禁止区域2

文字数 2,369文字

下がって! 薫、ユーリィ!


主よ、お守りください!

茜は特殊ボウガンで、そのロボットを狙っている。

機械による合成音声は、今まで聞いたことのないような、石のような無機質さ。

それだけに恐ろしい。

いきなりの攻撃は危険だ!

警報を止めれば、あいつも止まるはず!

ー侵入者の駆除をしますー

ー子供たちの未来のためにー
ー明るい社会のためにー

ま、待って! みんな……確かに怖いけど……まだ敵だと決まったワケじゃないよ。
相変わらずのん気だな! 薫のそーいうとこ、超可愛くて超抱きしめたくなるけど、今はそんな場合じゃ……!
(こういう時こそ、よく考えるんだ……!)

ロボさん! 僕らは敵じゃないです! 勝手に入ってすいません!

ピクニックをしてたら、ドアが開いたもんだから……!

薫! そんな前に出て、危ないわっ!
ーーーーー

そのロボットはよく見ると、メイドのような恰好をしていた。

無表情だが、大人しく従順そうにも見える。

ロボさん、ごめんね。許して。

ー失礼しましたー

ー学園の子供たちだったのですねー

ーてっきり、壁の外からの侵入者かとー

ーもう、三十年この壁に出入りした者はいませんので、間違えてしまいましたー

ーどうぞ、学園生活にお戻りくださいー

メイドのようなロボは、そのまま去っていった。

良かった……

「子供の未来のために」って言ってたから、僕らの敵じゃあないと思ったんだ。

さっすが、俺の大好きな薫! 機転が利くなあ。

あわてんぼうで獰猛な茜がウッカリ撃ってたら、どうなってたことか。

何よ、大慌てしてたのはあなたもでしょう!


けど、薫のおかげで助かったわ……ありがとね。

私、もう少しボウガンの扱いに気をつけるわ。

まあまあ、無事でよかったじゃない!

警報も止まったし、これで探索できるね。

お、ここに電源があるぞ。これを押せば……
ユーリィが電源のスイッチを押した途端、周囲が一気に明るくなった。

……見ろよ。

このモニターの数……!


そこには、数十台のモニターが敷き詰められていた。

さらに、その学園は学園の内部を映し出しているようだった。

薫たちが団欒に使う校舎の屋上や、廊下など隅々までをつぶさに観察しているようだった。

私たち、監視されてたってこと!?

一体誰に!?

待てよ、茜。

あのロボが言ってたろ。三十年ぶりの侵入者だって……ここには三十年、誰もいなかったはずだ。

”俺たち”は監視されてなかったはずだぜ。

けど、じゃあ三十年前の生徒たちは、みんな監視されながら暮らしてたってこと……?

一体、どうしてそこまで……

ともかく、手分けして探索しようよ。

僕らは、ユーリィの言う通り、手分けして探索した。

本当に守護壁の中は広い。学園と同じくらいの広さなんじゃないか。

僕は警戒しながら奥へと歩いていく。


うん? なんだかファイルがあるぞ。

「LGBT計画の改善について……? 『……すでに破綻した計画をこれ以上実行するのは不可能であり、これからは子供たちを一人でも多く生存させることを目的とすべきである。いずれ、もう一度世界を復活させるために……!』……なんのことだろう?」




意味はまるで分からないが、何か恐ろしい計画だということは伝わる。

あ、薫!

あなたもここに? このファイルは何なのかしらね?

「LGBT計画」?

うん、なんだか意味は分からないけど。重要そうだよ。

って、茜。

ちょっとくっつきすぎだよ……


お姉ちゃんは、薫が心配だから。

決して、暗いとこが怖いワケじゃないのよ……

ほら、あなたも怖いでしょう? さあ、お姉ちゃんと一緒にいましょう。

怖がりなのは茜でしょ? もう、変わってないなあ。

(うっ、オッパイが背中に当たってる……)

ちょ、茜! 

どうしたの、そんな真っ赤になって……!

まさか、毒ガスの影響……!?

それに……

茜は僕の真正面に向かい、股間をマジマジと見る。

どうして、こんなに膨れ上がってるの?

まさか、この毒ガス……あなたの身と心を汚すような効果があるの!?

おお、主よ! 弟をお守りください!

ちょ、そんなとこ触らないで。

あ……ああっ、ダメっ!

あああっ!


ますます、膨らんでいるわ!

私が治してあげるからね!

茜のせいでしょ!

ああっ!

や、やめ……!


さっきまでシリアスな感じだったのに、なんで毎回こうなるの!?

いつも色情にかられてるのはどっちなのかな、茜……!

薫、俺のとこに来なさい。

僕はようやく茜から解放された。

やれやれ、今日はほんとに遅くなったし、また探索は明日にしよう。

そろそろ帰らないとね。

うん……そうだよね。みんなが心配してるだろうし。

それに、先生ロボにも怒られちゃうよね。

先生ロボか・・・どうだろうね。

もう、案外全部知られてるかもしれないね。

……そうね、確かに。
ええっ? どういうこと?

薫は機転も利くし、決断力もあるよ。間違いなく僕らのリーダーだ。

けど、もう少し観察力が必要かもしれないね……

さっきのメイドロボとのやり取りで、気づかなかったかい?

どういうことだろう。あの恐ろしいメイドロボと、先生ロボに何の関係があるんだ?

あのメイドロボのあまりに無機質な声色だから、私も最初は気づかなかった。

けれど、何度かやり取りしてる内に、分かったのよ。

あのメイドロボの「声そのもの」をよく思い出してみて。

あのメイドロボのあまりに無機質な声色だから、私も最初は気づかなかった。

けれど、何度かやり取りしてる内に、分かったのよ。

あのメイドロボの「声そのもの」をよく思い出してみて。

ど、どういうこと……


あっ! まさか……!

そう、あの恐ろしいメイドロボ……

先生ロボと全く同じ声だったんだ。

あの、いつも優しい先生ロボとね。

そ、そんな……! 

けれど、僕はそれが事実だと分かっていた。

ただ、認めたくなかっただけだった。

あの無機質に「侵入者を排除する」と繰り返していたメイドロボが、僕らを優しく見守ってくれる先生ロボと同じ声をだったなんて……

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登場人物紹介

薫。

少しおどおどした性格だが、実は芯の強さを内に秘めている。最近、ユーリィからのイタズラに困りながらも、内心で期待してしまっている自分も感じている。同時に、隣で見守っている茜のことも気になっており・・・?

茜、十六歳の美少女。

薫に手を出そうとするユーリィを戒めるのが自分の務めだと思っている。

薫に対しては「お姉ちゃん」と自称するが兄妹ではない。

ユーリィ。十五歳でロシア人とのハーフ。

ひたすら薫に抱きつき、なんとか自分のものにしようとしている。

勉強も体育も学年一位。

しかし同時に、この世界に大人がいないことに違和感も覚えている。

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