灰色の木漏れ日

文字数 1,929文字

主よ、彷徨える子羊は何度あなたに見限られようとも、付き従うことを諦めることはありません。

それは、暗く深い灰色の木漏れ日の中のことでした。

私たちは、自分が灰色の闇の中でもがいていることを知ったのです。

子共よ、そのボウガンをしまうのですー

もう、放っておいて! これから、先生と刺し違えるのよ・・!

もう、私には何も残ってないわ!

全部、失った!

後はみんなのために、先生を殺すわ・・・!

そんな年齢で、何を失ったというのですか?-

仮に失っても、必ず取り戻せるはずですー

もう、放っておいて! 何よ、ロボットのくせに!

そう、ロボット・・・しょせん、私も姉さんもただのロボットー

もう、愛し合うことさえできないロボットなのですー

え? ・・・どういうこと?

私と姉さんは、実の姉妹同士で愛し合っていたのですー

レズビアンでさえ差別される社会ーまして、私と姉が結ばれるはずもありませんでしたー


悲観した私は自殺。その後、姉も世を儚んで毒を飲みました。まるでロミオとジュリエットですね。

しかし、私たちは戯曲と違い、どちらも生き返ることはなかったー

そういう中で、私たちの母親はこう思ったのですー

全ての恋愛が認められる理想の学園を作ろうとー

それが・・・この学園・・・

しかし、姉のプログラムは狂ってしまったー

子供よ、あなたにはまだ役割があるー

失ったと思っても、実は何も失っていないのかもしれない

さあ、礼拝堂で隠れていなさいー

姉さんは私が止めますー

メイドロボさん・・・
さあ、行きなさいー

分かったわ・・・私も最後まであがいてみる。

あなたも死なないでね・・・

あの広い礼拝堂に隠れれば、少しは時間も稼げるー

しかし、私は姉さんには勝てないー

私たちは姉妹ロボ、性能がまるで違うー


・・・神よ、守り給えー

一方、僕たちは必死で守護壁へと向かっていた。

けれど、茜の姿はまるで見えない。

くそっ、茜は足が一番速いんだ。

先生も普段はのんびりしてるのに、本当に速い・・・!

はあはあ、茜・・・茜ー!
僕たちが走っている頃、先生は守護壁に到着していた。

シスター、百五十年ぶりかしら?

元気そうで良かったわ。

姉さんもお変わりなくー

百五十年間、一度も会いに来てくれずー

久しぶりに会えてよかったー

私は、大切な子供の世話で忙しいもの。

けど、よく役割を果たしてくれていたのね。

こんな楽園、外の人間に知られれば大変だわ。

城壁の外の死体は全部、貴方がやったのね?

はい、姉さんの言いつけ通りー

全ての外敵を始末してきましたー

あの日、姉さんが出した命令の通りー

言いつけを守ってくれて嬉しいわ、シスター。

さあ、どきなさい。

邪魔になった茜ちゃんを処分しなければ。

姉さん、まだ分からないのでは?

私の見立てでは、薫が茜を選んでいる可能性は92%・・・

あなたなんかに何が分かるの?

子供の世話は全部私が見ているのよ・・・!

さあ、どきなさい。

姉さんはあの日、こう言いました。

子供たちをおびやかす敵を全て駆除しろ、とー

その通りよ・・・

どうしたの?

その構えは何のつもり?

駆除モードに移行。

これより、敵を駆除しますー

・・・・

・・・・本当に、いつもいつも私の足を引っ張るのね!

私との差が分からないの!? このポンコツの妹!

いいでしょう。

どちらが姉かを思い出させてあげるわ。

メイドロボは右腕をドリル状に回しながら、先生ロボの周りを旋回した。

しかし、それは一方的な戦いだった。

元々の性能の差は明らかであり、メイドロボが一撃入れる間に、先生ロボは五発の打撃を打ち込んでいた。


やがて、メイドロボは自分の足が動かなくなっていることを知り、横たわった。

システム、86%破損・・・

ブブブ・・・ガガガ・・・修復不能

修復不能・・・

手こずらせるわね。足を少し痛めてしまったわ・・・

本当にいつもいつも足手まとい!

・・・私、今は幸せですー

ガガガガ

フン、完全にぶっ壊れたの?

いいでしょう、頭を踏みつぶして終わりにしてあげる・・・!

・・・また、大好きな姉さんに会えた

私はそれで充分・・・ガガガ・・・

姉さん、もう二度と悲観しないでー

私の姉さんへの想いは永遠に消えることはないからー

私は平気だからー

私は何も失っていないー

必死に生きようと頑張る子供たちを見て、そのことが分かったからー

・・・うるさいのよ、黙りなさいこのポンコツ

あなたを見ているとイライラする。このっ、踏みつぶしてやる!

システム100%破損・・・

ガガガ・・・ガガ・・・

フウ、ようやく動かなくなった・・・

本当にいつも私につきまとって、うざったい妹!

・・・あら、どうしたのかしら?

眼から水がこぼれるわね。

さっきの戦闘で少し破損したのかしら・・・?

いけないわね。これから、大事な仕事が残ってるのに。

さあ、茜ちゃん。

先生すぐに行くから待っててね。

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登場人物紹介

薫。

少しおどおどした性格だが、実は芯の強さを内に秘めている。最近、ユーリィからのイタズラに困りながらも、内心で期待してしまっている自分も感じている。同時に、隣で見守っている茜のことも気になっており・・・?

茜、十六歳の美少女。

薫に手を出そうとするユーリィを戒めるのが自分の務めだと思っている。

薫に対しては「お姉ちゃん」と自称するが兄妹ではない。

ユーリィ。十五歳でロシア人とのハーフ。

ひたすら薫に抱きつき、なんとか自分のものにしようとしている。

勉強も体育も学年一位。

しかし同時に、この世界に大人がいないことに違和感も覚えている。

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