十四話 『買いだし』

文字数 2,386文字

卵かけご飯がメニューになったは良いが、なんで俺が食材の買い出しに行かんとならんのだ
しかしイェオンのスーパーは広いな。どこに何があるか全然わからん
むむ、あそこに店員がいるな。ちょっと案内してもらうか
いらっしゃいませ〜。何かお探しものですか?
た、たいした物じゃないんだが、卵の売り場を知りたくてな(目が隠れてるから俺でも話しやすいな)
かしこまり〜。それでしたらこちらになりますね〜
おお、助かる……って、これ魚卵じゃねぇか。いやぁ、こっちの卵じゃないんですよね
こちらタラコですね〜
あっ、えっ、えぇっ?
タラコですね〜
あっ、まさかタマゴをタラコと聞き間違えたってこと? ふぁっ、そっちだったのね
……?
なんだよぉ。つい卵って頭が先にあったからさ。タマゴとタラコ、確かに似てるな。へへへ、ちょっと面白い聞き間違いじゃないか、なあっ?
…………
笑えよ。少しは気持ちを共有しろ。俺だけ無理して歩み寄ってて寂しいじゃん
そちらの膨らんだお腹の中身は卵ですか?
なにさらっと失礼なこと言ってくれてんだよ。腹の中に卵があるわけねぇだろ
あっ、間違えました。お腹の中身、卵になりますか?
間違ってるのは言い方じゃないから。それに日本語がより間違ってるぞ。お釣りになりますみたいな乱れた言葉だよまったく。そういうのバイト敬語っつうんだよな
ぽんっ、ぽんっ
興味津々で俺の腹を叩くな。話を聞けよ、ちゃんと。俺は哺乳類だっつうの
オネェ類?
俺はKABAちゃんとかIKKOさんの仲間かっ!
………………
何でもいいけどよ。オネェの方たちを類とか雑なくくり方すんなよ。敬意を持て。あと卵を生むのは雌だからな。すげえ敏感な領域だからな、そこんとこ
ということは脂肪の塊ですね
とんでもなく鋭角な核心への迫り方だな。全盛期のシューマッハのコーナリングか
ふふふ、違います……ねぇ
あからさまな愛想笑いをするな。たとえがわからないなら、とぼけた顔でもしてろよ。ジェネレーションギャップを感じて逆に心が痛むんだよ
こちら400円になりま〜す
だから買わないんだっつの。俺が探してるのはニワトリの卵なんだって
あぁ、そちらでしたら
おぉ、やっとわかってくれたか。頼むよな、俺だって暇じゃないんだから
こちらになりますね〜
おいっ、なんか違和感あるぞ⁉ 巣ごと持ってきたのはとりあえず置いとくけど。

それにしてもニワトリの卵にしては大きくないかっ⁉

えぇ、そうですかね? 普通の大きさだと思いますが
そんなわけあるか。倍ぐらいはでかいぞ。いったいこれ何の卵なんだよ?
言われた通り、シラトリの卵ですけど。なにか問題でも?
えっ、えっ、えっ⁉
白い鳥のシラトリですよ〜
ちょっと待て……そうなると問題が色々出てくるわ
えぇっ⁉
なに俺より驚いてんだよ。あんたの耳の悪さに驚愕してるのはむしろこっちなんだよ
ムシロコッチ?
デイダラボッチみたいに言うなよ。むしろ! こっち! 俺が驚きたいんだよ
あぁ〜デイダラボッチ!
もうそういうのはスルーするからな……えぇと、何の話か忘れちゃったじゃねえか
ふふふふふふふ、卵wwwww
なんで笑ってんだよ。笑い方が怖ぇよ……
ニワトリがシラトリってwwwww
なんだよ自覚してたのかよ。でも、俺が気になってるのはそこじゃねえからな。普通はシラトリとか言わないんだっつの。ハクチョウだからなハクチョウ
すみません。店の商品にはちょっと(うと)くて……
そもそも白鳥の卵は商品じゃないだろ!

なんか巣ごと持ってきてるし、よく店内から見つけられたな

霊感……ですかね!
なに誇らしげに言ってんだ。……ってか、よく見たらあんた……
???
スーパーの定員の格好してないじゃねえかっ⁉ なんか白装束みたいの着てるし
はい……
商品に疎いとか言ったよなぁ?

軽く流してしまったけど、さらっと霊感とか。妖怪界隈では割とメジャーなデイダラボッチにやたら反応してたし……

はい……私……死んだんです。五年付き合った恋人に捨てられて……睡眠薬をたくさんのんで……
幽霊⁉ おばけ⁉
はい……
そうなるとやっぱおかしくないか? じゃあなんで最初にいらっしゃいませとか言ったんだよ⁉
私……レジ専門の係ですから……バーコードぴっぴするだけなので、商品には詳しくないんです
あっ、えっ? 店員は店員なんだ……なんかすごいややこしいんだけど
白装束は特別に着させてもらってるんです。私……死んだから……
いやいやいや。まったく意味がわからない
お〜い、ササーキさ〜ん!
おぉ、タバラじゃないか。どうした?
ササーキさんの帰りが遅いから心配になって来てみたんですよ。卵ていどの買い物もできないのかって
ちょっと毒があるよね?

……ともかく、すまなかったな

それはそうと、どうしたんですか? 何か問題でもありました?
問題ってわけでもないんだが、こちらの店員さんがさ
どうも、優香あらため幽香です。死んだこともあり、心機一転という思いで改名をしました
THE ALFEEなみの心意気だな。あそこもアルフィーとかAlfeeとか色々変わってるけど
………………
まぁ、そういうわけでな。ふと、思ったんだよ。なんか俺のまわりには死んだような奴らが多いなってな、ははは
……………………
どうしたタバラ? 真面目な顔してっ、ここで一発ネタバレしてみろよ、ははは!

それとも単なる偶然でネタバレなんてないってか?w

……………………

どうしたんだよ!

幽香さんもそうだし、ゾンビもさ、よく考えたらママも天使の格好してるよな!

あははっ、偶然って重なるもんだな!

……………………
……………………………
えっ? なにっ? えぇっ⁉ 頼むから何か言って⁉ グンマーランドって霊界なの? 地獄? えっ⁉
……………………
なに、すごい怖いんだけど……

なんだか寒気してきた。なんとか言えよ!


……………………
………………
あまりこのことは深く考えないようにしよう。そう思うササーキであった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

 佐々木隼人(通称ササーキ)


本作の主人公にして、魔王打倒を夢見る異世界転生勇者。もとは栃木に住む無職のおじさんだったが、母親の作った夕飯を食べている最中に謎の死を遂げる。


それからなんやかんやあって魔境グンマーランドに降り立つ。ちなみに容姿はおじさんのまま。


好きな食べ物は卵かけご飯。

決め台詞は、「胃が痛い」。

基本的に優しい性格をしているが、それ故に人と上手く打ち解けられない一面もある。女性と話すのは特に苦手。


いつか元の世界に戻り、故郷のおふくろに孫の顔を見せてやりたいと願っている。

 ネタバラシおじさん(通称タバラ)


どこからともなく現れた謎のおじさん。ことあるごとに物語の核心を突いた鋭い指摘をする。

実は彼自身がササーキの特殊スキルであり、実はササーキにしか見えない亡霊でもあるという初期設定を持つ。(しかしその設定は一瞬にして灰となった)

意外とロマンティックな一面もあり、エッチなことは少し苦手。パンケーキ屋さんの情報だけは詳しい。

グンマーランドにあるショッピングモール、ジャッコスに行くのが趣味。いつの日か表参道でカフェ巡りをしたいと夢見ている。

 決め台詞は、「いったん寝てみましょう」。

ゾンビ


ごく普通の平凡なゾンビ。なんの前触れもなく登場し、しれっとササーキたちの仲間になる。意外と博識。意識は常に高くありたいと思っているため、流行には敏感で、世の中の動向にはアンテナを張り巡らせている。

自身が運営しているブログの事を記事と呼び、日々ネタ探しに奔走する。最近買ったMacbookは一番の愛用品。


尊敬する人物はスティーブ・ジョブズ。

好きな言葉は『コミット』、『スキーム』、『シナジー』など。

謎のゲーム実況者


(ただいま出演交渉中)

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色