十六話 『冥土カフェ』

文字数 1,514文字

化けキノコは死んだ。俺たちは悲しみを乗り越えて、強く生きねばならない
というわけで、気晴らしにグンマーランドの電気街に来ましたよ。ここは世界に誇るサブカルチャーの街でもあるんですね
もう何でもありだな


いやぁ、道行く人たちがたくさん。活気と熱気がすごい街ですね
一刻もはやく店内に入らせてくれ。暑すぎて溶けちまうよ
それでは視察も兼ねて、あのメイド喫茶というやつに入ってみましょう。ゾンビカフェの参考になるかもしれません
なにやら楽しげなテーマソングが聞こえてくる。結構、名のある店じゃないのか?
世界展開や、アイドルなんかも輩出している大手のカフェですね。メイドりーみんって言うんですが……
ちょっと待て
はい?
看板ちゃんと見てみろ。メイドりーみんじゃなくて冥土りーみんじゃねえか
まぁ、細かな違いですね
おかしいだろ。メイドと冥土じゃ全然違うじゃねえか。死者が行く国だろ、冥土つったら……
まぁ、同じようなもんですよ。そんなことより、はやく入りましょ
同じようなもんじゃねえから。だいたい冥土は良いとして、りーみんってなんだよ。なんにもかかってないじゃない
まぁまぁ、死者の見る夢を楽しみましょ? なんつって! はははっ
笑えねえよ……お前がいうと伏線みたいに聞こえるんだよ。ちょくちょく『死』をにおわせやがって……
カランカランッ
おかえっしゃあぁぁせぇぇっ! ごしゃあっせぇっさぁ!
うわっ⁉ びっくりした! 勢いよく飛び出してきやがって、てめぇ!
威勢がいいですなぁ〜
威勢というか、なんて言ったんだよ。やたらしゃーしゃー叫んでたけど
おかえっしゃあぁぁせぇぇっっっ! ごしゃあっせぇっさぁっっっ↗!
うるせえよ。まさか、『おかえりなさいませ、ご主人さま』って言ってんのか?
当たり前じゃないですか、ササーキさん。ここは冥土カフェなんですから
居酒屋か、ここは? 元気と安さで勝負じゃねえんだよ。もう少し落ち着いて出迎えられたいわ
へっへっ! ツッコミが鋭いっすねお客さぁ!
ツッコミじゃなくて、素直な指摘だわ。それより、君のそのキャラはそれでいいのかい? メイド感ゼロだけど……
そういうつもる話もあることですし、いったん中に入りましょう
ここで解決すべき問題だと思うんだがな、俺は……
二名っさぁっ! ごあんないしやりやぁあっす!
ササーキとタバラは窓際の席へと通された。
いやぁ、クーラーがきいてて涼しいですね〜
中は意外と普通だな……
それどころかお洒落な店内ですよ。窓からの眺めもいいですし
一時はどうなるか不安だったが、変な場所じゃなさそうだな。とりあえず何か冷たい飲みものでも選ぶか……
あっ、ササーキさん。メニューならこっちにありますよ
おっ。悪いな、タバラ。なんか本格的なメニューだな。えぇと、何か冷たいものは……
へい、おまちっ!
はえぇよ! まだ何も頼んでないだろっ!
えぇ〜、こちら枝豆っすぅ!
枝豆くらい見りゃわかるよ! だから頼んでないんだっつの!
あっ、さーせん!
いや、わかればいいんだけど……
説明が足りなくてさーせん! こちらお通しですね!
やっぱ居酒屋じゃねーかっ!
まぁまぁ、ササーキさん
どこの世界にお通しを出すカフェがあるんだよ! 枝豆をつまんでコーヒー飲めとでも言うのかい?
あっ、生ビールも二つお願いします!
へいっ! 生二丁いただきゃっしたっ!
もう絶対居酒屋じゃん!
あと、このピリ辛きゅうりとチャンジャもお願いします!
かしこまりゃっしたぁっ! 少々お待ちっ!
………………
いやぁ、元気があっていい子ですね。ぜひ我々のゾンビカフェに招き入れたい
冷静に考えれば、カフェでパンケーキなんか食べるよりは居酒屋の方がいいと思うササーキだった。


次回、『冥土りーみんの謎』に続く!

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登場人物紹介

 佐々木隼人(通称ササーキ)


本作の主人公にして、魔王打倒を夢見る異世界転生勇者。もとは栃木に住む無職のおじさんだったが、母親の作った夕飯を食べている最中に謎の死を遂げる。


それからなんやかんやあって魔境グンマーランドに降り立つ。ちなみに容姿はおじさんのまま。


好きな食べ物は卵かけご飯。

決め台詞は、「胃が痛い」。

基本的に優しい性格をしているが、それ故に人と上手く打ち解けられない一面もある。女性と話すのは特に苦手。


いつか元の世界に戻り、故郷のおふくろに孫の顔を見せてやりたいと願っている。

 ネタバラシおじさん(通称タバラ)


どこからともなく現れた謎のおじさん。ことあるごとに物語の核心を突いた鋭い指摘をする。

実は彼自身がササーキの特殊スキルであり、実はササーキにしか見えない亡霊でもあるという初期設定を持つ。(しかしその設定は一瞬にして灰となった)

意外とロマンティックな一面もあり、エッチなことは少し苦手。パンケーキ屋さんの情報だけは詳しい。

グンマーランドにあるショッピングモール、ジャッコスに行くのが趣味。いつの日か表参道でカフェ巡りをしたいと夢見ている。

 決め台詞は、「いったん寝てみましょう」。

ゾンビ


ごく普通の平凡なゾンビ。なんの前触れもなく登場し、しれっとササーキたちの仲間になる。意外と博識。意識は常に高くありたいと思っているため、流行には敏感で、世の中の動向にはアンテナを張り巡らせている。

自身が運営しているブログの事を記事と呼び、日々ネタ探しに奔走する。最近買ったMacbookは一番の愛用品。


尊敬する人物はスティーブ・ジョブズ。

好きな言葉は『コミット』、『スキーム』、『シナジー』など。

謎のゲーム実況者


(ただいま出演交渉中)

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