011.ゲーム脳の変態は、間抜け面(づら)を晒(さら)す!
文字数 6,816文字
『遂 に【創造神の試練】をクリアしましたよ、師匠 ! 聞こえますか、師匠 ?』
俺はMMOWG(多人数参加型戦争ゲーム)【矛盾 】で師事 した師匠 で在 るプレイヤーネーム【クマメタル】に連絡を取ったが、例の如 く闘いに酔 っているのだろう。全く反応が無い。
世界を震撼 させた一千万オーバーキルのテロリスト【クマメタル】と同じ名前で、仮想現実世界に於 いてプレイをするイカれた変態。何 が如何 為 って、仮想現実世界に於 いて、其 のプレイヤーネームで登録 が許可 されたのか、首を傾 げる事しきりだ。
『カルマ、やっぱり鳥は良いな! 空を自由に翔 べる!』
イカれた変態は例の如 く、俺の話は全く聞いていなかったようだ。はぁ、トランスしている師匠 には何 を言っても届かない。自分のルールを忠実 に実行する災厄 と化 す。【殺 られたら殺 り返す】、至 ってシンプルな其 のルールに全てを懸 ける狂人 。
全てと言って良いプレイヤーから忌 み嫌 われる存在 、【凶神 】と呼ばれる禍々 しい魂 の燐光 が師匠 だった。
『師匠 、またモンスタープレイですか? 楽しんでますね【アルグリア戦記】!』
『まあな、血のエフェクト処理 以外は最高に、興奮 するぜカルマ!』
『其処 は仕様 なので仕方ないですよ。諦 めて下さい師匠 。其 れから俺やりましたよ。【創造神の試練】をクリアしました!』
『ほう、鬼畜 仕様 のマゾゲー(マゾヒズムを楽しむ変態のゲーム)シナリオをクリアするとは、お前はイカれてるよカルマ?』
否々 、アンタにだけは言われたくないよ! イカれた変態が、俺を変態性 嗜好者 のように言うのは納得がいかない! 断固反対 する!
『其 れで、鬼畜 シナリオの報酬 は何 だったんだ?』
『完全 制覇 クリアの特典は、一千億英雄ポイント券 ・身体能力値の限界突破券 ・スキル枠 撤廃券 ・ユニークスキル創造券 ・特別シナリオ【ゲーム世界へ転生】の選択券 が各一枚づつですね!』
中々、破格 な特典内容だった。能力値(筋力 ・耐久力 ・知力 ・敏捷 ・器用 ・魅力 )を英雄ポイント分で、人種種族の成長限界値の上限を設定変更が出来る。但し、スタート時の能力値は初期設定値の侭 なので、所謂 俺Tueeeは出来ない。
スキル枠 撤廃 って、無限 にスキルをセットして良いらしい。勿論 、スキルもカスタマイズ可能だ。
【アルグリア戦記】では、キャラアバターごとにスキルレベルの成長上限値が設定されている。其の成長限界値を、英雄ポイントを使用してカスタマイズする。初期設定値は変更不可な仕様 なので、最初からの俺Tueeeは勿論 出来ない。
ユニークスキル創造って、もうチートだよね?
最後の特別シナリオ【ゲーム世界に転生】の選択券 に至 っては、インダストリア社の運営チームが悪乗 りしてネーミングしたとしか思えないものだった。
『ほう、【ゲーム世界に転生】か?浪漫 じゃないか、本 当 に 転 生 し た り し て な ! はっははははは~!』
豪快 に笑う師匠 に、『ははは、・・・・・・』と苦笑 いで応答 する俺だった。
『何 にしても、楽しんで来いカルマ! 一回 切 りの人生だ、悔 いの無いようにな!』
全くその通りだ。一回コッキリの人生だ。
俺は亡くなった幼馴染 みの分も、人生を楽しむと決めていた。
『じゃあ、師匠 ! ゲ ー ム 世 界 に 転 生 し て き ま す ! また連絡しますから、楽しみにしていて下さい!』
『おう! またなカルマ!』
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俺は珍 しく戯 けた調子のカルマとの通信 を切った。そして、自分が為 した闘いの顛末 を見届ける。
地平線 一杯 に、人類 だった骸 が転がっている。
其 の惨憺 たる光景 に、感情の無い目を向ける。
生きとし生けるもの全てが炭化 していた。
其処 は灼熱地獄 の如 く、焔 の熱が充満 していた。
俺は大空を滑空 しながら、気持ち良く熱風と舞う。
凄いなカルマの奴 。誰一人としてクリアした者がいない、鬼畜 無理 ゲーシナリオをクリアするとは。恐れ入ったぜ、俺には無理だ。退屈 で死んじまう。何 が楽しくて【カルマ値(行動に因るゲーム設定上の善悪の数値)】を調整しながら遊ばなければならないんだ。
「ふん、そんなものはクソ喰 らえだ!」
俺は我道 をいく。自分のルールに則 って、【アルグリア戦記】を楽しむ。そんな大陸 統一 制覇 の為 に、楽しみを封印 してまで作業ゲー(楽しみの無い行為を繰り返すゲーム)のような事なんか出来るかってんだ!
プレイヤーネーム【クマメタル】は、そう毒突 くと真 っ赤 に燃える翼を翻 し大空を羽 ばたく。プレイアバター【ラフレシア】として、十の災厄 の一角 、【不死鳥 】として災厄 をバラ捲 く。
アルグリア大陸の生きとし生きるもの全ての頂点 で在 る十個体 の内の一体をプレイするクマメタルに取って、闘いとは殲滅 を意味する。要 するに皆殺 しが、彼の流儀 だった。
【十の災厄 】には、縄張り から外には移動不可の制限が付く。故 にアルグリア大陸の住民達は、十の災厄 の勢力圏 を侵 さない。所属国家ごと滅ぼされた数多 の教訓 が、魂 と脳髄 に【畏怖 】として刻 み込まれていたからだ。
【不死鳥ラフレシア】の縄張り は、【アゾット炎獄 】。炎が燃え盛 る地獄 のような火の監獄 。誰も訪 れない炎獄 を守護 する鳥は、焔 を絶 やす事無 く、炎獄 以外の空を翔ぶ事は叶 わなかった。
自分が燃やし尽くした灰燼 から立ち昇る命の残照 を、美味 しそうに吸い込み大空を翔 び廻 る。
アルグリア大陸の四十七国家を掌中 に納 める事を目指 さず、全ての勢力を倒す殲滅 プレイヤーである【クマメタル】にとって、【アルグリア戦記】とは現 実 の 仕 事 の息抜 きに他 ならない。
攻撃されなければ、攻撃をしないルールを持つ【クマメタル】は、俺を攻撃しろ、毒饅頭 を喰 らえと、移 動 不 可 能 な 筈 の 縄 張 り 外 で、今日も陽気 に【アルグリア大陸】を飛翔 していた。
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『ぽ~ん♪ マスター、ようこそ仮想空間へ! 本日のご用命 を、お伺 いします!』
現実と仮想現実の世界とのエントランスである【ポータルサイトの案内人】の【ナリア】が、いつもの如 く行き先を尋 ねる。
『やあ、ナリア! 【アルグリア戦記】で頼む!』
蒼 い瞳 の蒼 い毛玉 の如 き狸 が、了解 とばかりに、空中 で可愛 らしく頷 ずく。
『いってらしゃいませ、マスター!』
『ああ、行って来る!』
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『【カルマ】さま! ようこそ、【アルグリア戦記】へ! 現在、継続 プレイ中のアバターはご座 いませんが、新規 アバターでプレイを始められますか?』
純白 の空間に浮かぶ執事服に身を包んだ黒猫の姿の、【アルグリア戦記の総合案内人】である【ジョドー】が、常 に変わらない慇懃 な動作でカルマを迎えた。
『ああ、ジョドー。今回は【ゲーム世界に転生】の【カルマ】でプレイするよ!』
『なるほど! 【創造神の試練】クリア特典ですかカルマさま? ほう、特別シナリオですね、・・・・・・【ゲーム世界に転生】? なんと厨二病 溢 れるネーミングでしょう! 此 のジョドー、呆 れを通り越して笑ってしまいそうです!』
そう言いながらも、全く感情を表に出さないポーカーフェイスの執事に、カルマは内心 で苦笑 をしてゲームスタートの準備を始める。
特別シナリオ【ゲーム世界に転生】を選択券で指定し、プレイアバター【カルマ】を選択する。
あれ、封印 状態 じゃないぞ? 如何 なってるんだ?
キャラアバターのステータス情報を見ながら、カルマは訝 しむ。
スキルと能力値欄 で、ポイント固定の封印 表示 が無い!
はて、特別シナリオってイージーモードなの?
まあ、無いなら無いで問題は無い。
次に能力値を限界突破券で上限値を解除 にして、英雄ポイントで上限一杯まで限界値を上げていく。
う、うん? あれ、未々 上がり続けるぞ?
一千億英雄ポイント券を使用してポイントを獲得 してと!
おっ! 百億英雄ポイントで【∞ 】に為 ったぞ!
筋力 ・耐久力 ・知力 ・敏捷 ・器用 ・魅力 の各能力値をマックスの【∞ 】まで上げる。
状態値である生命力 ・魔力 ・精神力 ・持久力 は、育成次第で人種種族関係なく無限に成長が可能だった。
状態値まで【1】ポイント固定だったら、【創造神の試練】はクリア出来なかっただろう。
次にスキルだ。此 れは悩むな。スキル枠 撤廃券 で制限を解除 。現在所持している全てのスキルを付与するのは、容易 い。
だが、スキルは生き物なのでスキル同士で相性が悪いと、逆に力を発揮 出来 ない。
目指すは両親の早世 を阻止する。【創造神の試練】でアルグリア統一 制覇 を為 し遂 げた仲間達の無念 を全て改変 する。
其 の為 に全ての特典とポイントを使用して、プレイヤーネーム【カルマ】なら絶対にしない無双 プレイを為 ると決めていた。自重 はしない。
十二万三十四回。合計でプレイアバター【カルマ】の両親が亡くなった回数だった。両親が脳裏情報 で事切 れる度 に、胸の奥がチクリと痛んだ。自分の為 に文字通り命を投げ出した両親。
辛苦 を共にし、文字通り命を懸 けて大陸 統一 制覇 を為 し遂 げた仲間達。誰もが身体に、心に傷を負 っていた。共に戦い共に笑い共に死んだ仲間達。何万回と見た戦友 の死。無念 の想 い。全て俺が変えてやる。運命 を覆 し塗 り直 し改変 する。
カルマはそう心に決めていた。
スキルの選定 は、最終スキル構成を想定 して逆算 (目的地から逆に辿 る算段 )で作り上げていく。両親を仲間を助ける為 、カルマは未来地(最終目標)を設定し、現在地(生まれた時)から小目標を設定し、ルートを設定していく。其 れを為 すスキル構成を的確 に付与 していくのだった。
お、アイテムの持ち込みも制限がないぞ?
スゲー、流石 は特別シナリオ! やっぱり超 イージーモードだ!
常 のカルマなら喜ぶ処 か、渋 い顔に為 る状況だが、何 せ今回は万 が一 にも失敗は許されない。何故 なら特別シナリオ券は一枚しかない。失敗すれば再度【創造神の試練】をクリアしても貰 えるか不明 だった。
過去のシナリオでもシナリオマラソン(特典目当てで何回も同じシナリオをプレイする事)での特典 獲得 防止 の為 に、初回しか獲得 出来 ない限定特典も存在 したからだ。
ふ~ん、子孫 での継承 プレイは、不可 なのか?
全てのカスタマイズを終えたカルマは、ジョドーに【ゲームスタート】を申告 する。
『準備は万全 のようですね。カルマさま、・・・・・・』
執事の言葉には、憂 いがあった。顔には全く表さない感情 が、ノンプレイヤーキャラクターを装 うジョドーの心 の裡 に在 った。
『如何 したの、ジョドー? 何 か心配事でも在 るの?』
普段とは様子の違うジョドーにカルマは、小首 を傾 げる。
『いえ、全く問題はありません! 【カルマ】さま、準備が整いました!お 元 気 で !』
『行って来、えっ?(何 、お元気でって?)』
珍妙 な顔をした侭 のカルマが、エフェクト処理 され分解 されながら消えて往 った。
To be continued ! ・・・・・・
俺はMMOWG(多人数参加型戦争ゲーム)【
世界を
『カルマ、やっぱり鳥は良いな! 空を自由に
イカれた変態は例の
全てと言って良いプレイヤーから
『
『まあな、血のエフェクト
『
『ほう、
『
『
中々、
スキル
【アルグリア戦記】では、キャラアバターごとにスキルレベルの成長上限値が設定されている。其の成長限界値を、英雄ポイントを使用してカスタマイズする。初期設定値は変更不可な
ユニークスキル創造って、もうチートだよね?
最後の特別シナリオ【ゲーム世界に転生】の
『ほう、【ゲーム世界に転生】か?
『
全くその通りだ。一回コッキリの人生だ。
俺は亡くなった
『じゃあ、
『おう! またなカルマ!』
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俺は
生きとし生けるもの全てが
俺は大空を
凄いなカルマの
「ふん、そんなものはクソ
俺は
プレイヤーネーム【クマメタル】は、そう
アルグリア大陸の生きとし生きるもの全ての
【
【不死鳥ラフレシア】の
自分が燃やし尽くした
アルグリア大陸の四十七国家を
攻撃されなければ、攻撃をしないルールを持つ【クマメタル】は、俺を攻撃しろ、
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『ぽ~ん♪ マスター、ようこそ仮想空間へ! 本日のご
現実と仮想現実の世界とのエントランスである【ポータルサイトの案内人】の【ナリア】が、いつもの
『やあ、ナリア! 【アルグリア戦記】で頼む!』
『いってらしゃいませ、マスター!』
『ああ、行って来る!』
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『【カルマ】さま! ようこそ、【アルグリア戦記】へ! 現在、
『ああ、ジョドー。今回は【ゲーム世界に転生】の【カルマ】でプレイするよ!』
『なるほど! 【創造神の試練】クリア特典ですかカルマさま? ほう、特別シナリオですね、・・・・・・【ゲーム世界に転生】? なんと
そう言いながらも、全く感情を表に出さないポーカーフェイスの執事に、カルマは
特別シナリオ【ゲーム世界に転生】を選択券で指定し、プレイアバター【カルマ】を選択する。
あれ、
キャラアバターのステータス情報を見ながら、カルマは
スキルと
はて、特別シナリオってイージーモードなの?
まあ、無いなら無いで問題は無い。
次に能力値を限界突破券で上限値を
う、うん? あれ、
一千億英雄ポイント券を使用してポイントを
おっ! 百億英雄ポイントで【
状態値である
状態値まで【1】ポイント固定だったら、【創造神の試練】はクリア出来なかっただろう。
次にスキルだ。
だが、スキルは生き物なのでスキル同士で相性が悪いと、逆に力を
目指すは両親の
十二万三十四回。合計でプレイアバター【カルマ】の両親が亡くなった回数だった。両親が
カルマはそう心に決めていた。
スキルの
お、アイテムの持ち込みも制限がないぞ?
スゲー、
過去のシナリオでもシナリオマラソン(特典目当てで何回も同じシナリオをプレイする事)での
ふ~ん、
全てのカスタマイズを終えたカルマは、ジョドーに【ゲームスタート】を
『準備は
執事の言葉には、
『
普段とは様子の違うジョドーにカルマは、
『いえ、全く問題はありません! 【カルマ】さま、準備が整いました!
『行って来、えっ?(