19.Neopolteria Nidus:re.005
文字数 2,130文字
私は"偽の情報を出して炙りだす"という事を言った筈なんだけども……?
……まぁ、いい。
しかしこれはこれは……全くもって『私』向きだ
と、いうか最近は祥示から切り替わる事多いような気もする。
……気にしてはいけないのだろうか?
「どうも、白き涅槃のブランシェさん?」
「ブランシェで結構ですよ。えーと……地球支部の銀翁玉さんでよろしかったでしょうか?」
「如何にも。えぇ、その通りですとも…」
挨拶を交わしお互いに一礼をする。
成程、礼の仕方を見るに騎士の類に近い礼をするところを見るに中々"いい教育"を受けているようだ。
「しかし…随分とまた面白い恰好をなされているのですね?」
ブランシェが訝しむように言う。
私の今の恰好はいつもの……"機能の半分が死んでいて戦闘術式が使えない服"をしているからだ。
「お気に入りでね。壊れていてもずっと着ていたいのさ」
戯けるように答え、画面を空中に展開しブランシェに見せる。
「さて、これがピオス、ハビィ君達二人の座標と私とブランシェ君の座標だ。何か気付く事はあるかな?」
「座標が全く同じですね……ですが、お二人の姿はどこにもない…」
「その通り。ウアン頭取、そちらでも座標は"同じ位置"にありますね?」
「ああ。こちらも"同じ座標"を示している。」
二人の座標は達と同じ座標。だが姿は確認できずに何もない。
確かに不思議だ。そう、だからこそある疑問点が浮かび上がる。
「ウアン頭取。その"座標"は何次元、何階層で表示されていますか?」
「生憎だが3次元までしか……そういう事か」
何かに気付いたのかウアン頭取はコンソールを操作し座標の取得をし直す。
一方ブランシェは首らしきものを傾考えている。
「これを見れば分かるかと」
そういい私は別の画面を展開する。
3次元平行の座標にもう一つ座標を示す数値がくわえられており、それには銀翁玉、白き涅槃のブランシェには1、ピオス、ハビィには10という数字がいれられている。
「……この1と10という数字は?」
余計分からなくなったのかブランシェが数字の意味を確認する。
「この座標データは「瞼楽」(ケンラク)で観測し表示していてね?それでこの1と10というのは階層の数値なんだ」
ーーーーーーーーー階層
次元の中にある層であり、その層は数多に渡り存在している。
簡単に言うなら次元というワールドの中にあるテクスチャー数と言えばいいだろうか?
数値が多くなればなるほどそれは今いる階層からは観測が難しくなり干渉もできなくなっていく。
神話の時代や創作……風車の騎士等が有名だろうか?等は無意識にその階層を覗き干渉を行えていたそうだが……閑話休題
つまりピオス、ハビィの二人は第10階層に存在しており第1層にいる自分とブランシェには観測、干渉はできないという事だ。
「階層とはまた面倒なものを持ち出してきたものだ。で、どうするのだね?」
ウアン頭取が此方に解決策はどうするんだと投げかける。
……分かっていて言ってる感がありありと聞き取れるようなトーンでしゃべりやがるなこの頭取……
「分かっていていってますよね?階層なんてものは分かってしまえば……この通りっと」
世亙をピアッシングモードに切り替え階層に穴を空ける。
空間に穴が開きそこにはピオス、ハビィの二人が倒れているのが見て取れた。
「ブランシェさん、ひっぱ……へぇ、背中に剣を向けるとはまたまた……」
「事情が変わりました。アナタにはここで消えて頂きます。」
「わざわざ宣言してくれるとは有り難いねぇ。……嘗めるなっ!?」
背中に向けられているサーベルに意識と顔を向けていたのが悪かったのか空けられた空間から腕が伸び押し出され背中にサーベルが刺さる。
顔を正面に向けると倒れていた筈の二人は立ち上がっておりピオスの腕が空けた空間から出て自分を押し出していた。
「おや……おやおやおや…しくじったかねぇ…」
口から血を吐きながら後悔するがもう遅い。
ブランシェはそのまま背中を蹴りながらサーベルを引き抜き銀翁玉を地面に倒す。
地面に倒れたまま動かなくなった銀翁玉は姿がぶれて消え、真っ白の義体が現れる。
「所詮は人か。こんなのに『女王』がやられるとは…慢心しすぎだろう」
そういいブランシェは血の付いたサーベルを一振りし払い落とす。
そのままサーベルを戻し二人を回収しようと手を伸ばした。
「義体を壊さないとは慢心が過ぎるんじゃあないかね?……いや、そも寄生されていればそんなものか」
「!?」
義体がノイズに塗れ消失しそこに死んだ筈の銀翁玉が"クレリック改造服を着た状態"で現れる。
「偽装術式!?いつから…!」
「"初めから"だよ阿呆。そもそも、だ。なんで私の名前、姿、装備を知っていたんだろうねぇ?」
ブランシェの顔(?)が赤く染まる。
しくじったからなのかは知らないが知りたくもないので別にいいだろう。
「さて……次元移行封鎖、空間固定、時間凍結。逃げ場はないぞ?」
DAEMONが自動起動し戦闘状態へ移行。そのまま13機の現亙と世亙を召喚し全ての次元、空間、時間を隔離し逃げ場を消す。
お膳立てはした。次の局員が評決してくれるだろう。