ラストボーイ2
文字数 3,077文字
ユーリィが薫に手を伸ばした瞬間、ガチャリという音がした。
茜はまたしても、ボウガンに矢をつがえていた。
最近、ユーリィと茜はすぐに喧嘩になっちゃうんだ。
資源や食料が少なくなってきているのも関係があるのかもしれないな。
授業が終わったら、狩りにいこうかな。
キンコンカーン。
この青春学園の鐘が鳴る。
キコキコと足を動かしながら、先生ロボがやってくる。
十人ほどのクラスメイトは、ほとんどが女子だ。
この教室には、僕とユーリィしか男がいない。
中には、トランスジェンダーで「見た目は男だが、中身は女」という子もいるが、この学園では当然その子は「女」として扱われる。
アンケートには月ごとにきちんと答えないといけない。他のクラスメイト達はざわついているようだ。
茜が「頑張ってね」と声をかけてくれるのを背中で聞きながら、僕は外に出た。
では聞きます。
この学園は、世間の常識が無い状態で、みんながどう思うか、どういう結論を出すか、そして男の子と女の子、どっちを好きになるかを調べるために作られたものです。
神の名において、全部正直に答えてね。
これは、僕が物心がついてから「アンケート」が始まって以来、いつも聞かれる質問だ。
先生ロボはニッコリと笑った。
ロボットにもちゃんと感情があるのかな? できればあって欲しいなと思えるような、そんな笑顔だった。
そして、僕らは教室に戻り、先生ロボZからの授業を受けた。
国語、数学に、社会に体育。
僕らはヘトヘトになりながらも、授業を終えて、夕暮れの陽ざしの入る教室でくつろいでいた。
勉強も体育も学年一のユーリィ、そして学年二位の茜は、僕と違ってまるで疲れていない様子だ。
やっぱり、あまり向いてないのかあって思うこともある。
自分は作家って仕事に”憧れ”ているだけで、実は中身が空っぽなんじゃないか、そんな風に思うこともあるんだ。
茜は僕の手をぎゅっと握りしめた。
僕は思わずドキリとする。
ユーリィが現れた途端、茜は無表情になりあからさまに不機嫌そうになった。
ここにボウガンが無くて良かった。
薫たちも、そろそろ気づいてるんじゃない?
なんで、この学園って「大人」が一人もいないの?ってこと。
そして、なんでここまでして先生ロボたちに全てを管理されてるのかってこと。
俺らは、狩りに出る時も、物凄く「禁止区域」が多いし、勝手に入ったら罰まで受けることになってる。
僕と茜は沈黙していた。
際どい問いかけへの沈黙とはすなわち肯定だった……