先生ロボの日常

文字数 1,351文字

はいはーい、体育の授業よ。

さあて、今日は近接格闘のレッスンね。

みんな、どこからでもかかってきなさい。

薫、あんたもたまには先生から一本取りなさいな。

無理だって!

先生は、柔道、空手、柔術、キックと全部極めてるんだから。

じゃあ・・・いかせてもらおうかな、先生。


さっすが、ユーリィ君!

じゃあ、お手柔らかにね、先生はレディなんだから。

すううううううっ

はああああああ・・・!

神の祝福を。

じゃあ、寸止めの寝技無しでいきましょうか。

はい、開始!

ほれ、ハイキック。

ほれ、中段回し蹴り。

はい、三日月蹴りに、ブラジリアンハイと。

す、スゴイ先生・・・!

あの早業で、全部寸止め・・・

ぐっ。

くそっ!

ほらほら、膝蹴り、鉤虎、王拳、水月!

さらに、左のボディブローに、左ミドル、右ロー!

くっ、このまま・・・

やられっかよ!

あっ、ジャンピングニー!?

寸止めよ、ユーリィ!

危ない、先生!
しかし、先生ロボは信じられない素早さで、ユーリィのジャンピングニーキック(飛び膝蹴り)を受け止め、さらに地面に押し倒して組み伏せた。

フウ、最後のは少しひやっとしたわ。

けど、ユーリィ君は素早いけど動きが少し単調かもね。

もう少し工夫を入れてもいいかもしれない。

先生相手じゃ、多少の工夫じゃ通用しないっしょ。

あーあ、少しは通用するかと思ったけどな。

はー、びっくりした。

けど、ユーリィもスゴイよ。先生相手にここまで粘るなんて!

他のクラスメイトたちも、

「先生ってやっぱりスゴイ!」

「けど、ユーリィくんもカッコいいなあ」

「やっぱり先生だよ! なんでもできて憧れちゃう!」

と褒めたたえている。

先生ってやっぱりスゴイのね。

ユーリィだって、クラスで一番強いのにさ。

私もあんな風になりたい。

主よ、導きたまえ。

よ、ようし・・・次は僕が行ってみるよ!

ユーリィほどじゃないにせよ、少しは強くなりたいし。

頑張ってね、薫!

その後、クラスメイトが次々に先生ロボに挑んでは返り討ちにされ、体育の授業は終わった。

僕らは水場で水を飲みながら、休憩していた。

トホホ・・・三秒も持たなかった・・・
無理もないって、先生はなんでもできるんだから!

けど・・・最近、思うんだよね。

なんで、俺らここまでして格闘を鍛えてるのかなって。

不思議じゃないか?

なんでって、先生は僕らを強くしようとしてくれてるワケで。

強くならないと、生き残れないよ」って、それが口癖だもん。

それが妙だっつうんだ。

ここは、みんないい子ばっかり。

暴力を振るうヤツなんか何処にもいない。

それなのに、俺らは体育のたびに格闘の修行・・・茜だってボウガンの使い方を教わっている。

それは。狩りに使うから・・・

けど、確かに妙といえば妙かもね。

私たち、体を鍛えたりしすぎてるのかもしれないし、別に入試試験なんてないのに授業の難易度も相当高いし。

きっと、禁止区域にその謎が隠されている・・・

そんな予感がするんだ・・・!

授業終わりに、行くぞ。

そうだね。

けど、きっと先生が僕らのためを思ってのことなんだよ。

先生の言う通りにしていれば間違いないよ!

僕らにとってのお母さんみたいな人なんだから!

きっと、そうよね!

余程の理由があるのよ。

先生の言うことには間違いはない。

先生は僕らみんなのことを思ってくれているんだ。


・・・あの日まで、僕らはみんなそう思っていたんだ。

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登場人物紹介

薫。

少しおどおどした性格だが、実は芯の強さを内に秘めている。最近、ユーリィからのイタズラに困りながらも、内心で期待してしまっている自分も感じている。同時に、隣で見守っている茜のことも気になっており・・・?

茜、十六歳の美少女。

薫に手を出そうとするユーリィを戒めるのが自分の務めだと思っている。

薫に対しては「お姉ちゃん」と自称するが兄妹ではない。

ユーリィ。十五歳でロシア人とのハーフ。

ひたすら薫に抱きつき、なんとか自分のものにしようとしている。

勉強も体育も学年一位。

しかし同時に、この世界に大人がいないことに違和感も覚えている。

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