第3話 子供の帰り見守ります編 ちょっといい話 

文字数 1,265文字

 皆さん、こんにちは、紫雀です。本日のお題。
 どこの地域でも、子供の登下校の安全には気をつかってますよね。
 うちの子が通っていた小学校でも、やっぱりそこは変わらず、地域のお年寄りが家の外に出て、登下校を見守って下さったり、小学校でも「ぶじかえる」のステッカーを保護者に配って啓発につとめたりしていました。

 上の子が私立の中高一貫校に通っていた頃の話です。私立なので校区は関係ありません。
 家から歩いて5分の近い子から、汽車やバスを乗り継いでくる遠い家の子まで、さまざまな所から通ってきます。

 合唱部に所属していたA先輩の話。
 家の遠い近いは関係なく、部活に所属していれば当然、帰りは遅くなります。
 ましてや、大会が近いともなれば拘束時間は長くなります。
 部活が終わり、塾にいってから家に帰り着くのは、夜の10時過ぎ、それが毎日続いていたある日の事です。

 田舎に住んでいた先輩。家までの暗くて街灯のない夜道、一人で歩いているのは怖いので合唱の自分のパートを歌いながら歩いていました。

 ところがです。
 ある角を曲がると、あかあかと賑やかに店中の電気をつけているお店がありました。
 看板をみると果物屋さんのようです。

「?……こんな時間に営業?」

 時計と見ると夜9時を過ぎています。
 こんな時間に果物を買いに来る人いるのだろうか?
 不思議に思いながら店の前を通りすぎました。

 いつもは暗いのに、なんで電気がついてるんだろう。ほんとに不思議です。
 そして夏の大会が終わるまで、このお店の前だけは、いつもピカピカと明るかったのでした。

 合唱大会が終わって帰り時間が早くなり、あの時間帯に全く、果物屋さんの前を通らなくなったある日の事。知り合いが病気で入院したので果物籠をもって、お見舞いに行くことになった。

「お父さん、あそこの果物屋さんに行こうよ」

 父親を説得してお店に入り、果物籠を注文した。
 出来上がる間、いつもの癖で大会で歌った歌を口ずさんでいると。

「ああっ、君だったのか。その歌すっかり覚えちゃったよ」

 出来上がった果物籠を差し出して店主は言った。

「ある夜、店を閉めようと電気を消しかけてたら、女性の歌声が聞こえてくるじゃないか。びっくりしたよ。うちの店の前は夜は街灯もないし、ほんとに暗いからね。
 夜に女の子が一人歩いているのは、危険だなと思って、歌が聞こえる間は、店中の電気をつけてたんだ。」

そうだったんだ。偶然じゃなかったんだ。私の事心配して、電気つけてくれてたんだ。

「最近は、歌が聞こえなくなってたから、どうしたかなと思ってたんだけど」

「そうでしたか、ありがとうございました。おかげで夜道がちっとも怖くなかったです。」
 自然に笑顔がこぼれた。素直にお礼を言った。

 A先輩は、この話を作文にして表彰された。


「ねぇ、すごいよね。お母さん、これ実話なんだよ~」
「うん、すごい!!」

『その店、どこにあるの?こんど果物、買いにいきたいな。』と本気でそう思いました。

世の中、こんな美しい話もあるって事で。
以上、紫雀のちょっといい話でした。



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み