第8-1話 噂の信頼度
文字数 1,737文字
「帯論 さん。いい加減、起きて」
2321年の現実世界に戻った和技 は、木でもコンクリートでもない、ツルツルした薄灰色のドアを叩く。
ドアと言ったが、ドアノブはない。ドアが訪問者を認識し、開けるか無視するか判断する。
昨日はドア前に立っただけで開いたのに、今日は開てくれる様子はない。
「帯論さん」
それでも何度か呼び込むと、ドアが横に開いたが、そこに立っていたのはゴールデンレトリバーの犬耳と尻尾を持つ3D映像 のメイドだった。
部屋の空調管理から部屋主の会話相手までしてくれる実態のないお手伝いロボットといった所。部屋自体に音声認識で室内管理ができるようにプログラムされているが、住人によっては、人のように話しかける存在が欲しいので本物のように映像化している。
「帯論様は体調を崩されており、お昼過ぎまでは、誰とも会えません」
部屋の中は暗く、寝ているようにも思えるが、和技は部屋中に声をかける。
「帯論さん『特別狩り』が大変な事になってる」
「騒いでいるの間違いだろ」
声は部屋中からではなく、目の前にいるメイドの口からだった。目は覚めているようだが、起き上がる気になれないのだろう。
「修復士として、いや普通にネットワークを使う人間として、基本を忘れたわけじゃあねぇだろうな。
ソーシャルメディアで騒ぎ立てている事は、鵜呑みに信じず、己の力で確認し、嘘が本当か見分ける事を」
メイドから出てくる帯論の低く機嫌の悪い声は、感情のままに行動した事を指摘されたように思え、和技は視線を床下に落としたが、すぐにメイドに上げる。
「分かっているよ。それを調べるためにモニタールームの使用権限を出してほしいんだよ」
「良いだろう。先に使ってろ。行けたら行く」
部屋を後にした和技は、モニタールームに進みながら今回の騒動を冷静に考える。
まずは、
いや、そもそも、この騒動『特別狩り』が失踪したのは本当なのか?
誰かの嘘が面白半分で拡散されているだけではないのか?
「未縫依 さんのもそうだけれど日曜日の朝にいなくても、それが失踪と言うのは変だよな…でも共通のメッセージがある」
モニタールームの扉前に立つと帯論が設定してくれたのだろう、扉が勝手に開いてくれた。
本来、和技の修復士レベルでは一人で入室できない。ジィズマイが空を飛んで騒動になった時も、帯論の許可によるもの。
「ん?」
中に入ると、中央に椅子が置かれただけの空間が現れるが、その椅子の上に大型テレビサイズのウィンドウが開いていて『SNS等で騒がれている 特別狩りの対応について』という文字が載っていた。
「なになに、早朝から投稿数が急増している『特別狩り、失踪』という投稿について。
現段階では『レベル2(要注意) 』とするが、動向によっては変化するので警戒を怠らないようにか…
上は気づいているけれども軽く見ている?」
和技はそのウィンドウを閉じてから椅子にり、検索を始めた。
「まずはSNSに投稿された『さよなら』のラストメッセージを投稿したのを検出する所から』
何もない空間から、和技の見えやすい位置に小さなテレビ画面ほどのウィンドウが現れ、検索結果が現れていく。
「316? え、316人もラストメッセージを出してる? …いや、偽投稿もあるか…偽物、それからクラスC(AIもネットワークを利用する)の投稿を外して…76…減ったけれども1日で76人も同じメッセージを出した事になる。
みんな『特別狩り』なんだから連絡しあって同時発信したならば、なんとか可能な数になるか
もし、そうだとしたら、何のため?
それって『特別狩り』が何かしようとしていたというわけ……いやいや、情報が足りない段階で決めつけるのは良くない」
表情された76人のラストメッセージを上にスクロールしていくと未縫依の投稿が目に入りドキリとする。空を飛ぶ『特別な人達』を動画で流したので架空の名前やキャラクターのアイコンで隠しても未縫依の発言だと分かった。
「………」
顔を見て話した事がある仲の者が『さよなら』と書いた文字に動揺する。
『冷静を失うと判断力がにぶります。落ち着いてください、和技様』
淡々と言葉を放ったのは、女性型ホログラムだった。
…少々、目のやり場に困る。
2321年の現実世界に戻った
ドアと言ったが、ドアノブはない。ドアが訪問者を認識し、開けるか無視するか判断する。
昨日はドア前に立っただけで開いたのに、今日は開てくれる様子はない。
「帯論さん」
それでも何度か呼び込むと、ドアが横に開いたが、そこに立っていたのはゴールデンレトリバーの犬耳と尻尾を持つ3D
部屋の空調管理から部屋主の会話相手までしてくれる実態のないお手伝いロボットといった所。部屋自体に音声認識で室内管理ができるようにプログラムされているが、住人によっては、人のように話しかける存在が欲しいので本物のように映像化している。
「帯論様は体調を崩されており、お昼過ぎまでは、誰とも会えません」
部屋の中は暗く、寝ているようにも思えるが、和技は部屋中に声をかける。
「帯論さん『特別狩り』が大変な事になってる」
「騒いでいるの間違いだろ」
声は部屋中からではなく、目の前にいるメイドの口からだった。目は覚めているようだが、起き上がる気になれないのだろう。
「修復士として、いや普通にネットワークを使う人間として、基本を忘れたわけじゃあねぇだろうな。
ソーシャルメディアで騒ぎ立てている事は、鵜呑みに信じず、己の力で確認し、嘘が本当か見分ける事を」
メイドから出てくる帯論の低く機嫌の悪い声は、感情のままに行動した事を指摘されたように思え、和技は視線を床下に落としたが、すぐにメイドに上げる。
「分かっているよ。それを調べるためにモニタールームの使用権限を出してほしいんだよ」
「良いだろう。先に使ってろ。行けたら行く」
部屋を後にした和技は、モニタールームに進みながら今回の騒動を冷静に考える。
まずは、
いや、そもそも、この騒動『特別狩り』が失踪したのは本当なのか?
誰かの嘘が面白半分で拡散されているだけではないのか?
「
モニタールームの扉前に立つと帯論が設定してくれたのだろう、扉が勝手に開いてくれた。
本来、和技の修復士レベルでは一人で入室できない。ジィズマイが空を飛んで騒動になった時も、帯論の許可によるもの。
「ん?」
中に入ると、中央に椅子が置かれただけの空間が現れるが、その椅子の上に大型テレビサイズのウィンドウが開いていて『SNS等で騒がれている 特別狩りの対応について』という文字が載っていた。
「なになに、早朝から投稿数が急増している『特別狩り、失踪』という投稿について。
現段階では『レベル2(要注意) 』とするが、動向によっては変化するので警戒を怠らないようにか…
上は気づいているけれども軽く見ている?」
和技はそのウィンドウを閉じてから椅子にり、検索を始めた。
「まずはSNSに投稿された『さよなら』のラストメッセージを投稿したのを検出する所から』
何もない空間から、和技の見えやすい位置に小さなテレビ画面ほどのウィンドウが現れ、検索結果が現れていく。
「316? え、316人もラストメッセージを出してる? …いや、偽投稿もあるか…偽物、それからクラスC(AIもネットワークを利用する)の投稿を外して…76…減ったけれども1日で76人も同じメッセージを出した事になる。
みんな『特別狩り』なんだから連絡しあって同時発信したならば、なんとか可能な数になるか
もし、そうだとしたら、何のため?
それって『特別狩り』が何かしようとしていたというわけ……いやいや、情報が足りない段階で決めつけるのは良くない」
表情された76人のラストメッセージを上にスクロールしていくと未縫依の投稿が目に入りドキリとする。空を飛ぶ『特別な人達』を動画で流したので架空の名前やキャラクターのアイコンで隠しても未縫依の発言だと分かった。
「………」
顔を見て話した事がある仲の者が『さよなら』と書いた文字に動揺する。
『冷静を失うと判断力がにぶります。落ち着いてください、和技様』
淡々と言葉を放ったのは、女性型ホログラムだった。
…少々、目のやり場に困る。
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