008.ゲーム脳の変態は、悠久の泥黎(ないり)を、笑い歩む!

文字数 3,331文字

()れで、如何(どう)だ!」



俺は氷柱(つらら)落下(らっか)位置を、目視(もくし)脳裏(マインド)地図(マップ)を同時に()ながら、(かん)()()(かわ)して匍匐前進(はいはい)で進んでいく。

最初に氷柱(つらら)爆死(ばくし)してから、合計百五十八回。精神の異常(いじょう)数値(すうち)危険(きけん)規定(きてい)()に達しては、【ダイブアウト】してミリィに叱られ、膝枕(ひざまくら)(いや)される羞恥(しゅうち)プレーを送っていた。



「良し、行けるぞ!」



此処(ここ)半身(はんしん)を右側に回避(かいひ)此処(ここ)で三秒待つ、右にゴロン、三回(まわ)って、前へ(いつ)匍匐前進(はいはい)



残り行動制限時間(お亡くなりになる)まで、【五十二秒】!



おお! 抜けた! 俺は長い洞窟(どうくつ)のアトラクションを抜け、(あお)(じろ)(まぶ)しい広場に、慎重(しんちょう)匍匐前進(はいはい)で進んでいく。



脳裏(マインド)地図(マップ)表記(ひょうき)名称(めいしょう)が、【ハルベルト渓谷(けいこく)洞窟(どうくつ)】から【(はな)水晶(すいしょう)()】に変わる。



良し、成功だ! 俺は小躍(こおど)りする(いきお)いだったが、()のアバターネーム【カルマ】の身体では土台(どだい)無理(むり)だった。



(かべ)一面(いちめん)には、(あお)水晶(すいしょう)(はな)のように咲いていて、天井(てんじょう)の中心には、(あい)(はな)が咲き、()の周りに(あお)(はな)(あお)(はな)(あお)(はな)と囲む様に、水晶華(クリスタルフラワー)が咲き乱れていた。



慎重(しんちょう)慎重(しんちょう)に、俺は匍匐前進(はいはい)で進む。残り行動(こうどう)制限(せいげん)時間(じかん)が【二十秒】を切った。



「あぅ!(もう少しだ!)」



俺は、目的の大きな(あお)(じろ)い山に辿(たど)り着いた。

さあ、時間は無いぞ! 何処(どこ)だ、何処(どこ)なんだ?



俺は()()()()()(あお)(じろ)い山の周りを(まわ)り出す!

残り【十三秒】! くっ、何処(どこ)なんだ?



十二秒! 十一秒! 十秒! 九秒! 八秒! 七秒! あっ! 六秒! アレか? 



俺の脳裏(マインド)に、(ひら)くものがあった!



俺は残り時間【三秒】で、(あお)(じろ)い毛皮に(おお)われた山の乳房(ちぶさ)に吸い付いたのだった。



<<個体名【カルマ】が称号【氷狼(ひょうろう)加護(かご)】を獲得しました!>> 



やった、(なん)とか正解に辿(たど)り着いたようだ。

あ、あったかい、気持ち良い。(やわ)らかく(あたた)かい乳房(ちぶさ)で、至福(しふく)(とき)味合(あじわ)う俺だった。



「あぅあぅあぅ!(ウグウグっ! (ちち)美味(うま)()ぎる、ゲポっ!)」



俺の脳裏情報(マインドインフォメーション)に浮かぶ、ステータス表示の生命力(HP)は【1】ポイントでギリギリセーフだった。

間に合った・・・・・・



スゥー、スゥーーーーー



あっ、なんか、・・・・・・



安心した俺は、不覚(ふかく)にも睡魔(すいま)に負けて眠ってしまったのだった。





----------



【情報表示】:▼

氏名(NAME):【カルマ】

個体LV:【1】

備考:▼

年齢:【0歳】

種族:【森精霊人(エルフ)普精霊人(ヒューマン)混血(クオーター)

身分:【未設定】

職業:【未設定】

称号:【氷狼(ひょうろう)加護(かご)】▼

   【氷狼(ひょうろう)加護(かご)】:寒冷(かんれい)耐性(たいせい)(おおかみ)(けい)生物(せいぶつ)威圧(いあつ)魅了(みりょう)効果(こうか)

才能(スキル):【0】※封印(ふういん)

説明:▼
運命(うんめい)宿命(しゅくめい)(もう)()

【状態表示】:▼

生命力(HP):【1/549】 ↑543UP

魔力(MP) :【8/1999】 ↑1991UP

精神力(MSP):【9/1095】 ↑1086UP

持久力(EP):【1/21】 ↑15UP

満腹度(FP):【23/100】

【能力表示】:▼

筋力(STR)  :【1】※封印(ふういん)

耐久力(VIT) :【1】※封印(ふういん)

知力(INT)  :【1】※封印(ふういん)

敏捷(AGI)  :【1】※封印(ふういん)

器用(DEX)  :【1】※封印(ふういん)

魅力(CHA)  :【1】※封印(ふういん)


【部隊編成表示】:▽



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『おい、起きろ! おい!』



う、う~ん! ミリィ~もう少しだけ寝かしてよ~!

俺は微睡(まどろ)みの中で、ミリィに懇願(こんがん)した。



ドンッ! グハッ!



俺は背中を襲った突然の衝撃(しょうげき)に、一瞬(いっしゅん)で、息を吐き出し覚醒(かくせい)した。



くっ、痛い!



痛む背中に手を伸ばして(さす)りながら、俺は俺を襲った(あお)(じろ)い山を見上げたのだった。



「あぅあぅあぅ!((ひど)いな、叩き起こすなんて!)」



巫山戯(ふざけ)るな、お前は何者(なにもの)だ? 此処(ここ)がハルベルト山脈、(われ)縄張(なわば)りだと知っての狼藉(ろうぜき)か?』



俺を睥睨(へいげい)する(あお)(ひとみ)射貫(いぬ)かれたが、全く(こわ)くは無かった。此奴(こいつ)には、毎回お世話になっているからな。

(あお)(じろ)い毛皮に身を包んだ巨大な狼が、俺を威圧(いあつ)していたが、俺には()かない。

何故(なぜ)なら【アルグリア戦記】をプレイしていれば、必ず倒す相手だからだった。だが、現状の能力ではコイツには、(まん)(いち)にも勝てない。理由は簡単、コイツが【アルグリア戦記】で最強の十個体の内の一体だからだった。





アルグリア大陸には、決して触れて()らない存在(そんざい)がある。

()れは【十の災厄(アンタッチャブル)】と呼ばれている存在(そんざい)だった。アルグリアの住人達は、(たましい)に、脳髄(のうずい)()の恐怖を(きざ)み込まれている。

近年(きんねん)では、【十の災厄(アンタッチャブル)】の一体である【麒麟(きりん)】に()って、国が一つ滅んでしまった。()れも麒麟(きりん)の住む霊山(れいざん)不死山(ふじやま)】の禁忌(きんき)を破った事が原因で、一晩(ひとばん)一国(いっこく)()(ずみ)の様に消滅(しょうめつ)したのだった。

圧倒的(あっとうてき)な力で、人類(じんるい)超越(ちょうえつ)した存在(そんざい)。触れてはならない存在(そんざい)があると、アルグリアの住民達に知らしめる存在(そんざい)

住民達は神に祈りを(ささ)げ、心の安寧(あんねい)()る。

十の災厄(アンタッチャブル)】とは、絶対に触れてはならない【不可避(ふかひ)神罰(しんばつ)()のものだった。



さて、()れから如何(どう)するか? と考えたところで重大な事に気付いた。



(そもそ)も目的地である(あお)(じろ)巨狼(きょろう)辿(たど)り着いたが、現在(いま)の俺では勝てる(はず)もなく、全くのノープランだったと言う事に衝撃(しょうげき)(おぼ)えた。

まあ、行き当たりバ・・・・・・ゲフンゲフン! 臨機応変(りんきおうへん)に対応するスタンスだった。そう、そう言う事にしておこう。 



ふむ、(にら)んでいるな。そんなに見つめられると、・・・・・・()れるじゃないか。



「あぅあぅあぅ!(やあ、俺はカルマ! 何者(なにもの)もなにも、見た通り、赤ちゃんだ!)」



ドーン! 俺はペタンとお尻を地面に付けた状態で、堂々(どうどう)名乗(なの)りを()げた。そう、赤ちゃん言語(ことば)で!



ゴクリ、・・・・・・



さあ、如何(どう)(ころ)ぶか、出たとこ勝負の会話が続く。つ、・・・・・・続くよね? 行きなり戦闘とか、ご勘弁(かんべん)を。

俺が、巨狼(きょろう)をじ~っと見つめている。巨狼(きょろう)も俺を見つめる。お互い、目で語っていたが。



会話が全く成立していない? 俺はコイツの言葉が、聞こえる。コイツは、俺の赤ちゃん言語(ことば)を、解らない。

()れって、()んでるよね? そう俺が思っていると。



『カルマか、良い名前だ。だが、赤ん坊が一人で来る(ところ)では、ないぞ此処(ここ)は?』 



「あぅあぅ?(俺の言葉が、解るの?)」



『ああ、【念話(ねんわ)】で話しているからな! 想いを伝える事も、集中すれば相手の心の想いも聞ける! (ただ)、相手が心をブロックしていたら、聞こえないがな!」



へー、()れは初めて知った。念話(ねんわ)スキルって、一方通行(いっぽうつうこう)じゃなかったのか。()れは良い事を、聞いたな。



俺は、目の前の巨狼(きょろう)に、俺の事情(じじょう)を話した。天涯孤独(てんがいこどく)になった俺に、巨狼(きょろう)はやけに(やさ)しかった。

あれ、コイツこんな(やつ)だっけ? 疑問を浮かべる俺の視線(しせん)の先には、脳裏情報(マインドインフォメーション)の情報表示に記載(きさい)されている称号(しょうごう)があった。【氷狼(ひょうろう)加護(かご)】の称号(しょうごう)説明(せつめい)(らん)にある文言(もんごん)に意識を、集中させる。

すると浮かび()がって来る三角(さんかく)ボタンを、意識で押す。

何々(なになに)寒冷(かんれい)耐性(たいせい)と狼系生物へ威圧(いあつ)魅了(みりょう)効果(こうか)

マジか、俺は意識を集中して文言(もんごん)()る。

寒冷(かんれい)耐性(たいせい)、読んで字の(ごと)く寒さに耐性(たいせい)が付く。威圧(いあつ)は、狼系の生物を(したが)わせる力と。魅了(みりょう)は現在の【魅力(みりょく)()×10倍】か。

俺の状態表示の魅力(みりょく)()は、封印(ふういん)(ため)【1】ポイントで固定(こてい)だが、【アルグリア戦記】には隠された秘密がある。()れはマスクデータと呼ばれる(かく)された情報だった。()れの存在を理解している者は少ない。少なくとも、トップランカーは確実に()()()()()()()()()()()()()()()()(はず)だ。



データ表示に、表示されない(かく)された情報。俺の表面上の魅力(みりょく)()は、【1】ポイントだが、マスクデータ上は、【10】ポイントだ。狼系生物限定と言う注釈(ちゅうしゃく)は付くが。

FHSLG(ファンタジー歴史シミュレーションゲーム)【アルグリア戦記】に()いて、完全(かんぜん)制覇(せいは)でクリアするには、【マスクデータ】と【称号効果】、()の二つの理解が不可(ふか)(けつ)である。

完全(かんぜん)制覇(せいは)とは、アルグリア戦記に()いて、最上(さいじょう)最高(さいこう)結果(リザルト)である。通常の制覇(せいは)(なに)が違うかと言えば、不可避(ふかひ)神罰(しんばつ)である【十の災厄(アンタッチャブル)】の十個体全ての討伐(とうばつ)()に、アルグリア大陸全ての人類(じんるい)国家(こっか)と、モンスターのコミュニティを統一(とういつ)する事だった。



天涯(てんがい)孤独(こどく)、・・・・・・なら、大人になるまで、(われ)此処(ここ)で住めば良い』



えっ、マジッスか? 

俺にはコイツの行動が、()ぐに(わか)った! 他のゲームで何度か、こういったシーンを見た記憶(きおく)がある!

そう、コイツは、()()()のだ!


(たし)ラブファイト(恋愛)系のゲームだったなぁ。



もう、()の流れに乗るしかない。



「あぅあぅ!(よろしく、()()()!)」



()れが最適解(さいてきかい)だと、確信(かくしん)したカルマは、もう一人の()()微笑(ほほえ)んだのであった。







To be(続きは) continued(また次回で)! ・・・・・・
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