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文字数 346文字



鏡を覗くと溺れそうだ
向こう側の偽物が笑ってる
一人ぼっちの私を笑ってる
あいつもそいつもみんなで
私を見て笑うのだ
それでも鏡の中の私に
紅をひいて髪を束ねる
外は寒い何枚も何枚も
服を重ねても寒い
寒くて心の奥まで凍える
足枷を引きずりながら
同じ道を何度も辿りながら
見慣れたビルに怯えて潰される
乾く喉に突き刺す痛みに
もがきながらたどり着く場所に
あなたと会える場所がある
あなたと会えるただそれだけ
何もいらない何もいらない
ずっとここに居たいのに
心地よいこの場所に
ずっとここに居たいのに
わたしはまた悪夢の中に引き摺り込まれて
彷徨ってほんの少しの温もりに触れて
気がつけばまた同じ朝を迎える
ここがあなたの居場所だと
見ず知らずの誰かが瞳に焼き付ける
声も出せないほどに深い場所で
またこの鏡が私を呼ぶのだ
鏡を覗くと溺れそうだ
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