傘はいりませんか(2024.2.25)

文字数 328文字

傘はいりませんか?
と声がするのだけれど
誰もいない

雨は降っていないのに
そして
傘を持っているのに


空耳
と思って
歩き始めると
ぽつりぽつり
降り始める


傘はいりませんか?
と声がするのだけれど
誰もいない

空耳
と思って
歩き続けると
本降りとなる

鞄に入れたはずの
折りたたみ傘が見つからず
雨宿りする


傘はいりませんか?
と声はしないが
誰かを感じる


雨が止んだので
歩き始めようと
するけれど
一歩も動けない

みんな
大急ぎで
駅へ向かう

どうして
僕は
動けないのだろう

傘はいりませんか?
と言った声の主を探すが
やはり見当たらない

動けない理由が
分からないまま
僕は立ち続ける

はたと
気づく

そういえば
今朝のゴミ出しで
長年使った傘を捨てたのだ

穴が空いたから
仕方なく

首筋に
ポトリと
雨粒が

まだ
使えたのに
と頭上から声がする
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み