エピローグ

文字数 1,829文字

先生の死は、瞬く間に知れ渡った。

LGBT計画などのことは隠し、「ロボットの稼働年数が限界に達した」とウソをついたが、生徒たちの動揺は大きいようだ。

朝だよう!


これから、俺たちが中心にならないとな・・・

俺は畑を見てくるよ。

・・・主よ、罪深き私をお許しください・・・

二人は先に行ってて。

あれから、ずっとお祈り・・・何か食べないと体に悪いよ
薫・・・先にいっててくれ

おい、茜。いい加減にしろよ。

ずっと拗ねてるつもりか?

私は殺人の大罪を犯したの・・・

もう、薫に合わせる顔なんてないわ。

そっとしておいてちょうだい・・・

薫はあなたが貰えばいい。

せっかく、薫はお前を選んだっていうのに・・・!

もう、私には薫と結ばれる資格なんてないわ。

さあ、放っておいてちょうだい。

もういい、勝手にしろ!

僕は、麦畑の中で佇んでいた。

茜がいつも懸命に耕していた麦畑だ。

順調に育ってるね。これなら、今年も美味しいパンが食べ放題だよ。

茜が、本当に手をかけて育ててきたから・・・

おーい、いいのかよ?

お前が好きな奴、ずっとあのまんまだぞ?

・・・どうだろうね。見てよ、この麦畑・・・

黄金の絨毯みたいだよ。

人一倍丁寧な性格の茜が、人一倍手をかけてきたんだ・・・

一日サボったくらいじゃビクともしないよ。

・・・きっと、茜も同じだよ・・・!


僕、茜が元に戻るまで、この畑を守るよ。

きっと、茜は戻ってくるよ・・・!

妬けるね、全く。

じゃー、俺はみんなの様子を見てくるよ。

授業とかも続けないといけないし・・・先生に頼まれたもんな。

学園の未来を守ってって。

それから、しばらくの間、僕たち三人は単独で行動した。

僕は、麦畑の世話。

ユーリィがクラスの授業。

そして、茜は・・・

主よ・・・どうすれば私の罪は許されるのでしょうか。

私は・・・

茜、ちょっといいか?
ユーリィ・・・ごめんね、あなたにクラスを押し付けて。

・・・畑を見に行かないか?

麦畑・・・ずっと、お前が世話をしてた。

気になるだろ?

麦畑・・・そうね。

麦がないと、みんなの食べ物がなくなっちゃうわ。

ほらほら、気晴らしだ。来いよ。

あー、茜!

来てくれたんだね。

薫・・・!

麦の面倒を見ていてくれたの・・・?

綺麗・・・ありがとう!

・・・やっと笑ってくれたね!


え・・・?


茜の笑顔、一週間ぶり!
あ・・・
そう、一週間もこもりっきりでさ。
ごめんね・・・心配かけて。

いーや、俺としちゃ好都合。薫との蜜月の時間をたっぷり作れたからね。

ねえ、薫? ほら、スリスリ。

わっ。急にどこ触ってるの!!?

ああ、そこはダメだってば! ああっ。

そっか、折角生き延びたのに、死にたかったのね。

それならそうと早く言ってくれれば・・・

なんで、ボウガンまだ持ってるの?


ぷ・・・・あははは!
クスクス・・・・あははは!

それは、久々の三人そろっての笑い声だった。

黄金の絨毯みたいな麦畑の中で、僕らは時間を忘れてただただ笑いあった。

まだ、先生を信じていた、あの頃のように・・・

あー、おかしかった。

一か月前は、いつもこうだったね・・・あの時は、まだ先生を信じていた・・・

なあ、確かに先生はサイテーの殺人鬼だよ・・・

けど、先生がいたから、俺たちは今こうして生きている・・・そう言えるんじゃないのかな?

それに、先生はきっと俺たちに止めて欲しかったんだと思う・・・

先生が本気なら、俺たちなんかとっくに潰されてたはずだから・・・

そう・・・そうかもね。

僕、決めたよ!

将来の道。

国語の先生になって、作家になる!

先生みたいに、生徒に優しい教え方の上手な先生。

そして、作家になって・・・今回のことを後世に伝え続けるよ。

案外、向いてるかもな。

じゃあ、俺は体育と数学、化学の教師だ。


じゃ、私は英語と社会かしらね。

けど、薫のお嫁さんっていう重要な夢もあるけど。

えっ、そりゃ嬉しいけど。ま、まだ僕らには早いよ。

もうちょっと待ってからでないと、結婚できないし。

あら・・・やっぱり私を選んでくれたっていうのウソだったの?

ユーリィと随分と仲良くなっちゃってるみたいだし。

ムフフ、そう見える?

略奪愛も悪くないのかもね。

茜、そんなことないよ。

あっ、ボウガンしまって!

薫・・・不倫はとんでもない大罪よ・・・お姉ちゃんが楽にしてあげる。
わーっ!

茜が冗談で撃った矢は、遥か上空へと飛んで行った。

僕らはただただぼんやりと、矢がどこまで飛んでいくのかを眺めていた。

黄金色の麦畑の中で、ゆっくりと時間が流れる中で・・・


                            終わり

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登場人物紹介

薫。

少しおどおどした性格だが、実は芯の強さを内に秘めている。最近、ユーリィからのイタズラに困りながらも、内心で期待してしまっている自分も感じている。同時に、隣で見守っている茜のことも気になっており・・・?

茜、十六歳の美少女。

薫に手を出そうとするユーリィを戒めるのが自分の務めだと思っている。

薫に対しては「お姉ちゃん」と自称するが兄妹ではない。

ユーリィ。十五歳でロシア人とのハーフ。

ひたすら薫に抱きつき、なんとか自分のものにしようとしている。

勉強も体育も学年一位。

しかし同時に、この世界に大人がいないことに違和感も覚えている。

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