十五話 『カフェメニュー試作2』

文字数 1,980文字

おぉ、やはりササーキさんの作るTKGは完成度が高いですね!
逆にこっちが不安だわ。こんなんで良いのかよ本当に
食材そのものの味で勝負する、そのシンプルさが逆にオシャレなんですよ
それは単なるお前の勘違いだ、腐肉。卵かけご飯を勝手にオシャレな食い物にすんなよ。逆にとかねーからな
それはそうと。メニューが卵かけご飯だけじゃ、ちょっと寂しいんじゃない?
確かにそれは否めませんね。どうです、ササーキさん? 何か良いアイデアはありませんか
んなこと言われても、長年ニートだった俺に卵かけご飯以外のモンは作れねーぞ。できるとすれば、TKGのアレンジぐらいだろ
それですよ! ササーキさん!
さすがササーキさん! ナイスアイデア!
それ以外に手は考えられないわね!
…………(本当に大丈夫なのか、こいつら)
さて、ササーキさん。この卵かけご飯に一体どんな魔法をかけてくれるのでしょうかね
お前たちは俺と卵かけご飯に何を夢見てるんだよ
いよいよ、イリュージョンショーがはじまりますよ!
アレンジつったって、ラー油とかゴマ油かけりゃ大抵うまくなるだろ
卵かけご飯にゴマ油をかけ、夢中でかきこむタバラ、ゾンビ、キノコ先生の三人。
こ、これは……うまい! ただでさえ完成されている卵かけご飯に香ばしさがプラスされて、なんかもうすごいっす
もはや意識高いコメントもできなくなってるじゃないか。お前の唯一の持ち味だろ
卵かけご飯の底力を感じさせられますね。次のアレンジが楽しみですよ
ササーキちゃん、次はどうアレンジするのかしら? 私はもうどうしていいのかわからないわ
そこの無能ふたりはともかく。お前がお手上げなのは終わってるだろ、化けキノコ
なぜだかムショーに美味しく感じられるんですよね。箸が止まりません
んなわけねぇだろ。どう考えても、そんな大層な食いもんじゃないからな
これが本当なんですよ、ササーキさんも食べてみてください。ご飯ならたくさん炊いてますし
そこまで言うなら………………はふはふ……
……っ⁉
でしょ?
……うまい。いや、これはうますぎる……
一口食べると、また次の一口が欲しくなる。謎の中毒性というか。既に空腹ではなくなってるはずなのに、胃袋がもっともっとと要求してくるような
おかしい……手が止まらん……
やっぱりササーキさんにはTKGの才能があるんですよ!
そんな馬鹿な。ただのご飯にただの卵をかけただけだぞ⁉
そんなことより、ササーキさん! ご飯より先に卵がなくなりそうですね
タバラ、白鳥の卵でもなんでも良いから買ってきてくれ!
合点承知の助!
あとタバラ! ありったけの食材も買ってきてくれ! 色々とアレンジしてみる!
ご飯も心配なんで、もう十合ほど炊いて置きましょうか
こうして四人のTKGパーティは夜通し続いた。
焼いたステーキを〜、卵かけご飯に〜、ドーンッッ!
ホイコーロー! ホイコーロー! 既に完成された料理、うふふふふ!
キャビア、トリュフ、フォアグラ! 3大珍味を〜、どさっ! もういっちょ、どさぁっ!
そ〜いっ! こっちはグミご飯じゃ〜いっ!
うふふふ、私なんかもはやなんの関係もないモンブランをそのままいただいちゃってますよ〜
あははははは! 
うふふふふふふ!
えへっ……えへっ……ふひひ……
もっと……モット……TKG……モットクイタイ……
あぁぁぁぁぁあああ! 食材がもうないぞぉぉおおおお!
死ヌ……渇キガ……卵カケゴ飯……ティティティティティティティッ、ホワァッッ!
阿ッ、キノコ! アソコ似キノコ我!
キノコ……ピンクキノコ……ウマソ……
捕まえろおおおおぉぉぉォ! 焼いて食えええええええエエエエ!
自分ノ身体食ウ……ウマイ……ムシャムシャ
〜数時間後
ちゅんちゅん
はっ⁉ 朝だ……
むにゃむにゃ……
どうやらボクたち、いつの間にか眠っていたみたいですね……
うぅ……頭が痛い……なんか眠っていたというより
幻覚を見ていたような気がするのですが。ハイになってたというか、ラリってたというか……
卵かけご飯を食べた時から、だんだん気分が楽しくなってきて……
もしかすると問題は卵かけご飯ではないのかもしれません
……どういうことです?
見てください。部屋中にふわふわした胞子が散らばっているのがわかりますか?
これは……キノコの胞子?
ちょっと指で取って、ナメてみてください
ぺろっ……こ、これはっ⁉ あの時の感覚と同じだ!
おそらく卵かけご飯がきっかけではなく、この胞子を吸い込んでいる間に、ボクたちは徐々におかしくなっていたのかもしれません
つまり、私たちはキノコ先生の胞子でラリってたということだったのですね
……(そういう大事なことをネタバレしろよ)
ところで肝心のキノコはどこへ行ったんだ?
み、みてください……ササーキさん、ソンビさん……
…………こ、これは……………………
このピンク色をした繊維質の破片は、まさか…………
あっ…………
………………
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登場人物紹介

 佐々木隼人(通称ササーキ)


本作の主人公にして、魔王打倒を夢見る異世界転生勇者。もとは栃木に住む無職のおじさんだったが、母親の作った夕飯を食べている最中に謎の死を遂げる。


それからなんやかんやあって魔境グンマーランドに降り立つ。ちなみに容姿はおじさんのまま。


好きな食べ物は卵かけご飯。

決め台詞は、「胃が痛い」。

基本的に優しい性格をしているが、それ故に人と上手く打ち解けられない一面もある。女性と話すのは特に苦手。


いつか元の世界に戻り、故郷のおふくろに孫の顔を見せてやりたいと願っている。

 ネタバラシおじさん(通称タバラ)


どこからともなく現れた謎のおじさん。ことあるごとに物語の核心を突いた鋭い指摘をする。

実は彼自身がササーキの特殊スキルであり、実はササーキにしか見えない亡霊でもあるという初期設定を持つ。(しかしその設定は一瞬にして灰となった)

意外とロマンティックな一面もあり、エッチなことは少し苦手。パンケーキ屋さんの情報だけは詳しい。

グンマーランドにあるショッピングモール、ジャッコスに行くのが趣味。いつの日か表参道でカフェ巡りをしたいと夢見ている。

 決め台詞は、「いったん寝てみましょう」。

ゾンビ


ごく普通の平凡なゾンビ。なんの前触れもなく登場し、しれっとササーキたちの仲間になる。意外と博識。意識は常に高くありたいと思っているため、流行には敏感で、世の中の動向にはアンテナを張り巡らせている。

自身が運営しているブログの事を記事と呼び、日々ネタ探しに奔走する。最近買ったMacbookは一番の愛用品。


尊敬する人物はスティーブ・ジョブズ。

好きな言葉は『コミット』、『スキーム』、『シナジー』など。

謎のゲーム実況者


(ただいま出演交渉中)

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