一話 「実のところ魔王はササーキの父親だった」

文字数 857文字

魔境グンマーランドに来てから三日が経った。

運命のあの日、自分の部屋でおふくろの飯を食ってたら急に胸が苦しくなって…………

それで俺は死んだとばかり思っていた。

なぜ俺は死んだのだろう。というか、なぜ俺はグンマーランドとかいう得体の知れない場所にいるのだ。

まぁ、いい。考えるのはよそう。俺は勇者だ。

 ササーキは魔境グンマーランドのとある平凡な一家の子供として転生した。何を言ってるかよく分からないだろうが、母親と二人の娘は自然とササーキの存在を受け入れたのだ。
俺に父親はいない。いや、前の俺にはいたが、転生した俺にはいないのだ。くそっ、せめて転生する際にイケメンにしてくれれば混乱は避けられたものの、なぜそのままのビジュアルなのだ……妹のパンツが見たい。
ササーキは居間に飾られている父親の写真をじっと見つめ、こう思った。
(特に思い入れがない)
しかし、背後に妹たちの視線を感じたササーキは好感度を上げようと、少しわざとらしいぐらいに演技をはじめた。
父さん! あんた、なぜ死んでしまったんだ。家族を残して……あんまりだっ!
お兄ちゃん……そんなに自分を責めないで。お兄ちゃんが泣くと、エスメラルダも悲しい。
(えっ、別に自分を責めたわけではないのだが……えっ、俺が殺したのっ? どういう意味⁉)
しかしそんな疑問も、妹の豊かな胸の谷間を見た瞬間にどうでも良くなった。顔を埋めたい。ただそれだけを願うササーキであったが、突然窓から侵入してきた男により状況は一変する。
私は、あなたの固有スキル『ネタバラシおじさん』です。実はあなたの父親は魔王なんですよ。
(すごい汗だ。きっと走って来たに違いない。)
それとあなたの妹さん、私のことに気づいてないみたいでしょ? 実は私は亡霊なんですよ。この事実はラストのどんでん返しで明かされます。
(固有スキルなのか亡霊なのか。どっちかはっきりさせて欲しい。)
こうしてササーキはある重大な真実に思い至るのであった。

特に思い入れのない人間が魔王であることを明かされたところで、たいして心に響かない、と━━。

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登場人物紹介

 佐々木隼人(通称ササーキ)


本作の主人公にして、魔王打倒を夢見る異世界転生勇者。もとは栃木に住む無職のおじさんだったが、母親の作った夕飯を食べている最中に謎の死を遂げる。


それからなんやかんやあって魔境グンマーランドに降り立つ。ちなみに容姿はおじさんのまま。


好きな食べ物は卵かけご飯。

決め台詞は、「胃が痛い」。

基本的に優しい性格をしているが、それ故に人と上手く打ち解けられない一面もある。女性と話すのは特に苦手。


いつか元の世界に戻り、故郷のおふくろに孫の顔を見せてやりたいと願っている。

 ネタバラシおじさん(通称タバラ)


どこからともなく現れた謎のおじさん。ことあるごとに物語の核心を突いた鋭い指摘をする。

実は彼自身がササーキの特殊スキルであり、実はササーキにしか見えない亡霊でもあるという初期設定を持つ。(しかしその設定は一瞬にして灰となった)

意外とロマンティックな一面もあり、エッチなことは少し苦手。パンケーキ屋さんの情報だけは詳しい。

グンマーランドにあるショッピングモール、ジャッコスに行くのが趣味。いつの日か表参道でカフェ巡りをしたいと夢見ている。

 決め台詞は、「いったん寝てみましょう」。

ゾンビ


ごく普通の平凡なゾンビ。なんの前触れもなく登場し、しれっとササーキたちの仲間になる。意外と博識。意識は常に高くありたいと思っているため、流行には敏感で、世の中の動向にはアンテナを張り巡らせている。

自身が運営しているブログの事を記事と呼び、日々ネタ探しに奔走する。最近買ったMacbookは一番の愛用品。


尊敬する人物はスティーブ・ジョブズ。

好きな言葉は『コミット』、『スキーム』、『シナジー』など。

謎のゲーム実況者


(ただいま出演交渉中)

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