三話 「黒幕登場! ジャッコスの真の姿は人身売買組織だった!」
文字数 1,810文字
ササーキさん、女子高生に見惚れてないであれを見てください。今回の黒幕ですよ。
なぁ、タバラ。俺がなにも認識する前にネタバレするのやめてくれないかな
ジャッコスモールへ向かう道中、横断歩道の前で信号待ちをする二人。JKの脚を凝視するササーキの注意をタバラがそらした。
ほら、あれですよ。足腰が弱く、大きな荷物を背中に背負って、果てしなく長い横断歩道をふらふらと歩く老婆がいるでしょ?
むっ、確かに。足腰が弱く大きな荷物を背中に背負って、果てしなく長い横断歩道をふらふらと歩く老婆がいるな。正直、どうでもいい。(あんな善人そうな老婆が黒幕だというのか?)
ササーキさん、口から出たセリフと心の声が逆になってますよ
心を奪われ過ぎですよ。ちゃんとあっち見てください。黒幕は老婆でなくてですね……
さぁ、憐れなおばあさん。この善良なる市民があなたの荷物を持ってさしあげますよ
そこには老婆の荷物を持ち、安全に横断歩道を渡れるよう側で付き添い歩く好青年の姿があった。
この世も捨てたものではないな。グンマーランドにもあのような聖人君子がいるとは……
いや、だからあの一見好青年に見える輩が黒幕なんですって。ジャッコスを経営しながら、その裏では組織がらみの人身売買に手を染めているという
だから今その話をしていたんですよ。奴は表向き慈善事業に力を入れているように見せて、各国の麻薬カルテルとも太いパイプを持っているとか
にわかには信じがたいな。ドラッグに人身売買……それがあのグンマーランド最大の闇市ジャッコスで行われているなんて……JKが俺の童貞を奪ってくれる日は来るのだろうか?
なにいってるかもう全然わからないです。ササーキさんが二つの事を同時に考えられないのはよくわかりました。
ジャッコスの店長が黒幕という衝撃の事実を知ったササーキは真相を探るべくジャッコスへと向かった。
これが闇市ジャッコス……さすがに普段はお目にかかれないヤバい代物がたくさん売っているな
へへへっ、そこのダンナ。なんの肉かわからないが安くてたらふく食える飯はいらんかね
雑然としたジャッコスの店内。ひしめき合うように様々な露店が並んでいる。
使用目的のわからない異国の工芸品、官能的な香りのスパイス。乾燥した虫類が店先に吊り下げられていることもあれば、切り取られた動物の首にハエが飛び回っていることもある。
店の者も異様なら、それを求める者も異様である。
どこかからか流れてきたような身なりの者に、路上に倒れ伏しうめき声を漏らし続ける者、より集まり合い欠けたコップに満たされた安酒をかっくらう老人たち。
それらが渾然一体となり、思わず鼻をつまみたくなるような独特の臭気を漂わせていた。
ササーキさん、アイス買ってきましたよ。ガリガリ君で良かったですよね
あっ、ありがとう! ちょうど食べたかったんだ、これ!
むっ、これはササーキさんではない……⁉
彼はいったいどこへ? まさか、ジャッコスの店長に命を狙われてしまったのか⁉
ササーキくん、君はいい目をしているね。どうだい? うちで働いてみないかい?
少し離れた場所でベンチに座るササーキの姿を見つけたタバラであったが、同時に恐るべき光景を目にする。
宿敵ジャッコスの店長と勇者ササーキ━━互いが龍虎の如く相まみえる時、果たして何が起きてしまうのであろうか。
(さすがササーキさん、相手が闇のカリスマであろうとも甘言に惑わされないなんて。それでこそニートのカリスマだ……)
社員割りというシステムを知っているかい? うちの商品、つまり若くて可愛い女の子が格安で買えるんだ。それらは君の好きにしてもいいんだよ
(とてつもなく葛藤している。きっと働くことと女の子を天秤にかけているんだ……)
ふふふ、迷っているようだね。時間はいくらでもある。ゆっくり考えてみるといい……
闇のカリスマは謎めいた言葉を残し姿を消した。
タバラが駆け寄ると、そこには大量の汗を額から流すササーキがうなだれるようにベンチに座っていた。
ジャッコスの店長……恐ろしい男だ。巧みな話術だけではない。心の隙間に忍び込んでくるようなあの感覚……
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