禁止区域1
文字数 2,147文字
僕たちは、授業の終わりに学園を抜け出してきた。
この学園は周囲一帯を白い壁で囲んでいる。
「外部から危険な者が入ってこないように」と言い聞かされているけど、まるで僕らを閉じ込めているみたいに感じる時もある。
けど、禁止区域を調べるといっても、侵入したら先生に連れ戻されちゃうんでしょ……?
第四時世界大戦では、危険な化学兵器がいっぱい使われて、今でも毒ガスが充満しているとか……
だから、あんな大きな壁で囲ってくれているんでしょう?
吊り橋の上で出会った男女は、お互いの心拍数の上昇を恋愛感情だと錯覚してしまうという……
ユーリィはゲイだから、男同士でもその効果があると思ったようだけど、そうはいかないわよ。
吊り橋効果なんて卑怯よ!
さあ、薫。お姉ちゃんと一緒に行きましょうね。
ギシギシリと軋む吊り橋。
さらに、夕暮れも近く、谷から風も強く吹いてきている。
高さ三十メートル。
分厚くそびえ立つ白亜の壁。
通称、守護壁……!
僕たちを外部の野蛮な人間や汚染された大気から守ってくれている、そう言い聞かされている。
いきなり、壁が消えた。
僕とユーリィと茜は、三人とも暗い壁の中に転がり込んでいた。
ウソばっかり!
けど、やったわ……!
まさか、守護壁に内部があったなんて……
それに、なんだかあちこちに人が住んでいるみたいな形跡があるわ!
ど、どうする? ほんとに進むの……?
これ以上は、本当に危険だわ……!
入るにしても、もっと準備が必要だと思う!
僕らは懐中電灯の明かりを元に、一歩ずつ踏み出していった。
中は薄暗いけど、椅子やテーブルがあって、確かに誰かが住んでたみたいな痕跡がある。
そして、広い部屋にたどり着いた瞬間だった。
けたたましい警報音が鳴り響いたのだった。
それは、機械の合成音声。
けれど、先生ロボのそれとは違う。
ただ命令通り、侵入者を駆除するための、血の通っていない恐ろしい声だった……