尻に火(2024.1.16)

文字数 470文字

全く気づいていなかったが
尻に火がついていた

すっかりと
立ち上がることを
忘れてしまった僕は
どうにかしようと
火を消すことに
必死になる

まず
立ち上がる
ことが難しい

座り続けて
腹と腰が重くなり
立ち上がれないのだ

そして
歩きかたを忘れて
走るどころか
歩くことさえ
ままならない

その間も
ずっと
尻は燃えている

このままでは
燃え尽きてしまう

誰かが
消火器で
火を消してくれた

 こうでも
 しないと
 立ち上がらないから

やつれた
妻は
呟いた

我が家の
家計は
火の車らしい

いくら
言っても
立ち上がらない夫に
気づかせるために
尻に火をつけたのだ

 でも
 立ち上がらなかった
 もう
 疲れたの
 さようなら

妻は
冷たく笑む

ほんとうは
気づいていたのだ

どうにかなる
と高をくくって
妻を働かせて

もう少し
早く
立ち上がっていれば
妻が
妻でなくなる日は
こなかったのかもしれない

身から出た錆
っていうやつだ

おそる
おそる
尻を触ったが
火傷のあとはない

さて
どうするか?

妻を
追いかけようとするが
やはり立ち上がれない

立ち上がらなかった
のではなく
立ち上がれないのだ

真実を伝えたいのだが
やはり立ち上がらなかったのかもしれない
から座り続ける
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