第14話 パチンコの裏側 その2

文字数 712文字

「パチンコってつまんないね」
「うん……」
「千円で、玉が出るってことないんだネ」
「そうだよ。」

「ねぇ、さっきなんで『パチンコはちょっと』って言ったの?」

「……昔の話なんだけど」
「うん……」

以下、聞いた話を妄想モードで。

それはまだ、諭吉は駆け出しのサラリーマンで、やたら研修、講習の多い20代の頃の話だった。
研修は県外で行われることも珍しくない。
その日、けだるい午後の研修が終わった後、持て余した時間をつぶすべく、ぶらぶらと街をさまよい歩いた。陽は高く、宿に帰るには早すぎる時間。
ネオン街の一角に一軒のパチンコ屋を見つけた。

「パチンコかぁ。暇つぶしに入ってみるか」

パチンコには何度か入った事があるが一度として大当たりになったことはない。
たいして期待もしていなかった。
いつもどおり、幾らかの銭を失って店を出るのだろうと思っていた。

ガラスドアを押して中に入ると景気のよい曲とチンジャラ、チンジャラとうるさいほどのパチンコ玉を打つ音が響いている。

暇そうな中年の親父が、タバコとビールを飲みながらパチンコに没頭している。
そんなに、面白いのか?
自問した。自分は面白いと思ったことは一度もない。
第一、一度だって勝てたためしがないのだから。

ど素人の自分に、釘の並びなんかわかるわけもないからその親父と一つ隔てた台に座ってお金を投入した。

ところがだ。
打ち始めて10分もしないうちにドラムが回転して、7の数字が三つ揃い大あたりになり、機械は無限に大当たりを続けている。

あふれるように、玉が出てきて、持っていたドル箱が見る見るいっぱいになる。

なんだ?これは……これがフィーバーってやつなのか?
人生初のギャンブルの大勝に、諭吉は有頂天になった。

続く
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み