完全版【004】:変態は驚嘆し、異世界は咲う!(1)

文字数 22,805文字

極寒(ごくかん)雪景色(ゆきげしき)の中を空中に浮かぶ()(ぱだか)の赤ちゃんが、次々にスノーラットとスノーラビットを狩っていく。

狩られた獲物(えもの)は、()()()()()()()()()()()()()()()



最高だなぁ~、()()()()()()()()レベル上げが出来る(なん)(たま)らない!



俺は脳裏地図(マインドマップ)脳裏情報(マインドインフォメーション)と雪山を()()()()()()()、狩りに(きょう)じて()た。



仮想現実ゲームの世界で【廃神(オーバーアウト)】と呼ばれる神プレイヤーとして、名を()せていたプレイヤーネーム【カルマ】にとって、レベル上げとは快感(かいかん)同義(どうぎ)だった。



全てのゲームジャンルを網羅(もうら)プレイしていた【カルマ】は、所謂(いわゆる)ゲームが生活の一部に()っているゲーマー達の中でも、ドップリとゲームに()まっている【廃人(クラーク)】と呼ばれる人種を超越(ちょうえつ)した存在。人生全てをゲームに(ささ)げた異常(アブノーマル)進化種(プログレス)だった。



現実の世界の一秒が【二四秒】に相当する仮想現実の世界で、現実の人生の全てをゲームプレイに(ささ)げ、【最大延長(マキシマムエクステンション)】で現実の世界の一秒が【百十万四千秒】に相当する【アルグリア戦記】の世界で、(つね)にトップを独走(どくそう)する。

【アルグリア戦記の公式ホームページプレイヤーランキング】で、二位にトリプルスコアー以上の差を付けるゲーム(のう)変態(へんたい)は、ゲームプレイヤー達の(あこが)れで()り、(まさ)しく神だった。



従来(じゅらい)の【創造神の試練】で約半年後に起こる村の襲撃(しゅうげき)イベントまでは、実質(じっしつ)生命力(HP)・魔力(MP)・精神力(MSP)・持久力(EP)の状態値しか育成しようが無い。

常人(じょうじん)にとって約半年間は育成期間では無く、只々(ただただ)無為(むい)の時間で苦痛(くつう)でしかなかった。(また)、ゲーム(のう)変態(へんたい)のように精神にダメージを受けても、嬉々(きき)として激痛(げきつう)()え増加する生命力・魔力・精神力・持久力に、未来の自分の姿を想像し愉悦(ゆえつ)する異常者(アブノーマルパーソン)皆無(かいむ)と言って(ほか)ならない。



襲撃(しゅうげき)イベントが起きて初めて()つん()いで匍匐前進(はいはい)が出来るように()り、出来るように()っても生命力(HP)の数値次第では数秒から数十分で【0】ポイントに()り【ゲームオーバー】する未来が待って()るだけだった。

()してや封印(ふういん)()る能力値【1】ポイント固定は、無理ゲーシナリオに拍車(はくしゃ)を掛けた。

常人(じょうじん)にとって鬼畜仕様(きちくしよう)の無理ゲーと呼ばれる【創造神の試練】は、全く面白(おもしろ)みの無い生き地獄(じごく)()のものだった。

意味の無い半年間を過ごし凍死(とうし)するか追手に殺される無限ループ地獄に心を折られ、心を()み本物の廃人と()るクラークプレイヤーの多くは完璧(パーフェクション)主義者(ニスト)だった。()の事実はゲーム規制の社会現象を()き起こし、【創造神の試練】は鬼畜無理ゲーシナリオと呼ばれた。そんな禁断(きんだん)と言って良いシナリオを、十回以上も繰り返すプレイヤーは、()()()()()()()()()()()

プレイヤーランキングのポイントは、プレイヤーの行動に()って採点(さいてん)され付与(ふよ)される。

一度クリアしたシナリオを前回と同様にプレイしても、同じポイントは得られない。初回クリア限定ポイント分で差が付くからだ。

つまり、(かく)難易度(なんいど)シナリオごとに新規アバターでプレイしてゲームクリアすれば高得点が狙える。

勿論(もちろん)、高得点を(たた)き出すシナリオクリアとは【アルグリア大陸制覇(せいは)】を意味する。

()(ゆえ)、ランキング二位とトリプルスコアーを付けるカルマに、畏怖(いふ)憧憬(どうけい)崇拝(すうはい)したプレイヤー達が付けた異名(いみょう)が、廃人(クラーク)の中の廃人(クラーク)廃人(クラーク)達の神の名こそ【廃神(オーバーアウト)】だった。





過去に初回から数えて鬼畜(きちく)無理ゲーシナリオの()()()()()()()()()まで、通算(つうさん)四百七十七回行動不能(ゲームオーバー)の経験を持つ【カルマ】は、脳内地図(マインドマップ)参考(さんこう)効率(こうりつ)よくスノーラットとスノーラビットを狩っていく。





そんな中、もう一人のカルマは暖炉(だんろ)の近くで、カルスとマルナに見守られスヤスヤと眠って()た。





<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>

<<個体名【カルマ】の無属性(むぞくせい)魔法(まほう)レベルが上がりました!>>



順調に個体レベルとスキルレベルが上昇していく。



やっぱりスキル【神童(しんどう)LV1】の効果は(すご)い!



プレイアバター【カルマ】のウキウキは止まらない。無双プレイが嫌いなのでは無い。ドキドキする気持ちが()り感じられる未改造(アンカスタマイズ)プレイが好みなだけだった。

神童(しんどう)LV1】の効果で()る【18歳まで獲得経験値×10倍とする能力スキル】は、個体レベルだけに(とど)まらずスキルレベルの経験値にまで適応(てきおう)される。



現在のスキルレベルこそ【1】レベルだが、()れが【2】レベルに()れば【18歳まで獲得経験値×20倍とする能力スキル】に効果は()ね上がる。最大レベル【10】で【18歳まで獲得経験値×100倍とする能力スキル】と()けるチートスキルだった。



良いよ! オマエ(レベルの()るスキル)、良いよ!!



無属性魔法などの凡庸才能(コモンスキル)レベルが上がる快感(かいかん)()(ふる)えるカルマだった。

通常(つうじょう)、プレイヤーネーム【カルマ】は無双プレイを(この)まない。(ゆえ)にシナリオクリア特典で獲得(かくとく)した凡庸才能(コモンスキル)でさえカスタマイズ時に使用した事は一度も無かった。

理由は『勿体(もったい)()い』からだった。

折角(せっかく)のキャラアバターの特性を(いじ)るだなんてゲーム(のう)変態(へんたい)に言わせれば、素材の味を()かさないシェフ(料理長)ぐらい(おろ)かな(おこな)いだった。



そんなカルマが自分の楽しみよりも、【創造神の試練】の両親の早世(そうせい)と仲間の無念(むねん)運命(シナリオ)を、(くつがえ)()(なお)改変(かいへん)する(ため)に、死蔵(しぞう)して()固有才能(ユニークスキル)(レベル表示無し★)・特異才能(エクストラスキル)(レベル表示無し☆)・凡庸才能(コモンスキル)(レベル表示有り)を()()も無くカスタマイズした。



全ては両親と仲間の(ため)、カルマは自重を()てた。



現在(いま)のプレイアバター【カルマ】は言う()れば、不正行為(チート)では無く超不正行為(スーパーチート)も通り越した埒外不正行為(ウルトラチート)存在(そんざい)

()埒外不正行為(ウルトラチート)一端(いったん)が、母体(ぼたい)分体(ぶんたい)に分かれての効率的なレベル上げだった。




<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>




もうネズミとウサギじゃ効率(こうりつ)が悪いな~、次はキツネかシカかな~クマもいいな~!



そんな風に思いながらもスノーラットとスノーラビット狩りは続いていくが、近くにスノーウルフが()ると解ると、方向転換(ほうこうてんかん)して次の獲物(えもの)を探し、【短距離転移(ショートワープ)】をしながら空中を進んでいく。



()()()()()()()()()()()()()()しないとな~!



獲物(えもの)をスノーフォックスに切り替え効率的(こうりつてき)に狩りながらも、空中を進んで行くカルマの目の前に幾度(いくど)と無く飛び降りた【因縁(いんねん)の割れ目】が姿を現したのだった。



半年(はんとし)前倒(まえだお)しの()()本番(ほんばん)か、・・・・・・ヤバいなドキドキする!



従来(じゅうらい)、【創造神の試練】時の【カルマ】は生後半年ほどで起きる村への襲撃イベントで、両親を亡くし極寒(ごくかん)の中に(ほう)()される。



其処(そこ)で初めて匍匐前進(はいはい)が可能になった(ところ)から、本当の意味でのゲームが始まる。

(ほう)()されてから約三十分までに【凍死(とうし)するのが定番(デフォルト)】で、高難易度シナリオ【創造神への挑戦(創造神の試練の次に高難度なシナリオ)】をクリアした廃人(クリーク)達が心をポキポキ折られる、・・・・・・【鬼畜(きちく)儀式(ぎしき)】。



()の儀式をクリア出来る、【()()()()()()()()()()()る洞窟へ行く事が、今回でも正解かどうかはカルマとしても半年(はんとし)前倒(まえだお)しの状況では判断は付かなかった。



本当は洞窟の前で着地してから匍匐前進(はいはい)で奥へ進んで行き、従来(じゅうらい)の正解時の状況に少しでも近付けたかった。



しかし、レベル上げしたステータスを(もっ)てしても、【運命(シナリオ)の設定】なのか、現状では匍匐前進(はいはい)が出来なかったのだ。



(ただ)、今回の行動が不正解だったとしても両親と仲間の運命(シナリオ)改変(かいへん)する(ため)には、不正解も正解にする気概(きがい)のカルマだった。



「あぅあぅあぅあぁぁ~!(あいきゃんふら~い!)」



(すで)に空中に浮いているカルマが赤ちゃん言語で叫び、割れ目の中に姿を消して()った。(すで)に目を(つむ)っていても攻略可能な氷柱(つらら)アトラクションを軽快(けいかい)(さば)いて、目的地の空間に到達する。洞窟は奥へ進んで行く程に、壁が(あわ)(あお)(あお)く光っていて段々と明るさを増していき、最奥(さいおく)碧光(あおびか)りする水晶が、花のように壁と天井に咲いている広間が(ひろ)がっている。

其処(そこ)幾度(いくど)と無く訪れた場所だった。



そんな中、空中を進んで行く【カルマ】の目の前に、【従来の()()】が、鎮座(ちんざ)していた。




  
・・・・・・むっちゃ! くちゃ! 見てるな!





従来(じゅうらい)、【半年後の()()】は眠っている状態だったが、半年(はんとし)前倒(まえだお)しの状況では、()()は起きていて【カルマ】を凝視(ぎょうし)している。

()()としても、見た目普精霊人(ヒューマン)の赤ちゃんが空中を【短距離転移(ショートワープ)】して進んで来る(さま)は、異様(いよう)()のものだったので凝視(ぎょうし)するしかなかった。





「あぅあぅあぅあぁぁ~♪(()()()・・・・・・いただきます~♪)」





碧光(あおびか)りする花水晶が咲く神秘空間(しんぴくうかん)で、空中に浮かぶ【カルマ】が()(ぱだか)(さけ)ぶ! 



()視線(しせん)の先には、蒼光(あおびか)りの陽炎(かげろう)に身を包んでいる、【()()()()】が静かに(たたず)んで()たのだった。







なっ、(なん)だ! (なん)なんだ、一体(いったい)



十の災厄(アンタッチャブル)】の一角(いっかく)である【氷狼(ヒョウロウ)エンプレス】は唖然(あぜん)として(かた)まった(まま)だった。



(なん)じゃ、・・・・・・()の赤ん坊は!?



禁忌(きんき)の【ハルベルト山脈】の(あるじ)は、空中を短距離転移(ショートワープ)しながら、自分の()()()()だけを見つめながら、(おそ)れもなく進んで来る、()(ぱだか)の赤ちゃんに呆然(ぼうぜん)としてしまい()(すべ)が無かった。




「あぅあぅあぅあぁぁ~♪(()()()・・・・・・いただきます~♪)」



そして、(おもむろ)に自分の乳房(ちぶさ)に吸い付いた赤ちゃんに対して、【氷狼(ヒョウロウ)】エンプレスは()れるが(まま)だった。



何故(なぜ)なら、十の災厄(アンタッチャブル)である彼女に対して、此処(ここ)まで無防備に接して来た存在(そんざい)は今まで()なかった事と、()極寒(ごくかん)の地を人の身で、()してや生後(せいご)()もないであろう赤ちゃんが、()(ぱだか)短距離転移(ショートワープ)しながら近付き、一心不乱(いっしんふらん)に自分の乳房(ちぶさ)に吸い付く姿に不覚(ふかく)にも完全に思考停止(しこうていし)して()たからだった。



か・・・・・・か・・・・・・可愛(かわい)い!



()れが、【氷狼(ヒョウロウ)】エンプレスの母性(ぼせい)目覚(めざ)めた瞬間(しゅんかん)だった! ・・・・・・()瞬間(しゅんかん)から、無我夢中(むがむちゅう)に赤ちゃんは母乳(ぼにゅう)を飲み始めた!







<<ずきゅ~ん♪ ・・・・・・固有(ユニーク)個体名【エンプレス】の個体名【カルマ】への好感度が一定の(あたい)に達しました!>>



<<個体名【カルマ】が称号【氷狼(ヒョウロウ)加護(カゴ)】を獲得しました!>>



従来(じゅうらい)、【創造神の試練】時の【氷狼(ヒョウロウ)】エンプレスとカルマの邂逅(かいこう)は、一つの奇跡(きせき)だった。

極寒(ごくかん)の中、(ほう)り出されて死の時間制限(じかんせいげん)制約(せいやく)()せられ、徐々(じょじょ)に減っていく生命力(HP)と寒さで(かじか)んで思うように動かない身体で、匍匐前進(はいはい)しながら【氷狼(ヒョウロウ)】エンプレスに辿(たど)り着いた時には、カルマの生命力(HP)は残り(わず)かだった。

カルマは【氷狼(ヒョウロウ)】エンプレスに辿(たど)り着き、母乳(ぼにゅう)を飲む事によって称号【氷狼(ヒョウロウ)加護(カゴ)】を獲得して、(なん)とか生き延びたのだった。



廃人(クラーク)の中の廃人(クラーク)、【廃神(オーバーアウト)】と呼ばれるカルマの体感レベルは、勿論(もちろん)最大値で設定しているので、現実の世界()()敏感(ピーキー)な体感(触覚・痛覚等)が()る。
 
他の仮想現実ゲームでも常に、体感レベルと痛覚レベル機能の設定調節(ゲームごとに体感と痛覚との詳細なゲーム設定が各々違う)は最大値設定にして、格闘(ファイト)系、射撃(シューティング)系、隠密(アサシン)系、恋愛(ラブファイト)系などのゲームの最精鋭(トップランカー)達と日々(しの)ぎを(けず)って()たカルマのPS(プレイヤースキル)は、現実で実現可能なレベルまで技術として昇華(しょうか)して()た。

()れが、【廃神(オーバーアウト)】と呼ばれる所以(ゆえん)の一つでも()った。
 


しかし、単純に体感レベルを上げればゲームが上手になる訳では無い。

研ぎ澄まされる感覚を使い(こな)し、痛みと()の恐怖に打ち勝って技術に昇華(しょうか)してこそ上達していくのだった。



(ただ)し、体感レベルを最大値に近付けると言う事は、現実世界で実際に痛みを伴う行為(こうい)同義(どうぎ)以上に近付けると言う事(小さい痛みが体感レベルの上昇値により、数倍の激痛として感じる事)を()ず理解しなければならない。



体感レベルの設定値の制作運営会社の推奨は三十パーセント(現実世界の体感と同等設定は五十パーセント)で、それ以上の設定にするには、ゲーム規約にある体感レベルによる()()()()()()()()()()などはプレイヤーの自己責任で、制作運営会社は一切の責任を負わない(むね)に了解のサインをした廃人(クラーク)だけが挑める変態達(ヤバい奴ら)狂宴(カーニバル)なのだ。



極寒(ごくかん)の寒さで身体が(かじか)み、思う様に動かない生後半年(せいごはんとし)ほどの赤ちゃんが、最適解(さいてきかい)を導き出す(ため)凍死(とうし)三百十八回と爆散死(ばくさんし)百五十八回を繰り返し試行して、【鬼畜(きちく)儀式(ぎしき)】を体感レベル最大値設定で、嬉々(きき)として(くぐ)り抜けた。

ゲームに人生の全てを捧げたゲーム(のう)変態(へんたい)が、【廃神(オーバーアウト)】と呼ばれるカルマの(しん)姿(すがた)だった。



ウグウグっ! ・・・・・・()()()! 母乳(ぼにゅう)美味(うま)()ぎる・・・・・・ゲポっ!





FHSLG【アルグリア戦記】に()いて、最高難易度のシナリオ【創造神の試練】が鬼畜無理(きちくむり)ゲー(超難易度過ぎて攻略が不可能、無理でしょうって言うゲーム)と言われるのは、単純にクリアしたプレイヤーが誰一人として()なかったからで()る。

【創造神の試練】を攻略するには、あらゆる全てのものを活用しなければならない。



()の一つが、【称号の効果】である。

【アルグリア戦記】には、キャラアバターが元々(もともと)所持(しょじ)してる称号と、行動によって獲得出来る称号が()る。行動の結果で、所持(しょじ)称号(しょうごう)上位(じょうい)称号(しょうごう)に書き()えられ進化する場合も()る。

カルマが最初に獲得した称号【氷狼(ヒョウロウ)加護(カゴ)】の効果は、寒冷耐性(かんれいたいせい)()()()()への威圧(いあつ)魅了(みりょう)だった。
 


お腹一杯に()りスヤスヤと眠る赤ちゃんを、白い巨狼が自分の尻尾で(いと)おしく包んで()る。

巨狼は何故(なぜ)()普精霊人(ヒューマン)(見た目が)の赤ちゃんは自分に対して、こんなにも無防備で()られるのか自問自答(じもんじとう)する。

そして、自分への絶対的な信頼と一途(いちず)愛情(あいじょう)を感じ、理由を考える事を放棄(ほうき)したのだった。
 
十の災厄(アンタッチャブル)一角(いっかく)、【氷狼(ヒョウロウ)】エンプレスは運命(シナリオ)設定(システム)上、【()れない孤高(ここう)(おおかみ)】だった。



狼は()れる習性(しゅうせい)()り、()れが本能(ほんのう)でも()った。

()れを()る意味、強引に螺子(ねじ)曲げた設定(システム)との不条理(ふじょうり)が、【不具合(バグ)】を生んだのかもしれない。



赤ちゃんの寝顔を見ていると、()存在(そんざい)を守りたい無償(むしょう)欲求(よっきゅう)が高まっていく。
 


()の熱い眼差(まなざ)しを感じた赤ちゃんが目を(さま)し、自分を見つめる巨狼にくしゃっと笑いかけた。



<<ずきゅ~ん♪ 固有(ユニーク)個体名【エンプレス】の個体名【カルマ】への【好感度】が上限に達しました!>>

<< 固有(ユニーク)個体名【エンプレス】の個体名【カルマ】への【好感度】が【愛情度】に書き替えられました!>>

<<固有(ユニーク)個体名【エンプレス】の個体名【カルマ】への【愛情度】が上限に達しました!>>

<<固有(ユニーク)個体名【エンプレス】の個体名【カルマ】への【愛情度】が上限に達しました!>>

<<固有(ユニーク)個体名【エンプレス】の個体名【カルマ】への【愛情度】が上限に達しました!>>

<<固有(ユニーク)個体名【エンプレス】の個体名【カルマ】への【愛情度】が上限に達しました!>>

<<固有(ユニーク)個体名【エンプレス】の個体名【カルマ】への【愛情度】が限界突破(げんかいとっぱ)しました!>>

<<個体名【カルマ】の称号【氷狼(ヒョウロウ)加護(カゴ)】が【氷狼(ヒョウロウ)寵愛(チョウアイ)】に書き替えられました!>>

<<個体名【カルマ】の称号【氷狼(ヒョウロウ)寵愛(チョウアイ)】が【氷狼(ヒョウロウ)愛息(アイソク)】に書き替えられました!』



「あぅ!?(えっ、マジ!?)」



極寒(ごくかん)の洞窟の中、巨狼の尻尾で(くる)まれながらカルマが()(ぱだか)(つぶや)く! 

()視線(しせん)の先には、慈愛(じあい)眼差(まなざ)しで見つめる(あお)(ひとみ)()()()()の母親が微笑(ほほえ)んで()た。







「あぅあぅあぅあぁぁ!(ふむふむ・・・・・・マジか・・・・・・まっ、()っか!」




従来(じゅうらい)の【創造神の試練】では、()の段階で【カルマ】が獲得出来た称号は【氷狼(ヒョウロウ)加護(カゴ)】のみで、十八才で成人を迎えた時に称号【氷狼(ヒョウロウ)寵愛(チョウアイ)】を獲得出来るのだったが。
 


氷狼(ヒョウロウ)寵愛(チョウアイ)】を()える上位称号が()ったとは!?





称号【氷狼(ヒョウロウ)加護(カゴ)】の効果は、寒冷耐性(かんれいたいせい)()()()()への威圧と魅了(みりょう)だった。

()の称号効果を()かして【カルマ】はスノーウルフを仲間にし、鬼畜仕様(きちくしよう)(しば)りで能力値(筋力・知力など)は、【1】ポイントより()()()()()()()()()()()が、個体レベル上げを十八才の成人に()るまで続けた。

そして、【氷狼(ヒョウロウ)寵愛(チョウアイ)】の称号を獲得してから、()の効果の寒冷無効(かんれいむこう)()()()()への統制と魅惑(みわく)を使って、スノーウルフの()れを統率して大陸制覇(せいは)足掛(あしが)かりにするのだった。



()れが今や、()れを()える称号を獲得した。

()の称号【氷狼(ヒョウロウ)愛息(アイソク)】の効果は、寒冷無効(かんれいむこう)()()()()()()()()への支配と傾国(けいこく)だった。



FHSLG【アルグリア戦記】のステータス表示には、【情報表示(インフォメーション)】・【状態表示(シチュエーション)】・【能力表示(アビリティ)】・【部隊編成表示(フォーメーション)】が()る。

情報表示(インフォメーション)】には、名前・個体レベル・備考(年齢・種族・身分・職業・称号・才能・説明)が、【状態表示(シチュエーション)】には生命力(HP)・魔力(MP)・精神力(MSP)・持久力(EP)・満腹度(FP)が、【能力表示(アビリティ)】には、筋力(STR)・耐久力(VIT)・知力(INT)・敏捷(AGI)・器用(DEX)・魅力(CHA)が、【部隊編成表示(フォーメーション)】には、統率力(LEA)・攻撃力(OFF)・防御力(DEF)・機動力(MOB)・持久力(END)・戦法力(TAC)・士気力(MOR)・詳細が表示されて()る。

鬼畜仕様(きちくしよう)(しば)りで()る能力値を全て【1】ポイント固定で適用される能力値は、筋力・耐久力・知力・敏捷・器用・魅力で、どれだけ個体レベルを上げても【1】ポイントの(まま)()った。



そんな状態で鬼畜仕様(きちくしよう)の最高難易度シナリオである【創造神の試練】をクリアするには称号効果と、もう一つの()()()()()()()である【隠された(マスク)データ】への()()が必要で()る。



称号【氷狼(ヒョウロウ)加護(カゴ)】、【氷狼(ヒョウロウ)寵愛(チョウアイ)】で言えば、魅了(みりょう)は現在の魅力値×【10】倍の効果が()り、魅惑(みわく)は×【100】倍だった。

つまり、能力表示上の魅力能力値が【1】ポイントでも、称号効果で【10】、【100】と()()()()限定で、【隠された(マスク)データ】として()()される。



威圧(いあつ)統制(とうせい)は称号効果で()才能(スキル)ではないので、鬼畜仕様(きちくしよう)(しば)りである才能(スキル)枠の【0】で固定による、才能(スキル)を修得出来ない効果は元から適用外(てきようがい)()った。

【カルマ】は、威圧(いあつ)魅了(みりょう)併用(コンボ)効果でスノーウルフを仲間にして、統制(とうせい)魅惑(みわく)併用(コンボ)効果でスノーウルフの群れ(パック)を統率したのだった。



氷狼(ヒョウロウ)愛息(アイソク)》、ヤバい!!!



称号効果が(すご)いのは勿論(もちろん)だが、【氷狼(ヒョウロウ)エンプレス】が()()()()()()()()()()()()()()()()のが一番ヤバかった。



称号【氷狼(ヒョウロウ)愛息(アイソク)】の効果で()る【傾国(けいこく)】は、()()()()限定で現在の魅力値×【1000】倍だった。



【カルマ】が現在のステータス情報を確認する。



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【情報表示】:▼

氏名(NAME):【カルマ】

個体LV:【18】

備考:▼

年齢:【0歳】

種族:【森精霊人(エルフ)普精霊人(ヒューマン)混血(クオーター)

身分:【未設定】

職業:【未設定】

称号:【異世界転生者】▼

   【異世界転生者】:転生した異界者(いかいしゃ)の称号。異世界言語(いせかいげんご)を使用可能。

   【プレイヤー】▼

   【プレイヤー】:ゲームプレイヤーの称号。ゲームシステムを使用可能。

   【氷狼(ヒョウロウ)愛息(アイソク)】▼

   【氷狼(ヒョウロウ)愛息(アイソク)】:寒冷(かんれい)無効(むこう)寒冷操作(かんれいさうさ)(おおかみ)(けい)生物(せいぶつ)支配(しはい)と【傾国(けいこく)効果(こうか)


才能(スキル):【分体(ぶんたい)分裂(ぶんれつ)★】▼

   【分体(ぶんたい)分裂(ぶんれつ)★】:母体(ぼたい)分体(ぶんたい)分裂(ぶんれつ)する能力スキル。

   【存在遮断(エクジストブロック)★】▼

   【存在遮断(エクジストブロック)★】:存在(そんざい)を別次元に隔離遮断(かくりしゃだん)する能力スキル。

   【睡眠修行(スリープトレーニング)★】▼

   【睡眠修行(スリープトレーニング)★】:睡眠中(すいみんちゅう)に経験値を獲得(極)する能力スキル。

   【魔力無双(マジックオーバー)☆】▼

   【魔力無双(マジックオーバー)☆】:現在の魔力値×10000倍にする能力スキル。

   【状態(じょうたい)異常(いじょう)無効(むこう)☆】▼

   【状態(じょうたい)異常(いじょう)無効(むこう)☆】: 諸有(あらゆる)状態異常を無効状態にする能力スキル。

    【心眼(しんがん)☆】▼

   【心眼(しんがん)☆】:鑑定眼の上位版の能力スキル。

   【神童(しんどう)LV3】▼

   【神童(しんどう)LV3】:18歳まで獲得経験値×30倍とする能力スキル。

   【念話(ねんわ)LV1】▼

   【念話(ねんわ)LV1】:(ねん)意思疎通(いしそつう)(はか)る能力スキル。

   【時空魔法LV1】▼

   【時空魔法LV1】:時空を(あやつ)る魔法スキル。

   【無属性(むぞくせい)魔法(まほう)LV4】▼

   【無属性(むぞくせい)魔法(まほう)LV4】:無属性の魔法スキル。

   【他】▽

説明:▼
   【運命(うんめい)宿命(しゅくめい)(もう)()

【状態表示】:▼

生命力(HP):【346/346】

魔力(MP) :【3480000/3480000】

精神力(MSP):【349/349】

持久力(EP):【343/343】

満腹度(FP):【99/100】

【能力表示】:▼

筋力(STR)  :【341】

耐久力(VIT) :【341】

知力(INT)  :【341】

敏捷(AGI)  :【341】

器用(DEX)  :【341】

魅力(CHA)  :【341】


【部隊編成表示】:▼

統率力(LEA):【未設定】

攻撃力(OFF):【未設定】

防御力(DEF):【未設定】

機動力(MOB):【未設定】

持久力(END):【未設定】/【未設定】

戦法力(TAC):【未設定】/【未設定】

士気力(MOR):【未設定】/【未設定】

詳細:▼

主将:【未設定】

副将:【未設定】

副将:【未設定】

部隊:【未設定】

戦法:【未設定】

特性:【未設定】

説明:【未設定】



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良し! 状態値と能力値共に【340】成長ポイントも加算(かさん)されて()る!



神童(しんどう)】スキルの効果で成長ポイント(レベルアップ時に自動的に【1】~【20】ランダム付与(ふよ))が確定で【20】ポイントづつ付与(ふよ)されるからだ。



神童(しんどう)】スキル! なんて(おそ)ろしい子なんだ・・・・・・



おっ、個体レベルが【18】に()ってる!



眠る前が(たし)か個体レベルが【16】だった(はず)、大体一時間ほどでレベルが二つも上がってる!



やっぱり【固有(ユニーク)才能(スキル)】はチートだな!?



俺は眠る前に()()()()()()()()()()()()()



FHSLG【アルグリア戦記】のルールの一つで()るスキル枠十枠の制限は、スキル(わく)撤廃券(てっぱいけん)解除(かいじょ)されてスキルを十枠以上プレイアバターに付与可能(ふよかのう)()った。

しかし、常時(じょうじ)無限にスキルが使用出来る訳では無い。

十枠の制限ルールは存在(そんざい)した。

()くまでも使用出来るのは【情報表示(インフォメーション)】に()()()()()()()()()()()()()()()()だった。



良かった、準備して()て。




特別シナリオ【ゲーム世界に転生】をスタートするに当たり、両親と仲間の運命(シナリオ)改変(かいへん)する(ため)に、一切(いっさい)妥協(だきょう)自重(じちょう)をカルマはしなかった。



特典の能力値の限界突破券(げんかいとっぱけん)を使用して、普精霊人(ヒューマン)森精霊人(エルフ)混血(クォーター)の成長限界能力値(筋力・耐久力・知力・敏捷・器用・魅力の成長限界値)の壁を突破し、英雄ポイントで限界まで成長限界能力値を上げた。

()の結果、成長限界身体能力値の()()()が【(無限表示)】になって()る。

つまり、上限(じょうげん)()しで育成出来ると言う事で()った。



そんな状態で育成出来ないのは(ぞく)に言う【蛇の生殺し】で()り、廃人(クラーク)の中の廃人(クラーク)、【廃神(オーバーアウト)】と畏怖(いふ)を込めて呼ばれて()たカルマには我慢が出来ない事だった。



「あぅあぅあぅあぁぁ~!(育成出来ないじゃないかぁ~!)」



カルマにとって育成とは寸暇(すんか)()しんでするもので、御褒美(ごほうび)(いや)至上(しじょう)の喜び以外の何物でもなかった。

しかし、こう言う事態(じたい)にも対処(たいしょ)する(ため)に、準備万端(じゅんびばんたん)で生物との意志疎通(いしそつう)(はか)才能(スキル)念話(ねんわ)LV1】を、カスタマイズ時にキャラアバター【カルマ】に付与(ふよ)して()た。



『母さん、少し離して欲しいんだけど?』



『なっ! ・・・・・・』



氷狼(ヒョウロウ)エンプレス】は、カルマから()()()念話で話し掛けられた衝撃(しょうげき)よりも、()()()拒絶(きょぜつ)された事に衝撃(しょうげき)を受けているようだった。



<<固有(ユニーク)個体名【エンプレス】が個体名【カルマ】から精神攻撃を受け状態異常【精神崩壊(せいしんほうかい)】になりました!>>



えっ!?



氷狼(ヒョウロウ)エンプレス】はカルマに拒絶(きょぜつ)されたと思い込み、初めての【()()()】の衝撃(しょうげき)(たましい)に大打撃を受けたのだった。



『そ、そん、・・・・・・な!?』



<<個体名【カルマ】は固有(ユニーク)個体名【エンプレス】に精神攻撃を仕掛けました!>>



氷狼(ヒョウロウ)エンプレス】は苦悶(くもん)の表情で、カルマを見つめた(まま)大粒(おおつぶ)(なみだ)をポロポロと(こぼ)し出す。



あああ~、()の状況は何度も見た事が()る!



デレデレにデレた【親バカ(モンスターペアレント)】にバージョンアップした(かあ)さんだ!!



でも、(なん)かいつもよりも大袈裟(おおげさ)じゃ無いかな?



いつもは目に(なみだ)()めるだけだったのに!?



あっ! 【氷狼(ヒョウロウ)愛息(アイソク)】か!?



(たし)か【傾国(けいこく)】は、()()()()限定で現在の魅力値×【1000】倍。

つまり、【能力表示(アビリティ)】上は魅力値は【341】ポイントでも、【隠された(マスク)データ】では、【341000】ポイントに()る!?



あっ、やっちまったか、・・・・・・も? 



ゴクリ・・・・・・



氷狼(ヒョウロウ)エンプレス】は懊悩煩悶(おうのうはんもん)極地(きょくち)(たっ)して()た。()の赤ん坊を(まも)りたい想いで()(あふ)(いつく)しんで()(ところ)を、最愛(さいあい)存在(そんざい)昇華(しょうか)した赤ん坊に拒絶(きょぜつ)された。

氷狼(ヒョウロウ)エンプレス】は痛恨(つうこん)の攻撃を精神に受けて、()んでバッタリと倒れ()したのだった。



<<個体名【カルマ】は固有(ユニーク)個体名【エンプレス】を討伐しました!>>



「あぅあぅあぅあぁぁ~!(えええぇぇ~マジか~!)」



極寒(ごくかん)の洞窟の中、驚愕(きょうがく)の表情でカルマが()(ぱだか)(さけ)ぶ! 

()視線(しせん)の先には、白い巨狼の()()()()の母親が、瞬時に【()()()()()消えていく、空虚(くうきょ)な空間だけが映っていた。







()(ぱだか)のカルマは驚愕(きょうがく)の表情で、瞬時(しゅんじ)に【()()()()()消えていく()()()()の母親見つめながら、何故(なぜ)()()()をして()た。



<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>

<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>

<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>

<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>

<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>

<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>

<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>

<<個体名【カルマ】は称号【氷狼(ヒョウロウ)討伐者(トウバツシャ)】を獲得しました!>>

<<個体名【カルマ】は称号【精神破壊者(ソウルバスター)】を獲得しました!>>

<<個体名【カルマ】は災厄(カラミティ)武器(ウエポン)氷狼(ヒョウロウ)長剣(バスターソード)丸盾(ラウンドシールド)】を獲得しました!>>



FHSLG【アルグリア戦記】に()いて、ゲームクリアとは【アルグリア大陸制覇(せいは)】で()るが、()のゲームクリアの仕方によってクリア結果が別れていた。
 


所属する勢力の【覇者】としてクリアする【通常制覇】と、()()()()()()()()()所属する勢力の覇者としてクリアする【完全制覇】が()り、所属する勢力の【一員】としてクリアする【所属制覇】と、()()()()()()()()()所属する勢力の【一員】としてクリアする【完全所属制覇】が()った。

(また)、【単独】で自分以外の勢力を殲滅(せんめつ)してクリアする【殲滅(せんめつ)制覇】と、()()()()()()()()()【単独】で自分以外の勢力を殲滅(せんめつ)してクリアする【完全殲滅(せんめつ)制覇】が()る。

()れらの制覇の中の()()()()()()()()()の条件とは、【十の災厄(アンタッチャブル)の全討伐】で()る。



災厄には弱点が個体ごとに存在(そんざい)するが、()の弱点が判明しても討伐不可能なのが災厄で()った。



災厄の縄張り(テリトリー)を犯しただけで【敵認定(ヘイトロック)】され、()()でも所属勢力が滅ぶ危険度が限りなく高いのは、【()()()()()()】と呼ばれる所以(ゆえん)()る。



そんな鬼畜仕様(きちくしよう)存在(そんざい)()る【十の災厄(アンタッチャブル)】を全討伐して、鬼畜仕様(きちくしよう)シナリオ【創造神の試練】を()()制覇(クリア)したカルマを(もっ)てしても、()()()()の母親が亡くなった理由が、自分の何気(なにげ)ない一言で()った事実を受け入れる事は難しかった。



従来(じゅうらい)の【創造神の試練】では、十の災厄(アンタッチャブル)一角(いっかく)、【不死鳥(フシチョウ)】との戦いで、()()()()の母親が、【不死鳥(フシチョウ)】の動きを(ふう)じカルマは泣く泣く母親(ははおや)諸共(もろとも)不死鳥(フシチョウ)】を討伐した経緯(けいい)()る。



真逆(まさか)自分の一言が原因で、こんなにも呆気(あっけ)なく亡くなるとは・・・・・・



嘘だと言ってくれよ! ()()()



称号【氷狼(ヒョウロウ)討伐者(トウバツシャ)】は、他のプレイアバターを含めて討伐経験があるので称号効果は知って()る。



純粋(じゅんすい)に強くなる称号で、効果は現在の【身体能力値×10倍】と【獲得経験値×10倍】で()った。

そして、【氷狼(ヒョウロウ)】エンプレスを言葉(精神攻撃)だけで討伐したからか、称号【精神破壊者(ソウルバスター)】を獲得したのだった。

 称号【精神破壊者(ソウルバスター)】の効果は、()()に【精神破壊効果】を攻撃に付与(ふよ)すると言う【超不正行為(スーパーチート)】なものだった。

攻撃する度に精神をゴリゴリ(けず)っていき、精神力(MSP)値が【0】ポイントに()ったキャラアバターが気絶状態に()るだけでも(すご)い効果なのに、部隊編成した者にも精神破壊効果を付与(ふよ)するものだからだ。



精神破壊者(ソウルバスター)か、【()()】が好きそうな効果だなぁ~!



カルマは前世では仮想現実ゲームを色々プレイして()たが、FHSLG『アルグリア戦記』は一人用やり込み型戦争ゲームなので【師匠(ししょう)】と(から)機会(きかい)は少なかった。



()の為、【ボイスチャット】でゲームプレイ中に情報交換をして()た。

しかし、師匠(しよう)と呼ぶ()()所以(ゆえん)は決して、仮想現実の世界では口にしなかった。

()()()()は情報が()れない【アナログな方法(手紙)】で、現実世界でのみ情報交換をして()た。

師匠(ししょう)何故(なぜ)()のような手間(てま)を掛けるのかと問うと、決まって『カルマ、()の世の中には知らない方が幸せな事が結構(けっこう)()るんだ』と手紙に()される。

徹底(てってい)した秘密主義の師匠(ししょう)。イカれた変態(へんたい)は現実世界でもイカれた存在(そんざい)なのかも()れない。

あの【やられたらやり返す】ルールに忠実な、狂人のプライベートを知りたいとは全く思わない。



だが、ゲーム世界に現実(リアル)に転生して、唯一(ゆいいつ)現実世界の心残りは【師匠(ししょう)】の事だけだった。



ゲームを一緒に遊んだ仲間は沢山(たくさん)()るが、一緒に遊んでいて心から楽しいと思ったのは師匠(ししょう)だけだった。



PS(プレイヤースキル)は超下手くそ(ゴミ以下)(くせ)に、DOQ(ドキュン)最精鋭(トップランカー)廃人(クリーク)の知り合いが結構(けっこう)()る変わった人だった。



初めて師匠(ししょう)と出会ったゲームは、MMOWG【矛盾(バストーロ)】で、多人数参加型戦争ゲーム(矛盾の世界時間は二十四分の一秒で、現実世界の一時間が仮想現実世界の二十四時間に相当する)だった。



戦争の度に【独特な文言の歌】を唄いながら、敵を容赦(ようしゃ)()く襲う人だった。



そんな師匠(ししょう)口癖(くちぐせ)が、『俺達は戦争ゲームをしているんじゃない! 心理ゲームをしているんだ!』、『心を攻めろ! 精神を(けず)るんだ! ゴリゴリ(けず)れ!』、『どんな最精鋭(トップランカー)も心が折れたら、(ただ)木偶の坊(デク)だ! 心を(けず)れ!』だった。



矛盾(バストーロ)】では師匠(ししょう)()(きら)われていたが、決して自分からは戦争を仕掛けなかったし全て報復戦争で、一旦戦争が始まると敵が数倍の圧倒的勢力でも、確実に勝てないと判断出来る相手でも、(おそ)れなかったし、(あきら)めなかったし、()まらなかった。

現実世界での夜討(よう)朝駆(あさが)けの時刻(じこく)でする仮想現実世界の夜討(よう)朝駆(あさが)けは当たり前で、人が嫌がる攻撃を(あま)りにする行為(こうい)と、攻撃されなければ決して攻撃しない師匠(ししょう)の【独特な(ルール)】から付いた渾名が【凶神(触らぬ神に祟り無し)】だった。



そうだ! 俺は師匠(ししょう)強烈な意志(執念)()き付けられたんだ!



茫然自失(ぼうぜんじしつ)から解けたカルマは、積極的に動き出した。



氷狼(ヒョウロウ)エンプレス】が討伐(とうばつ)されたと言う事は、氷狼(ヒョウロウ)息吹(いぶき)(こお)ったものが()け始める。

(たし)か設定情報ではハルベルト山脈に隣接する氷柩の王国(コキュートス)と呼ばれる地域が()る。現在脳裏地図(マインドマップ)脳裏情報(マインドインフォメーション)では、旧アクリス王国跡の注釈(ちゅうしゃく)が付く場所だ。

氷解し始めて春期になったら氷柩の王国(コキュートス)(しん)の姿を現す。()れは大事に()る。



(ほう)けてる時間は無いぞ! ()()()()()()()()と仲間の運命(シナリオ)改変(かいへん)するんだ!



洞窟を飛び出したカルマは旧アクリス王国跡を目指し、脳内地図(マインドマップ)を参考にして、【長距離転移(ロングワープ)】したのだった。



「あぅあぅあぅあぁぁ~!(根刮(ねこそ)ぎ、いただきます~!)」



極寒(ごくかん)雪化粧(ゆきげしょう)の中、空中に突然出現したカルマが()(ぱだか)(さけ)ぶ! 



()視線(しせん)の先には、【氷柩の王国(コキュートス)】と呼ばれる、雪が降り積った旧アクリス王国跡(墓標)が沈黙を守って()た。



やっと着いた!



旧アクリス王国の王都ロックスまでに()る、全ての村・町・市街を脳内地図(マインドマップ)脳内情報(マインドインフォメーション)で、()れが無いように確認しながら(おとず)れ、建物以外()()()()()を回収しながら来たカルマだった。



結構(けっこう)手間取(てまど)ったな、では! 根刮(ねこそ)ぎ、いただきます!



見渡す限りの雪原の中で、一ヶ所だけ氷が三角帽子のように出っ張っている(ところ)が、王都ロックスにある石塔を頂点とするロックス城だっだ。

そして、カルマは休む間も無く空中を短距離転移(ショートワープ)をしながら、その氷の山の中に消えていった。



寒冷操作(かんれいそうさ)、ヤバい効果だ!



称号【氷狼(ヒョウロウ)愛息(アイソク)】の効果で()る、寒冷無効(かんれいむこう)寒冷操作(かんれいそうさ)併用(コンボ)効果で、雪嵐(ブリザード)の中だろうが氷の中だろうが、関係なく息も出来て(なに)も無い空気中のように進んで行けるのだった。

そして、任意で自由に寒冷(かんれい)操作(そうさ)して称号効果で自身のMP(魔力)を一切使わずに周囲の魔素を取り込んで雪嵐(ブリザード)を起こし、任意の範囲を凍り漬け(氷柩の王国(コキュートス)と同じ効果)に出来る、超不正行為(スーパーチート)を超える埒外不正行為(ウルトラチート)な効果だった。



氷中世界のロックス城は、王族を始め王城で働く全ての人々の時間が止まって固まって()り、()れはまるで()()()()()かのようだった。





FHSLG【アルグリア戦記】は、一人用やり込み型ファンタジー歴史シミュレーションゲームで熱狂的(コア)愛好者(ファン)を獲得して()た。

お気に入りのキャラアバターで戦争関係無くアルグリア大陸の生活を楽しむプレイヤーが()れば、同じ所属勢力内キャラアバターで立場を代えて楽しむプレイヤーも()る。

現実世界の様々(さまざま)な立場のプレイヤーがゲーム世界で自分(じぶん)(ごの)みの様々(さまざま)な立場のプレイヤーとしてプレイをする。

そんな現実を束の間忘れさせてくれる究極の娯楽世界。

制作運営会社(いわ)く、『アルグリア戦記』が一人用であるのは、同じ時間軸で色々なキャラアバターで遊ぶ事で歴史のもしも(if)を体験して貰いたかったからだった。

弱小勢力でもアルグリア大陸の歴史を知っていれば(知識チート)、この時代に存在(そんざい)しない政策(内政チート)、存在(そんざい)しない武器(生産チート)を駆使(くし)して歴史を()()()創意工夫で変える事が出来る、可能性を秘めた世界がFHSLG『アルグリア戦記』だった。



やっと終わった!



王都ロックスを含め、氷柩の王国(コキュートス)(とら)われた旧アクリス王国の全ての村・町・市街を訪れ、建物以外の()()()()()を回収し、寒冷操作(かんれいそうさ)氷柩の王国(コキュートス)同様(どうよう)再度(さいど)(こお)()けにして、氷狼(ヒョウロウ)が討伐された証拠を封印(隠滅)したカルマだった。



災厄の縄張り(テリトリー)迷宮(ダンジョン)だから、洞窟まで()()()()()出来ないのが手間だなぁ~!



そう思いながらカルマは氷柩の王国(コキュートス)から、長距離転移(ロングワープ)を使用して一瞬(いっしゅん)で姿を消した。



やっと帰って来た・・・・・・



カルマは洞窟を進み、碧光(あおびか)りのする花水晶の間に短距離転移(ショートワープ)で入っていく。



『お帰り、坊や!』



『ただいま! ()()()!』



極寒(ごくかん)の花水晶の間で、空中に浮かぶカルマが()(ぱだか)で元気に挨拶(あいさつ)をする! 

()視線(しせん)の先には、自分が討伐(とうばつ)してしまった白い巨狼、()()()()の母親が静かに微笑んで()た。














【アルグリア戦記】には、セーブ機能(きのう)は存在しない。全て最初からのスタートと()る。()()()()()で、セーブなどは出来る(はず)もない。此処(ここ)は【アルグリア世界】、もう一つの現実の世界。現実の一秒が、三千百十万四千秒に相当(そうとう)する仮想の現実世界。現実の一時間が、百二十九万六千日(三千五百五十年と二百五十日)に相当(そうとう)する【悠久(ゆうきゅう)歴史(れきし)(きざ)世界(せかい)】。



()たして、【アルグリア世界】は、仮想の現実世界なのだろうか? ()れとも、実はもう一つの現実世界【異世界(いせかい)】なのだろうか? ()の答えは【プレイヤー】だけが知っている。







To be(続きは) continued(また次回で)! ・・・・・・
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