ラストボーイ

文字数 1,137文字

チュンチチチ、という小鳥の鳴き声と共に、僕は日差しの温もりを感じて起きた。

殺風景な部屋に、殺風景な白い天井。

三人暮らしの日常がまた始まるんだ。

うーん、ふわわわ。

気持ちのいい朝!

今日もガンバロー。

うん? なんだか胸が重たい。

というより、何かが乗っかってる。


僕は、自分の胸を鷲掴みにしている白くて細い手を握ってどけた。

こーら、ユーリィ!


うーん、ムニャムニャ。もう、薫のことこれ以上食べれない・・・
けど、もっと食べたい。ムニャムニャ

そんな寝言があるはずないでしょーっ。

もう、いっつもいっつも・・・

僕は少し下がって、左手を後ろにつく。

もう、ユーリィはいつもこうなんだから・・・

ムニュリ。

そこには、とんでもなく柔らかい感触があった。

うわわっ。

茜! ごめん・・・その・・・

ふわーあ。

おはよ、薫。いいのよ、薫だったら・・・お姉ちゃん、逆にちょっと嬉しいかな。

薫も、こういうのが気になる年ごろになったのねって、お姉ちゃんは少し感慨深いわ。

ま、ユーリィだったら”特殊ボウガン”で射殺してるところだけどね。

こ、怖いから! 茜!

失礼だなあ、茜。

俺、オトコにしかキョーミないし。

つまり、この学園では薫にしかキョーミないんだよ。

ねー、薫?

わわっ、どこを触ってるの!?

だ、ダメだよっ。

だ、ダメっ。

ユーリィ!

ガチャリ・・・。

茜は羆を退治するための大型ボウガンに矢をつがえた。

フフっ、そんなに死にたかったのね、ユーリィ。

いいわ、動かないでね。一発で楽に・・・!

目の前で、薫の体をこんなに汚されて・・・黙っていることなんてできないわ。

じゃあね、ユーリィ。

貴方と過ごした十五年……割と楽しかったわ。

微笑してて、ほんとに怖いから!

茜! 落ち着いて!

僕は平気だから!

茜はすうと微笑を消して、僕に向き直った。

平気って……どういうこと?

こんなに汚されても平気なんて……まさか、もう色情魔のユーリィにすっかり汚染されてるの?

身も心も……?

そういえば、あまりイヤがってないみたいね。

むしろ……

え、ええっ?

茜!?

茜は、僕の股間を凝視する。

むしろ、喜んでいるみたいね。

薫がここまで色欲に汚染されていたなんて……

お姉ちゃんが責任を取るしかないわ。

さあ、二人とも楽にしてあげる。そして、お姉ちゃんは自分で自分の頭に打ち込んで、全てを終わりにするわ。

茜!

これは、オトコの生理現象だって!

微笑が消えてて怖いから!

茜! 落ち着いて!

俺と薫との北方領土問題の溝にように深い関係が分かってくれた?

ユーリィも変な例えしてないで!

茜を止めないと!


じゃあね、二人とも……

十五年間、楽しかったわ。

来世でも一つ屋根の下で暮らしましょう。

うわーっ!

引き金は引かれた。

矢は発射され、壁に突き刺さった。


それは、気持ちのいい日差しが窓辺を照らし出す朝だった。

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登場人物紹介

薫。

少しおどおどした性格だが、実は芯の強さを内に秘めている。最近、ユーリィからのイタズラに困りながらも、内心で期待してしまっている自分も感じている。同時に、隣で見守っている茜のことも気になっており・・・?

茜、十六歳の美少女。

薫に手を出そうとするユーリィを戒めるのが自分の務めだと思っている。

薫に対しては「お姉ちゃん」と自称するが兄妹ではない。

ユーリィ。十五歳でロシア人とのハーフ。

ひたすら薫に抱きつき、なんとか自分のものにしようとしている。

勉強も体育も学年一位。

しかし同時に、この世界に大人がいないことに違和感も覚えている。

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