5.Ykre.002

文字数 1,654文字

いやいや、高度文明人の悪いところが出てしまいました。

いきなり船内に転移するのは状況が把握しづらいので避けたのですが、裏目に出てしまったようですね。

ところで皆さん、人間が生身で宇宙でに出るとどうなるかご存知ですか?

人間が宇宙に出ると...

~♪

「お出迎えありがとうございます。オーンさん。」

「ユキ様、この度は要請を受けてくださりありがとうございます。早速ですが、支部にご案内します。」


遠目でははっきり視認できなかったが、オーンの姿は上半身こそ地球の人間に近いが下半身は蜘蛛のようなシルエットの4脚式だ。事前にもらった資料通りこれがシークスのオーソドックスな文明人の姿だ。

元々は地球人と同じ2本脚だったが、補助外骨格として腰からやや後ろに伸びる2本脚のウェアラブルデバイスが開発された。その後、サイバネティック技術の向上で自由な身体を手に入れてからは元から追加の脚を組み込んだ現在のスタイルが主流になっている。居住地を電子世界に移してからもこの姿を基礎としている住民は多い。


船内の暗い廊下を進んでいく。人間にとっては不安を煽るほどの暗さだが2人は全く気にする様子はない。やはり人とは違うのだ。


「ところでオーンさん、」

「はい?」


ドスッ


「ぅ、ぇえ? ユキ...様..??」


ユキの左側で浮遊しているビットの先端がオーンの胸を貫いていた。

本来そういう使い道ができるほど先端は研ぎ澄まされてはいないが、強引に押し切って傷口は不格好に破れている。


「事前に名簿はもらってる。たしかにシークス支部にオーン局員は存在する。

 でも君は私をどこに案内しようとしているんだ?交信局の支部基地は船団から遥か離れたところにある。」


先程までの澄まし顔が歪みオーンの態度が豹変する。

「な、ぜ...ここにお前が..あぁ!!」


「制限式転移術式のことは知らなかったようだな。我々は一つの身体を共有しているんだ。私がいないと思って油断したな。通信回路を借してもらおうか。」


ビットからコードが伸び、オーンの体内に入っていく。さらに後ろの術式灋陣も複雑に展開しアナウンスが流れる。

『文永局のアーカイブにアクセス。クラス導師ではその領域にアクセスできません。』

「そう固いこと言わずにさぁ...」

ユキが灋陣に向かって義手の左手をかざすとアナウンスにノイズが入りスローダウンした音声になっていく

『あぁくぅうsすえぇぇぇすう...ぅぅ..ジリッ クラス荘重導師承認しました。常夜術式の使用を許可します。周辺領域の影響に注意してください。尚、制御を失う場合は花薗送りとなります。』

「言語基体を一時取得。」

『常夜詩のエントリープログラムをインストールします。自我へのダメージに当方は一切の責任を負いません。』

「...相変わらず吐きそうな認識系統だ。 聞こえルか?しばraく見n愛うちにzうい分と姑息な真似をするようになzzたな。いい加減子離れしtarあどうだ?◆Ы¶Пサmあ??」


ノイズ交じりの声で詩のような言語を口にするとオーンの上半身が砕け散り、残った下半身は力なく宙を浮かぶ。

「禁術まで使って挨拶したお返しがこれとは、全く不愛想な。」

術式を解除したユキは交信局の暗号回線を開く。


『ジジッ...ユキか。もう来ていたんだな。』

「ウアンさん、すぐにそっちに行きますが今すぐ伝えなければならないことが。」

『どうした?』

「やはりシークス支部の中に内通者がいます。先程奴らの鼠を一匹仕留めましたが、そちらのオーン局員に変装していました。」

『ふん、予測通りだな。変装ということは義体データを持ち出したということだ。足跡を探ってみる。』

「えぇ、くれぐれもお気をつけて。」

『お前もな。』


内通者の可能性を聞かされていたユキは連れてきた局員たちに詳細な資料を敢えて渡さずに行動に隙を作った。

今回は上手くそれにはまってくれたが、この手はもう通じないだろう。それに仕留めたのはただの操り人形。奴ら、妨礙者の本体ではない。


すでに闘いは始まっている。ユキは外文明交信局 シークス支部へ転移した。

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登場人物紹介

【頭取外交官ユキ】Twitter

高次元精神生命体文明ESから派遣された外交官。



出身地であるESはあるゆる資源を必要とせず自由な生命活動を営むことができる完成された理想郷。

しかしながら、さらなる上位概念への探究は未だ継続されており、観測し得る全ての叡智を収集している。



自分たちとは別の出自を持つ外文明には強い関心を持っており、中枢機構の一つである外文明交信局を通して交流、保全、統合を行っている。

種の多様性を担保するため、外文明に対しては上位存在に依拠しない独自の発展を求めている。そのため進化を推奨しながらもテクノロジーを提供しないという回りくどい活動を行っている。




基底現実完全降下航行のライセンス所持者であり、その技術を用いて地球へ現界。外文明交信局地球支部を立ち上げ現在に至る。

電脳世界及び基底現実で使用している身体は自身が個人的に契約している千亥重工によって造られている。

地球では上位者として知られているが、出身地であるESにおいては平均的な一般住民に過ぎない。

【情報屋 銀翁玉-ギンオウギョク-】Twitter

エルフの森 静岡支部から出向しているエルフの情報屋。


外分明交信局の外交官ユキと契約を交わしており、現地情報、民衆の状態、外貨変動、予測される災害等を調査、伝達をする代わりにESに存在する叡智を借り受けている雇われ現地員。

【電脳交換手 祥示-ショウジ-】Twitter

地球人の女性と変わらない姿の少女と、その背後に控える御影鴉、そして御影鴉の下部球体内に収まった人形という姿。
一見、少女が主人で、御影鴉が従者であるような連想をしがちだが、実際にはそのどちらも主従で言えば従の立場のものである。


御影鴉の下部に収まっている機械人形のような物体が本体で、通常はスリープ状態にあり精神と知能のみが情報処理と演算に特化した状態にある。

少女──『アーミリィ』はコミュニケーションデバイスであり、必要に応じて外見通りの快活な『ロールプレイ』を出力する。

御影鴉は戦闘用義体として機能する。

状況によってはアーミリィのみを場に出し、御影鴉は本体ともども異相空間内に隠蔽することも可能。
逆に対話で処理できる状況になしとなればアーミリィを引っ込めて御影鴉のみとなることもできるが、この場合は本体は隠れない。


アーミリィのコミュニケーションは『快活』『軽薄』『能天気』『無責任』といった属性のものだが、本来の性格は内向的で慎重。

【エリザベートベーカリー】Twitter



生誕場所不明、年齢不明、身長体重不明、無機物か有機物かも不明という
種族から生誕に至るまでの経緯が全て不明の生きたブラックボックスという異端の生物。基本的な姿は人型だが彼女の本体は彼を形成している大量の四方体のキューブである。



本人が語る自称とも言うべき人生は全てが偉人や奇人の伝記の一部を移植され作られており、
およそ9割9分9厘が悪い意味の適当と嘘で作り上げられた偽の記憶を発言しているに過ぎない

帽子から生える触手に絶えず流れる赤い流動体は彼女、あるいは彼の周りを絶えず浮かび上がり続けているが
「接触しても特に危害はないよ?単なる私の血液さ」
と彼か彼女は語るが、外交官ユキに接触した際には彼女に数億回のハッキングが行われたという記録が残っており、
あの不明生命体の正体は特秘された情報を明らかにするという目的で作られた情報生命体ではないかと予測されている


『ありとあらゆる情報は全ての人間が知るべきである、隠す情報とはつまりそれだけで悪なのだ』


彼女が語る1厘の正しい記録情報より抜粋

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