十三話 『カフェメニュー試作』

文字数 1,634文字

やはりカフェ飯はワンプレート勝負だと思うんですよ。というわけでこんなのはどうでしょう?
わぁ、なるほど! シンガポール風チキンライスですね。鶏の出汁がよく染み込んだご飯としっとりと火の入った鶏肉。甘めのタレとスイートチリソースがまた絶妙に合いそうですね!
えぇ、海南鶏飯とも呼ばれるアジア料理ですね。同系統の料理としてタイのカオマンガイと言えばピンとくる人も多いのではないでしょうか。基本に忠実なレシピですが、少し甘めのこってりしたソースにしてあるんです。深煎りのコロンビアに合うようにイメージしてみました
なんだっていいが、皿にゾンビ汁がついてるぞ
確かにバランスのいいコロンビア産の豆ですが、程よい苦味を引き出すことで、甘辛酸の味付けが特徴的なアジア料理によくマッチしています。うまく補完しあってるのではないでしょうか
さすがタバラさん。見事な慧眼ですね。コーヒーは何かと食後に飲むものとか、スイーツと一緒に、なんてイメージが巷にはありますが、実のところ料理と合わせて楽しめる懐の広い飲み物だと思うんですよ
腹が満たされりゃなんだっていいだろ。それよりゾンビ、自分の肉が腐り落ちかけてるぞ
和食は引き算と言われますが、味を重ねるという発想は素晴らしい再定義と言えますね。ボクの知る限りアメリカから出て来た発想なのかな? まぁ、ワンプレートで気軽に楽しめるカフェメニュー、それとワンカップのコーヒーで世界が深まるというのは、とても魅力的ですね
よくもまぁ、意識高そうなくせに中身が薄い言葉がポンポン出てくるな
さて、ボクのアイデアはここらへんにしておいて。どうです? お二人もメニューを考案して、実際に作ってみては?
(それでバイト代がでるなら別にいいか)
〜1時間後〜
慣れないながらできました!
ほうっ、これは! 見たところバターチキンカレーですね? カフェ飯の定番中の定番。これを出されて嬉しくない人はいないでしょう
えぇ、でも実はこれチキンではなくて大豆から作られた肉を使用しているんですよ。ブイヨンも野菜だけから取ったもので、動物性の食材は一切使用してません。ベジタリアンやビーガンにも配慮した料理にしてみました
やはりタバラさんが来てくれて良かった。食文化の多様性という課題は今の時代避けては通れないものですからね
心底めんどくさい奴らだな。そんなに肉が嫌なら道端の雑草でも食ってろよ
話は聞かせてもらったわ。試食なら私に任せなさい
おっ、これは料理研究家のキノコ先生じゃないですか?
えっ⁉ あなたはかの有名なキノコ先生! まさか二人ともお知り合いなんですか?
でたなキノコの化け物。カレーの具材にしてやろうか?
さっそくカレーを頂いてみましょうか。パクッ
………………
…………まずいわね
そりゃそうだろうな。意識だけ高い素人が作ったんだから
では、この海南鶏飯はどうです? ボクはこう見えても生前、餃子の王将のホールでバイトしてたんですよ
さっさと成仏しろよ。というかホールじゃなんにもなんねえだろ
パク……パク……味がどうこう言う前に、臭いわね。死臭がするわ
………………
さすがキノコ先生。辛口なコメントだ
普通の意見だろ。誰でもわかるわ
これじゃ店を出す以前の問題ね……そういえばあなた。あなたはどうなの?
はっ? 俺?
エクレアアイス、あれは中々良かったわ。あなたには光るものがある
別に食わせてやってもいいが、胞子を撒き散らすなよ。さっきから鼻の奥がむずむずしてしょうがない
ほらよ
こ、これは…………
これはまさか……
あなた……
どこからどうみてもただの卵かけご飯だろ
あなたやるわね。その発想はなかったわ。まさかカフェでこれを出そうなんてね
もっと総ツッコミされる心積もりでいたわ。驚くもんじゃねえから黙って食えよ……
ずる……ずる……うまいわね。普通に
ですね……私のカレーより美味しい……普通に……
ほらよ、コーヒーはマックスコーヒーで十分だろ。お前ら客がイェオンに何を期待してんだと思ってんだ
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登場人物紹介

 佐々木隼人(通称ササーキ)


本作の主人公にして、魔王打倒を夢見る異世界転生勇者。もとは栃木に住む無職のおじさんだったが、母親の作った夕飯を食べている最中に謎の死を遂げる。


それからなんやかんやあって魔境グンマーランドに降り立つ。ちなみに容姿はおじさんのまま。


好きな食べ物は卵かけご飯。

決め台詞は、「胃が痛い」。

基本的に優しい性格をしているが、それ故に人と上手く打ち解けられない一面もある。女性と話すのは特に苦手。


いつか元の世界に戻り、故郷のおふくろに孫の顔を見せてやりたいと願っている。

 ネタバラシおじさん(通称タバラ)


どこからともなく現れた謎のおじさん。ことあるごとに物語の核心を突いた鋭い指摘をする。

実は彼自身がササーキの特殊スキルであり、実はササーキにしか見えない亡霊でもあるという初期設定を持つ。(しかしその設定は一瞬にして灰となった)

意外とロマンティックな一面もあり、エッチなことは少し苦手。パンケーキ屋さんの情報だけは詳しい。

グンマーランドにあるショッピングモール、ジャッコスに行くのが趣味。いつの日か表参道でカフェ巡りをしたいと夢見ている。

 決め台詞は、「いったん寝てみましょう」。

ゾンビ


ごく普通の平凡なゾンビ。なんの前触れもなく登場し、しれっとササーキたちの仲間になる。意外と博識。意識は常に高くありたいと思っているため、流行には敏感で、世の中の動向にはアンテナを張り巡らせている。

自身が運営しているブログの事を記事と呼び、日々ネタ探しに奔走する。最近買ったMacbookは一番の愛用品。


尊敬する人物はスティーブ・ジョブズ。

好きな言葉は『コミット』、『スキーム』、『シナジー』など。

謎のゲーム実況者


(ただいま出演交渉中)

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