叫び声

文字数 1,974文字

主よ、あなたは何故にそうまで残酷なのです。

主よ、あなたは何故にそうまで優しいのです。

主よ、あなたは何故にそうまで悲しいのです。

わざわざ声を出して教えてくれて嬉しいわ、茜ちゃん。

さあ、そんなボウガンは捨てなさい。

そんなものが当たらないことは知ってるでしょう?

ここは周りがガレキだらけ・・・

そんなもの当たらないわ。

茜ちゃんはとってもいい子。

一撃で楽にしてあげるわ。

・・・

先生、どうしてなのっ!

あなたに憧れていた! あなたを尊敬していた!

私だけじゃなく、みんなそうよ。

優しくて綺麗で、勉強も家事も炊事も全部できる・・・!

私は先生みたいになりたかったの!

私がキリスト教徒になったのも、先生の真似で始めただけなのよっ!

しょっちゅう、「神よ、神よ」って言ってる先生みたいになりたかった・・・!

ただ、それだけ! それなのに・・・!

まあ、そうだったの茜ちゃん。

先生、嬉しいわ。

けれど、やはりこの学園は強い子だけでいいの。

弱い子なんて、どうせすぐ死んじゃうのよ・・・

私の妹みたいにね

どれだけ愛してもどれだけ愛しても、結局弱ければ死んでしまう。

なら、いっそのこと私の手で楽にしてあげたいわ。

先生、まさか・・・あのメイドロボさんと?

さあ、おしゃべりはここまで。

授業は終わりよ・・・これから

・・・先生よ、ずいぶんと早合点だな?

先生ともあろうもんが、んなことでいいの?

そ、そうだよ! 先生、違うよ。誤解してるんだ!
あら、二人とも。

僕・・・ユーリィはに押し倒されて!

けど、ほんとは違うんだよ。あの時、茜のことを思い出していたんだ!

ええっ? 薫・・・
・・・あらら、先生のカン違いだった?

そっか、教えてくれてありがとう!

茜ちゃん、さっきはごめんね。

分かってくれたんだね!?

さあ、全部元通りでやり直そうよ!

僕が先生の分までみんなに謝ってあげる!

きっと、ずっと謝り続ければまたやり直せるよ!

ええそうね・・・

やり直しましょう。

さあ、ユーリィ君、こっちへ来なさい。

一撃で殺してあげるわ。

薫君はほんとにいい子ね。

先生、薫君が一番大事よ。これ、他の子にはナイショよ。


けど・・・どうして、先生を選んでくれなかったの?

先生、ほんとはずっと待ってたのに。

二百年前にそう言ってくれたでしょ!?

薫君・・・酷いわよ・・・!

さあ、邪魔もののユーリィ君には死んでもらいましょう。

そんな・・・先生・・・

どうして・・・?

僕たち、みんな先生を信じていたのに!

・・・フン、相変わらずモテモテだな薫よ。

さあ、下がっていろ!

お馬鹿さんね、ユーリィ君。

誰が貴方に体育を教えてきたの?

柔道と柔術は?

狩りを教えたのは誰?

ほらほら、隙アリ!

三日月蹴りにブラジリアンハイ、それから巴投げに踵落とし。

デラヒーバで足を折っちゃうぞお?

ぐはっ。

ぐぼっ!

や、やめて先生! ユーリィが死んじゃう!

ほらほら、チェーンパンチで眩暈を起こさせて、こめかみをざっくりカット!

さらに、水月と足関節と肘に打撃を入れて、行動不能にさせて、と。

金的もうっちゃおうかな?

オホホ。やーね、先生は金的なんて下品なことしないわよ。

ハアハア・・・いいか、薫。

下がってろよ。

すごーい、ユーリィくん。

少年漫画の主役みたい!

けど、残念! もう薫くんは君なんか好きにならないわよ。

さて、そろそろお終いにしましょうか。

ユーリィ君の最後の雄姿は百点!

けれど、もう無駄よ。

・・・ククク。

先生、なんか勘違いしてないか?

一対一で先生に勝てるかよ。

俺はな・・・何も無い状態にしたかったんだ。

・・・先生と茜の間にな。

・・・・

ぐ・・・

ぐむ・・・?

あらら? 胸から矢が・・・?

アハハ。

先生、矢で撃たれちゃった!

ぐ・・・ぐほっ・・・!

アハハ。

血が・・・

神よ・・・許したまえ・・・
先生・・・ごめんなさい・・・

・・・気にしないで、茜ちゃん!

自分で決断できる、ほんとにいい子に育ったわね・・・!

先生は嬉しいわ。

おお、よしよし。

う・・・うううっ。

止めてよ、先生!

優しくしないで。

大変だ!

ち、治療しないと。

先生・・・先生えっ!

うわああああ!

薫くんはいつでも優しく、みんなを気遣えるいい子。

・・・・先生、最後は少し手加減してたか?

本気だったら瞬殺だったろ?

まさか! ユーリィ君が強くなったのよ! なんでもできる学園一の優等生・・・

先生、こんないい子たちの世話ができただけで十分だわ。

さあ、お別れの時間ね。

先生は宝物、いっぱいもらったわ・・・

学園の未来は大丈夫よね?

私の学園を、みんなで守っていってね・・・

私はあの日・・・狂ってしまった・・・

みんなを守るために・・・

子供たちのために・・・

そのはずが・・・

いつの日か・・・暴力や差別の無い理想の世界に・・・
みんなが健康で元気に暮らせる理想の日を・・・

せ、先生・・・!

先生! うわあああ!

うわああああん!

先生ー!

・・・・

・・・機能停止します

じゃあね、みんな。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

薫。

少しおどおどした性格だが、実は芯の強さを内に秘めている。最近、ユーリィからのイタズラに困りながらも、内心で期待してしまっている自分も感じている。同時に、隣で見守っている茜のことも気になっており・・・?

茜、十六歳の美少女。

薫に手を出そうとするユーリィを戒めるのが自分の務めだと思っている。

薫に対しては「お姉ちゃん」と自称するが兄妹ではない。

ユーリィ。十五歳でロシア人とのハーフ。

ひたすら薫に抱きつき、なんとか自分のものにしようとしている。

勉強も体育も学年一位。

しかし同時に、この世界に大人がいないことに違和感も覚えている。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色