忘年会(2023.12.26)

文字数 517文字

懐かしいと思うほど
時間が経ったはずなのに
向かいに座る友は相変わらず
くしゃりと笑う

会うのは
三十年ぶり

朝から晩まで一緒に過ごした小学生の頃からは
四十年の月日が流れたけれど
見た目は変わっても人間は変わらない

あの頃は学校に行くのが楽しくて 誰とでも仲良くできた
ところがどうだ?
今は会社に行くのが嫌で 人間関係に疲れ果てている

殻に閉じこもり 全身に言葉に棘を生やして
損得勘定や好き嫌いで拾ったり捨てる日々は
お互い様で 僕だっていつ刺されるか分からない

くしゃくしゃ くしゃり

三十年ぶりの笑顔は閉じられた殻をゆっくりと破り
棘をぽろりと落としてくれる
様子が変わっても人間は変わらない

くしゃくしゃ くしゃり

友と会わなくなってからは
幼い息子たちの笑顔に救われたのだ
と思い当たり 
ついこの間のことなのに 懐かしく思う

彼らも大人になり
しだいにくしゃりと笑わなくなった

今度は
僕の番だ

くしゃくしゃ くしゃり

僕が友のように笑うことで
息子たちを励まし 職場の空気を和ませるのだ

久しぶりに笑いすぎて
頬肉が痙攣している

ぐしゃぐしゃ ぐしゃり

ぎこちなくてもいい
皺が増えてもいい
とにかく笑えばいい

白髪とハゲの笑い声が
居酒屋に響く師走の夜
終電まで残り僅か
さぁ、ラストスパートだ
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