004.ゲーム脳の変態は、嬉々として、鬼畜仕様の無理ゲーに旅立つ!

文字数 3,888文字

「マスター! マスター! 起きて下さい!」



大声で俺を呼び続ける声に反応をして、目を覚ました。



「う、うん? どうしたんだ、ミリィ!」



状況判断が出来ないままで、呼び声の主に俺を起こすと言う、暴挙(ぼうきょ)の理由を(たず)ねた。 



栄養摂取(えいようせっしゅ)、運動、シャワーをお願いします!」



ああ、俺が頼んで()いて、どうしたんだもないよな。



俺は現実の世界に舞い戻り、現実の身体に栄養補給(えいようほきゅう)と、適度(てきど)な運動後にシャワーを浴びる為に、(きし)むベッドチェアーから降り立った。【仮想現実装置(ダイブトリッパー)】を右耳から外した俺は、【家庭用自動人形(オートドール)】ミリィに食事内容をいつものように丸投(まるな)げして、重力運動室(トレーニングルーム)のドアを開け日課(にっか)の運動を始めたのだった。



「ミリィ! 明日も同じように、よろしく! じゃ行って来る!」



俺は最低限の身体のメンテナンスと栄養補給(えいようほきゅう)をして、再び【ダイブトリッパー】を右耳に装着(そうちゃく)し、「ダイブ!」と(つぶや)き仮想現実の世界へ意識を()ばした。



「いってらっしゃいませ、マスター!」



【オートドール】であるミリィは、いつも通りマスターを仮想現実世界に送り出し、室内の清掃(せいそう)を始めるのだった。



()容姿(ようし)は、何処(どこ)から見ても黒髪の美少女()のもので、透き通る白肌(しろはだ)(まと)う白と黒のメイド服が、一部の嗜好家(しこうか)には(たま)らない雰囲気(ふんいき)(かも)し出していた。





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『ぽ~ん♪ マスター、ようこそ仮想空間へ! 本日のご用命(ようめい)を、お(うかが)いします!』



仮想現実の世界の入口である【ポータルサイトの案内人】の【ナリア】が、いつもの(ごと)く行き先を(たず)ねる。



『やあ、ナリア! 【アルグリア戦記】で頼む!』



(あお)(ひとみ)(あお)毛玉(けだま)(ごと)(たぬき)が、了解(りょうかい)とばかりに、空中(くうちゅう)可愛(かわい)らしく(うなず)く。



『いってらしゃいませ、マスター!』



『ああ、行って来る!』 





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『【カルマ】さま! ようこそ、【アルグリア戦記】へ! 本日はどのシナリオで、アバタープレイを始められますか?』




純白(じゅんぱく)の空間に浮かぶ執事服に身を包んだ黒猫の姿の、【アルグリア戦記の総合案内人】である【ジョドー】が、慇懃(いんぎん)な動作でカルマを迎えた。



『ああ、ジョドー。今回は【創造神の試練】の【カルマ】でプレイするよ!』



『なるほど、愈々(いよいよ)と言うところですか、【カルマ】さま。【アルグリア戦記】ランキング一位(トップ)のご出陣(しゅつじん)、私ジョドーも胸が高鳴ります!』



全く感情を表に出さないポーカーフェイスの執事に、カルマは内心(ないしん)苦笑(くしょう)をしながらも、ゲームスタートの準備を始める。

従来(じゅうらい)であれば、シナリオを選択し、プレイアバターを選択後にカスタムをするところだが、生憎(あいにく)【創造神の試練】の選択アバターは、シナリオ限定アバター【カルマ】のみで、カルマ以外に選択肢(せんたくし)がない。

()(どころ)か、能力値(筋力・耐久力・知力・敏捷・器用・魅力)が【1】で固定(こてい)(個体レベルが上がっても能力値は一切(いっさい)上がらない)で、スキル(才能)も【0】で固定(こてい)(スキルを一切(いっさい)修得(しゅうとく)出来ない)、おまけにアイテムの持ち込みも不可(ふか)子孫(しそん)での継承(けいしょう)プレイも不可(ふか)(しば)要素(ようそ)(かたまり)が、鬼畜(きちく)仕様(しよう)のシナリオ【創造伸の試練】だった。



『現在まで(だれ)一人(ひとり)として、クリアしたプレイヤーが()ない【創造神の試練】をクリア出来るのは、【カルマ】さまを()いて(ほか)には()られないと愚考(ぐこう)します』



執事の言葉には、(うれ)いがあった。顔には全く表さない感情(かんじょう)が、ノンプレイヤーキャラアバターであるジョドーの(こころ)(うち)にあった。



【アルグリア戦記の総合案内人】であるジョドーとしても、(だれ)攻略(こうりゃく)出来ないシナリオは、プレイヤーからのクレームも膨大(ぼうだい)だった。

AI(人工知能(じんこうちのう))搭載のジョドーがサービスを提供(ていきょう)同時(どうじ)接続(せつぞく)接客(せっきゃく)対応(たいおう)している)するプレイヤーは、一千万人。もう直ぐ第二陣として、加えて一千万のプレイヤーを迎える執事としては、頭が痛いところなのだろう。



『ははは、ジョドーの期待に応えられるように、楽しんでくるよ!』



『ありがとうございます! 【カルマ】さま、準備が整いました! ()()()()!』



『行って来ます!』



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「おぎゃああああああああああああああああああ~!」



「マルナよくやった! 元気な男の子だ! ・・・・・・よし! 【カルマ】と名付けよう!」



「カルマ、うっ、うう・・・・・・生まれてき、てくれて・・・・・・あり、がとう~」



()れが、【創造神の試練】か、始まりは案外(あんがい)(ほか)のアバターと、(あま)り変わりはないようだな。
 


下調べは勿論(もちろん)していない。そんな勿体(もったい)ない事は出来ない。どんな困難(こんなん)が待ち受けているのか、想像(そうぞう)するだけでご(はん)三杯(さんばい)()えるな!



何々(なになに)、現在地はマルカ王国の辺境(へんきょう)のラック村か、両親は父親が【カリトリアス・エルブリタニア】で、母親が【マルゲレーナ・アルバビロニア】・・・・・・え、マジか! マジですか? そうですか・・・・・・

()の【アルグリア大陸】には、四十七の人類(じんるい)国家(こっか)数多(あまた)のモンスターのコミュニティーが存在する。【アルグリア戦記】は()の中から、プレイアバターを選択してゲームを始める。

ゲームクリアとは、全ての勢力(人類(じんるい)国家(こっか)とモンスター)を支配下に置きアルグリア大陸を統一(とういつ)制覇(せいは)する事だった。

人類(じんるい)国家(こっか)大陸(たいりく)統一(とういつ)制覇(せいは)の可能性が、戦力的に高い国家が(いく)つか存在した。()の内の二つの国家(こっか)の名前が、俺の両親の家名(かめい)にある。

【アルバビロニア大帝国】、エルフが統治(とうち)するアルグリア大陸のほぼ中央に位置する軍事(ぐんじ)超大国(ちょうたいこく)だ。

【エルブリタニア帝国】、アルバビロニア大帝国と同じくエルフが統治(とうち)する強国(きょうこく)で、二つの国は隣接(りんせつ)している。

()大国(たいこく)の二つが俺の実家(じっか)と言う事になる。もうヤバい感じしかしない。見るからに粗末(そまつ)な部屋に大国(たいこく)皇子(おうじ)皇女(おうじょ)って、もう()()ちしかないじゃないですか~!

あ、あれ、ちょっと待てよ。()れって最高の家柄(いえがら)じゃないか! 上手くやれば、どっちの国も継承(けいしょう)出来る血統(けっとう)って事だ。



でも今まで(だれ)一人(ひとり)として、プレイヤーはクリアーしていない。()の事実から、プレイアバター【カルマ】に掛けられた、(しば)りの過酷(かこく)さが(うかが)える。
 


()れでは、お待ちかねのステータス確認と行きますか! 俺は脳裏(マインド)に自分のステータス情報を表示した。



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【情報表示】:▼

氏名(NAME):【カルマ】

個体LV:【1】

備考:▼

年齢:【0歳】

種族:【森精霊人(エルフ)普精霊人(ヒューマン)混血(クオーター)

身分:【未設定】

職業:【未設定】

称号:【未設定】

才能(スキル):【0】※封印(ふういん)

説明:▼
運命(うんめい)宿命(しゅくめい)(もう)()

【状態表示】:▼

生命力(HP):【6/6】

魔力(MP) :【8/8】

精神力(MSP):【9/9】

持久力(EP):【3/3】

満腹度(FP):【11/100】

【能力表示】:▼

筋力(STR)  :【1】※封印(ふういん)

耐久力(VIT) :【1】※封印(ふういん)

知力(INT)  :【1】※封印(ふういん)

敏捷(AGI)  :【1】※封印(ふういん)

器用(DEX)  :【1】※封印(ふういん)

魅力(CHA)  :【1】※封印(ふういん)


【部隊編成表示】:▼

統率力(LEA):【未設定】

攻撃力(OFF):【未設定】

防御力(DEF):【未設定】

機動力(MOB):【未設定】

持久力(END):【未設定】/【未設定】

戦法力(TAC):【未設定】/【未設定】

士気力(MOR):【未設定】/【未設定】

詳細:▼

主将:【未設定】

副将:【未設定】

副将:【未設定】

部隊:【未設定】

戦法:【未設定】

特性:【未設定】

説明:【未設定】



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(なん)だ、封印(ふういん)って? (ふう)じているなら、もしかしたら、解けるって事じゃないか、(しば)りが解けるなら楽勝(らくしょう)だけど、其処(そこ)まで(やさ)しくはないな。()れなら、(そもそ)も、ランカーがクリア出来ないのは可笑(おか)しい。



(なん)だかワクワクするな! ()れじゃ、恒例(こうれい)の生命力と魔力と精神力上げと(まい)りますか!



はぁぁぁぁぁぁぁぁ~、ふぉぉぉぉぉぉぉぉ~、丹田(たんでん)から身体中を魔力で循環(じゅんかん)させ、魔力を操作(そうさ)する。従来(じゅうらい)()の二つの動作で、スキル【魔力循環(まりょくじゅんかん)LV1】と【魔力操作(まりょくそうさ)LV1】が獲得(かくとく)出来たが・・・・・・



はてさて、封印状態(ふういんじょうたい)でスキルは修得不可(しゅうとくふか)何処(どこ)まで生命力と魔力を上げれるかが重要(じゅうよう)なポイントとなる。



魔力を(わざ)枯渇(こかつ)させて、生命力を魔力に充当(じゅうとう)し生命力ギリギリを攻めるやり方で、従来(じゅうらい)はスキル【魔力回復(まりょくかいふく)LV1】・【生命力回復(せいめいりょくかいふく)LV1】・【精神耐性(せいしんたいせい)LV1】・【痛覚耐性(つうかくたいせい)Lv1】が獲得(かくとく)出来た。

だが、スキル修得不可(しゅうとくふか)では、只々(ただただ)激痛(げきつう)に苦しむだけかも知れない。まあ、()れでもやるんだけどね。



赤ん坊では、出来て匍匐前進(はいはい)くらいだから、スキル【肉体強化(にくたいきょうか)LV1】が獲得(かくとく)出来ない状態(じょうたい)で、()たして何処(どこ)まで、持久力を(きた)えられるか。スゲぇドキドキする!




おっと、満腹度が危険域(ハザードエリア)に達しそうだ!



「おぎゃああああああああああああああああああ~!」



「よ~し、よしよし~お(なか)()いたの~? 泣かないで~」



ウグウグっ! ・・・・・・(かあ)ちゃん、・・・・・・母乳(ぼにゅう)美味(うま)()ぎる・・・・・・、ゲポっ!



よ~し! やるぞ~! 脳裏情報(マインドインフォメーション)に浮かぶ、魔力の自然回復数値の時間と消費数値のバランスが重要(コツ)だ。

身体の内と外に魔力を流す、従来(じゅうらい)()れで、スキル【肉体強化(にくたいきょうか)LV1】が獲得(かくとく)出来るのだが、封印(ふういん)修得(しゅうとく)不可(ふか)だし、魔力枯渇(まりょくこかつ)()に生命力を魔力に充当(じゅうとう)する行為は、激痛(げきつう)只々(ただただ)(あじ)わう拷問(ごうもん)のような行いだった。 

普通の神経(しんけい)の持ち主なら、絶対にしようとも思わない。おまけに、感覚調整(かんかくちょうせい)システムの推奨(すいしょう)パーセンテージ三十(それ以上は精神に何等(なんら)かのダメージを与える)のところを、百パーセントに設定している。

()れでも嬉々(きき)として、激痛(げきつう)の先の()()()()夢想(むそう)するだけで、(しあわ)せなのがプレイヤーネーム【カルマ】だった。



「なあ、マルナ。カルマから魔力の波動(はどう)を感じないか?」



「ええ、感じるわ~。流石(さすが)、私達の子供ね~」



「だよな! 俺もそう思ってたんだ! はっははは~!」



良かった、(とう)ちゃんも(かあ)ちゃんも天然(てんねん)設定(せってい)で、助かった~! 

神経質(しんけいしつ)な両親の場合、最悪(さいあく)気味(きみ)(わる)がられて捨てられた経験をしているカルマは、ホッと胸を()()ろしたのだった。







To be(続きは) continued(また次回で)! ・・・・・・
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