10.Erre.001
文字数 1,545文字
ならばここは私の記憶データを解析出来ただけの表面的部分のみで作られた幻覚の様な場所なのだ
ここはどこだ私は誰だ、そんな泡沫に消えゆくトラウマが破裂するような嫌な記憶がこびり付く
今日も誰かを処刑しよう、頭痛の原因の静寂を喧騒で上書きするために
首なしの体とその体を動かしていたであろう首が上下左右に浮遊として三次元的に散らばる場所
まるで出来損ないのスプラッター映画の様な場所だ、というのが私が一目見た後に口から出た感想だった。
私の眼からの常時あふれ出ながら地面に急襲されるであろう血涙も液体となることは無く
規則的なリズムで球体になりながら宮中に浮遊しバラバラにされた誰かの死体に付着し霧散する。
「鳴るほどと言いながら手を叩きたい程にここは不思議な国らしい場所ですねぇ、イカレていやがる。」
白と黒に交互に支配された、まるで牢獄で着られるようなストライプ柄のゴスロリ服を着流しながら
眼からあふれ出る血涙の様な記憶情報液を空に見ながら城への唯一の出入り口であろう大扉の前まで歩く。
恐らく遠くからではあの装飾データであろう死体は見えない様に設定を編集されてたのであろう
それとも個人個人で城に対する思い出を読み出した幻覚の様なテクスチャが施されているのだろうか?
だからショウジ殿はイギリスの古城や不思議の国のアリス時空に実在するハートの王城と例えたのか?
「忌々しいエリザベートとハートの王女め、私の記憶を塗り超えて私を私私私わたしわたししいしし」
ガゴンと音を立てながら5mは有ったであろう鋼鉄にデザインされた大扉を【消滅】させ城内へ進入する。
迷う事をそもそも理解していないと例えれる程に精密な正しい歩き方にて廊下を闊歩しながら
私は生物がやるマーキングの様に血涙を顔ごと壁に頭突きの様に押し付けると血涙や唾液の様なモノは
壁にシミと成る事もなく壁の内側へと溶け出していき、現象証拠も無くなった時には私の脳内に
城の間取りから何処に敵が隠れているのかすら手に取る様に理解した
。
「あらよっと」
胴体部分に手を突っ込み内側から長方四角形にコーティングされた外文明交信局配布武装を取り出す
。
本来の人型からでは想像もつかない様な狂った方法で取り出されたが気にしてはいけないのだろう。
瞬時に斜め上方向から撫でる様に真上に向けて過充電発射した結果だろうか。
半径1mはあったであろう光の線で焼き切れた天井の先にあった筈の屋根と二階三階部分の場所から
右腕や左半身が溶けだしているトランプ兵が数体程落下してきたのを横目に笑顔を浮かべていた。
黒くある筈の色が赤熱化によりあたたかなオレンジ色になってはいるがこれも気にしてはいけない。
ちなみに今さっき使用したのはエリザベートベーカリーの物ではなく体を共有している誰かの物だ
。
これも気にしてはいけないし、そもそも私は自身の体以外の武装を持たない、共有身体サマサマである
。
「私の細胞の情報分析分解を知らなかったのが黒幕のツケ…ふわぁ…あふん。」
ぐぅ、と私の脳内が眠気に支配されると同時にハートの王城も緩やかに溶け出した
。
「分析と共にハートの王城に対してのハッキング、自壊しろという命令を発信し黒幕に気取られる前に
コピー&ペーストされたハートの兵士ごとビームで撫で溶かしにできればよかったが…
上手くはいかないものだな…眠し…寝ますし…おやすみなさいぃ…」
すやぁ、という文字を口から外に出しながら、エリザベートベーカリーの動作はスリープモードに入る。
私が起きる頃には全てが終わってるくらいで頼みたいものだ、働きたくないでござるという声を添えて。