016.ゲーム脳の変態は、再起動し跳躍する!
文字数 6,546文字
真っ裸のカルマは驚愕の表情で、瞬時に【回収】されて消えていくもう一人の母親見つめながら、何故か遠い目をして居た。
<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>
<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>
<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>
<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>
<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>
<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>
<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>
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<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>
<<個体名【カルマ】は称号【氷狼の討伐者】を獲得しました!>>
<<個体名【カルマ】は称号【精神破壊者】を獲得しました!>>
<<個体名【カルマ】は災厄武器【氷狼の長剣と丸盾】を獲得しました!>>
FHSLG【アルグリア戦記】に於いて、ゲームクリアとは【アルグリア大陸制覇】で在るが、其のゲームクリアの仕方によってクリア結果が別れていた。
所属する勢力の【覇者】としてクリアする【通常制覇】と、在る条件を満たして所属する勢力の覇者としてクリアする【完全制覇】が在り、所属する勢力の【一員】としてクリアする【所属制覇】と、在る条件を満たして所属する勢力の【一員】としてクリアする【完全所属制覇】が在った。
又、【単独】で自分以外の勢力を殲滅してクリアする【殲滅制覇】と、在る条件を満たして【単独】で自分以外の勢力を殲滅してクリアする【完全殲滅制覇】が在る。
此れらの制覇の中の在る条件を満たしての条件とは、【十の災厄の全討伐】で在る。
災厄には弱点が個体ごとに存在するが、其の弱点が判明しても討伐不可能なのが災厄で在った。
災厄の縄張りを犯しただけで【敵認定】され、最低でも所属勢力が滅ぶ危険度が限りなく高いのは、【不可避の神罰】と呼ばれる所以で在る。
そんな鬼畜仕様の存在で在る【十の災厄】を全討伐して、鬼畜仕様シナリオ【創造神の試練】を完全制覇したカルマを以てしても、もう一人の母親が亡くなった理由が、自分の何気ない一言で在った事実を受け入れる事は難しかった。
従来の【創造神の試練】では、十の災厄の一角、【不死鳥】との戦いで、もう一人の母親が、【不死鳥】の動きを封じカルマは泣く泣く母親諸共【不死鳥】を討伐した経緯が在る。
真逆自分の一言が原因で、こんなにも呆気なく亡くなるとは・・・・・・
嘘だと言ってくれよ! 母さん!
称号【氷狼の討伐者】は、他のプレイアバターを含めて討伐経験があるので称号効果は知って居る。
純粋に強くなる称号で、効果は現在の【身体能力値×10倍】と【獲得経験値×10倍】で在った。
そして、【氷狼】エンプレスを言葉(精神攻撃)だけで討伐したからか、称号【精神破壊者】を獲得したのだった。
称号【精神破壊者】の効果は、任意に【精神破壊効果】を攻撃に付与すると言う【超不正行為】なものだった。
攻撃する度に精神をゴリゴリ削っていき、精神力(MSP)値が【0】ポイントに為ったキャラアバターが気絶状態に為るだけでも凄い効果なのに、部隊編成した者にも精神破壊効果を付与するものだからだ。
精神破壊者か、【師匠】が好きそうな効果だなぁ~!
カルマは前世では仮想現実ゲームを色々プレイして居たが、FHSLG『アルグリア戦記』は一人用やり込み型戦争ゲームなので【師匠】と絡む機会は少なかった。
其の為、【ボイスチャット】でゲームプレイ中に情報交換をして居た。
しかし、師匠と呼ぶ理由や所以は決して、仮想現実の世界では口にしなかった。
内密な話は情報が漏れない【アナログな方法(手紙)】で、現実世界でのみ情報交換をして居た。
師匠に何故此のような手間を掛けるのかと問うと、決まって『カルマ、此の世の中には知らない方が幸せな事が結構在るんだ』と手紙に記される。
徹底した秘密主義の師匠。イカれた変態は現実世界でもイカれた存在なのかも知れない。
あの【やられたらやり返す】ルールに忠実な、狂人のプライベートを知りたいとは全く思わない。
だが、ゲーム世界に現実に転生して、唯一現実世界の心残りは【師匠】の事だけだった。
ゲームを一緒に遊んだ仲間は沢山居るが、一緒に遊んでいて心から楽しいと思ったのは師匠だけだった。
PS(プレイヤースキル)は超下手くそな癖に、DOQで最精鋭廃人の知り合いが結構居る変わった人だった。
初めて師匠と出会ったゲームは、MMOWG【矛盾】で、多人数参加型戦争ゲーム(矛盾の世界時間は二十四分の一秒で、現実世界の一時間が仮想現実世界の二十四時間に相当する)だった。
戦争の度に【独特な文言の歌】を唄いながら、敵を容赦無く襲う人だった。
そんな師匠の口癖が、『俺達は戦争ゲームをしているんじゃない! 心理ゲームをしているんだ!』、『心を攻めろ! 精神を削るんだ! ゴリゴリ削れ!』、『どんな最精鋭も心が折れたら、只の木偶の坊だ! 心を削れ!』だった。
【矛盾】では師匠は忌み嫌われていたが、決して自分からは戦争を仕掛けなかったし全て報復戦争で、一旦戦争が始まると敵が数倍の圧倒的勢力でも、確実に勝てないと判断出来る相手でも、畏れなかったし、諦めなかったし、止まらなかった。
現実世界での夜討ち朝駆けの時刻でする仮想現実世界の夜討ち朝駆けは当たり前で、人が嫌がる攻撃を余りにする行為と、攻撃されなければ決して攻撃しない師匠の【独特な掟】から付いた渾名が【凶神】だった。
そうだ! 俺は師匠の強烈な意志に惹き付けられたんだ!
茫然自失から解けたカルマは、積極的に動き出した。
【氷狼エンプレス】が討伐されたと言う事は、氷狼の息吹で凍ったものが溶け始める。
確か設定情報ではハルベルト山脈に隣接する氷柩の王国と呼ばれる地域が在る。現在脳裏地図と脳裏情報では、旧アクリス王国跡の注釈が付く場所だ。
氷解し始めて春期になったら氷柩の王国が真の姿を現す。此れは大事に為る。
呆けてる時間は無いぞ! 父ちゃんと母ちゃんと仲間の運命を改変するんだ!
洞窟を飛び出したカルマは旧アクリス王国跡を目指し、脳内地図を参考にして、【長距離転移】したのだった。
「あぅあぅあぅあぁぁ~!(根刮ぎ、いただきます~!)」
極寒の雪化粧の中、空中に突然出現したカルマが真っ裸で叫ぶ!
其の視線の先には、【氷柩の王国】と呼ばれる、雪が降り積った旧アクリス王国跡が沈黙を守って居た。
やっと着いた!
旧アクリス王国の王都ロックスまでに在る、全ての村・町・市街を脳内地図と脳内情報で、漏れが無いように確認しながら訪れ、建物以外全てのものを回収しながら来たカルマだった。
結構手間取ったな、では! 根刮ぎ、いただきます!
見渡す限りの雪原の中で、一ヶ所だけ氷が三角帽子のように出っ張っている処が、王都ロックスにある石塔を頂点とするロックス城だっだ。
そして、カルマは休む間も無く空中を短距離転移をしながら、その氷の山の中に消えていった。
寒冷操作、ヤバい効果だ!
称号【氷狼の愛息】の効果で在る、寒冷無効と寒冷操作の併用効果で、雪嵐の中だろうが氷の中だろうが、関係なく息も出来て何も無い空気中のように進んで行けるのだった。
そして、任意で自由に寒冷を操作して称号効果で自身のMP(魔力)を一切使わずに周囲の魔素を取り込んで雪嵐を起こし、任意の範囲を凍り漬け(氷柩の王国と同じ効果)に出来る、超不正行為を超える埒外不正行為な効果だった。
氷中世界のロックス城は、王族を始め王城で働く全ての人々の時間が止まって固まって居り、其れはまるで生きているかのようだった。
FHSLG【アルグリア戦記】は、一人用やり込み型ファンタジー歴史シミュレーションゲームで熱狂的な愛好者を獲得して居た。
お気に入りのキャラアバターで戦争関係無くアルグリア大陸の生活を楽しむプレイヤーが居れば、同じ所属勢力内キャラアバターで立場を代えて楽しむプレイヤーも居る。
現実世界の様々な立場のプレイヤーがゲーム世界で自分好みの様々な立場のプレイヤーとしてプレイをする。
そんな現実を束の間忘れさせてくれる究極の娯楽世界。
制作運営会社曰く、『アルグリア戦記』が一人用であるのは、同じ時間軸で色々なキャラアバターで遊ぶ事で歴史のもしも(if)を体験して貰いたかったからだった。
弱小勢力でもアルグリア大陸の歴史を知っていれば(知識チート)、この時代に存在しない政策(内政チート)、存在しない武器(生産チート)を駆使して歴史を誰もが創意工夫で変える事が出来る、可能性を秘めた世界がFHSLG『アルグリア戦記』だった。
やっと終わった!
王都ロックスを含め、氷柩の王国に囚われた旧アクリス王国の全ての村・町・市街を訪れ、建物以外の全てのものを回収し、寒冷操作で氷柩の王国と同様に再度凍り漬けにして、氷狼が討伐された証拠を封印したカルマだった。
災厄の縄張りは迷宮だから、洞窟まで一回で転移出来ないのが手間だなぁ~!
そう思いながらカルマは氷柩の王国から、長距離転移を使用して一瞬で姿を消した。
やっと帰って来た・・・・・・
カルマは洞窟を進み、碧光りのする花水晶の間に短距離転移で入っていく。
『お帰り、坊や!』
『ただいま! 母さん!』
極寒の花水晶の間で、空中に浮かぶカルマが真っ裸で元気に挨拶をする!
其の視線の先には、自分が討伐してしまった白い巨狼、もう一人の母親が静かに微笑んで居た。
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【アルグリア戦記】には、セーブ機能は存在しない。全て最初からのスタートと為る。現実の世界で、セーブなどは出来る筈もない。此処は【アルグリア世界】、もう一つの現実の世界。現実の一秒が、三千百十万四千秒に相当する仮想の現実世界。現実の一時間が、百二十九万六千日(三千五百五十年と二百五十日)に相当する【悠久の歴史を刻む世界】。
果たして、【アルグリア世界】は、仮想の現実世界なのだろうか? 其れとも、実はもう一つの現実世界【異世界】なのだろうか? 其の答えは【プレイヤー】だけが知っている。
To be continued! ・・・・・・
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