するものの変化はなく『まだ、無理みたい』と声に出してから、和胡はこっそり別の操作をする。
『…AIからの連絡もないな……通信障害時に連絡を取る方法を考えておけば良かった。
それと…』
和胡は、唯一 繋がるWiFiの名前を改めて確認する。
『ziz-world…ジィズ……。
これだけでも帯論 さんに連絡ができないのかな…
ヤバい奴が関わっているっていうのに』
ジィズ
クラスZ(犯罪者)の存続を知る『特別な人達』ならば、誰もが知る名前だった。
クラスZを牛耳る女帝だと
『彼女の名前がWi-Fiの名前に使われているって事は、間接的、もしくは直接的に関わっていて、下手すれば重大事件になるかもしれない。
…ということは、ジィズの名前を使うジィズマイは、ジィズと関わりがあるって事になる。まさかジィズ妹、妹分だからジィズ妹 じゃあないだろうな』
スマホをしまい、再び静寂で何も進めない歯がゆい時間に戻る…と思われたが、それを断ち切ったのは、端末機械がメッセージを告げる短い音だった。
「…」
通信障害中の着信音に和胡は粂戸に視線を向けるが、粂戸も聞き慣れた自分のスマホ着信音ではないから相手のかもしれないという考えで和胡を見つめ返していた。
「ん? 何かきた」
着信音と声はテントの外、Wi-Fi使用できる敵、おそらくモップモンスターから。
「…」
声の大きさからしてかなり近くにいる事に、2人は危機感を持ち、息をひそめる。
「なになに、特別ミッションだって…って特定した奴を飲み込むとポイントアップだってさ」
「ふーん。ポイントアップって…ポイントなんてあったんだ」
「イベント内容を読んどけよ。ポイント高いとジィズマイ姐さんに褒められるって書いてただろ」
「褒められるだけじゃあな…」
「褒められるっていう意味は別の事を指してるんだよ。
例えば、クラスZ方面で何かの地位をくれるとか。ジィズマイ姐さんがご褒美してもらえるとか」
「え、ご褒美って、そのご褒美?
あの美ボディなジィズマイ姐さんがご褒美、ご奉仕してくれるのか」
「かもな……ってさ、あれ…気づかない?」
盛り上がる話題をモップモンスターは中断させた。
「そこのテント。何か人の気配がするんだよな」
「…」
緊張が走る。
「そうか?…俺はそうは思えないけれども」
「まだ『特別狩り』の奴らが9人も残っているんだぜ。イベント中は基他 新町から出られなくなっているんだから、どこかに隠れているだろうよ。
そこのテントとか、な」
モップモンスターはテントに近づくと、紐状の手で器用にジッパーの引き手(引っ張る部分)を掴み開ける。
「…」
テントに視線を向けたモップモンスターが最初に見たのは、こちらを見る視線だった。
それがミニスカートの可愛い娘だと認識してから、その娘がこちらに手を伸ばしている事に気づく。
手にした武器が自分の紐状だらけの体に突き刺さっている事を最後になって知ったのは、自分たちが強者で、狩るターゲット達は何一つ抵抗できない弱者という甘い考えがあったからだろう。
「わぁあああっ」
武器を持つ娘こと、和胡は突き刺したデリートナイフを横に引き裂く。血の代わりに切り口が英数字に変わって、それが全身に広がって、消滅した。
「え?あ、おい…」
連れのモップモンスターの異変に気づき、それが弱者だと思っていた者によるものだと理解できた時、その者は目の前にいた。
「……」
代わり映えのしない悲鳴が聞こえる中、和胡は自分の行動が軽率だったと後悔する。
「何だよ、お前。おい、ヤバい奴がいるっ」
まず、テント近くにいたモップモンスターは2匹ではなく3匹いた事。
それから3匹目が近くにいた仲間に声をかけた。
『どうする? 3匹目とやりあっている間に、他の仲間がかけつける。そもそも最初の2匹は油断していたから簡単に仕留める事ができたが、まともにやりあうと勝てるのか?
…いや、勝つ必要はない。血路を開いて粂戸を安全な所に移動するだけで良い』
和胡は自分がいる所と3匹目がいる距離を確認する。
『…3匹目までの距離は少し離れている。一度テントに戻って粂戸を…』
テントに視線を戻した和胡は、粂戸がテントの外に出ているのを確認できた。
テントに隠れている時はモンスターにバレないように声を出せなかったので、偶然とはいえ無防備な彼の行動に今は感謝しつつ、駆けつける。
「粂戸、逃げるよ」
粂戸の手を掴み和胡は、モンスターのいない方向を走りだした。
「あれ、こいつ、特別ミッションの奴だ」
粂戸の姿を見たモンスターが声をあげる。
「ヤバいな、逃げ切れるか?」
その直後、粂戸から声があがった。
モップモンスター達が紐状の手を伸ばし粂戸の胴体に巻き付いたのだから。
「くめとっ」
和胡はデリートナイフで紐状の手を切り落とす。
「意外と速い…粂戸、逃げろ。ここで食い止める」
粂戸は、精神的な余裕がなくて男子高生口調に戻った和胡に不審がることなく、素直に従ってくれた。
しかし、その粂戸の進行方向に新たなる一匹がバッタのように跳んできた。
「…」
和胡の頭に『詰んだ』という言葉が浮かんだ…その時
「うちの弟に手を出すなっ」
粂戸と接近したモップモンスターの間にデッキブラシを構える未縫衣 の姿があった。
とはいえ、モンスター騒動のショックから動けない
「通信障害、直っていないかな」
スマホを取り出して操作するものの変化はなく『まだ、無理みたい』と声に出してから、和胡はこっそり別の操作をする。
『…AIからの連絡もないな……通信障害時に連絡を取る方法を考えておけば良かった。
それと…』
和胡は、唯一 繋がるWiFiの名前を改めて確認する。
『ziz-world…ジィズ……。
これだけでも
ヤバい奴が関わっているっていうのに』
ジィズ
クラスZ(犯罪者)の存続を知る『特別な人達』ならば、誰もが知る名前だった。
クラスZを牛耳る女帝だと
『彼女の名前がWi-Fiの名前に使われているって事は、間接的、もしくは直接的に関わっていて、下手すれば重大事件になるかもしれない。
…ということは、ジィズの名前を使うジィズマイは、ジィズと関わりがあるって事になる。まさかジィズ妹、妹分だからジィズ
スマホをしまい、再び静寂で何も進めない歯がゆい時間に戻る…と思われたが、それを断ち切ったのは、端末機械がメッセージを告げる短い音だった。
「…」
通信障害中の着信音に和胡は粂戸に視線を向けるが、粂戸も聞き慣れた自分のスマホ着信音ではないから相手のかもしれないという考えで和胡を見つめ返していた。
「ん? 何かきた」
着信音と声はテントの外、Wi-Fi使用できる敵、おそらくモップモンスターから。
「…」
声の大きさからしてかなり近くにいる事に、2人は危機感を持ち、息をひそめる。
「なになに、特別ミッションだって…って特定した奴を飲み込むとポイントアップだってさ」
「ふーん。ポイントアップって…ポイントなんてあったんだ」
「イベント内容を読んどけよ。ポイント高いとジィズマイ姐さんに褒められるって書いてただろ」
「褒められるだけじゃあな…」
「褒められるっていう意味は別の事を指してるんだよ。
例えば、クラスZ方面で何かの地位をくれるとか。ジィズマイ姐さんがご褒美してもらえるとか」
「え、ご褒美って、そのご褒美?
あの美ボディなジィズマイ姐さんがご褒美、ご奉仕してくれるのか」
「かもな……ってさ、あれ…気づかない?」
盛り上がる話題をモップモンスターは中断させた。
「そこのテント。何か人の気配がするんだよな」
「…」
緊張が走る。
「そうか?…俺はそうは思えないけれども」
「まだ『特別狩り』の奴らが9人も残っているんだぜ。イベント中は
そこのテントとか、な」
モップモンスターはテントに近づくと、紐状の手で器用にジッパーの引き手(引っ張る部分)を掴み開ける。
「…」
テントに視線を向けたモップモンスターが最初に見たのは、こちらを見る視線だった。
それがミニスカートの可愛い娘だと認識してから、その娘がこちらに手を伸ばしている事に気づく。
手にした武器が自分の紐状だらけの体に突き刺さっている事を最後になって知ったのは、自分たちが強者で、狩るターゲット達は何一つ抵抗できない弱者という甘い考えがあったからだろう。
「わぁあああっ」
武器を持つ娘こと、和胡は突き刺したデリートナイフを横に引き裂く。血の代わりに切り口が英数字に変わって、それが全身に広がって、消滅した。
「え?あ、おい…」
連れのモップモンスターの異変に気づき、それが弱者だと思っていた者によるものだと理解できた時、その者は目の前にいた。
「……」
代わり映えのしない悲鳴が聞こえる中、和胡は自分の行動が軽率だったと後悔する。
「何だよ、お前。おい、ヤバい奴がいるっ」
まず、テント近くにいたモップモンスターは2匹ではなく3匹いた事。
それから3匹目が近くにいた仲間に声をかけた。
『どうする? 3匹目とやりあっている間に、他の仲間がかけつける。そもそも最初の2匹は油断していたから簡単に仕留める事ができたが、まともにやりあうと勝てるのか?
…いや、勝つ必要はない。血路を開いて粂戸を安全な所に移動するだけで良い』
和胡は自分がいる所と3匹目がいる距離を確認する。
『…3匹目までの距離は少し離れている。一度テントに戻って粂戸を…』
テントに視線を戻した和胡は、粂戸がテントの外に出ているのを確認できた。
テントに隠れている時はモンスターにバレないように声を出せなかったので、偶然とはいえ無防備な彼の行動に今は感謝しつつ、駆けつける。
「粂戸、逃げるよ」
粂戸の手を掴み和胡は、モンスターのいない方向を走りだした。
「あれ、こいつ、特別ミッションの奴だ」
粂戸の姿を見たモンスターが声をあげる。
「ヤバいな、逃げ切れるか?」
その直後、粂戸から声があがった。
モップモンスター達が紐状の手を伸ばし粂戸の胴体に巻き付いたのだから。
「くめとっ」
和胡はデリートナイフで紐状の手を切り落とす。
「意外と速い…粂戸、逃げろ。ここで食い止める」
粂戸は、精神的な余裕がなくて男子高生口調に戻った和胡に不審がることなく、素直に従ってくれた。
しかし、その粂戸の進行方向に新たなる一匹がバッタのように跳んできた。
「…」
和胡の頭に『詰んだ』という言葉が浮かんだ…その時
「うちの弟に手を出すなっ」
粂戸と接近したモップモンスターの間にデッキブラシを構える
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