花言葉ものがたり
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文字数 468文字
tukinoniwa
挿絵はイラストACさんよりトムセン少佐さんのイラストに、フォトショップで加工して使わせていただいております。
二月は暖かだったのに、三月になったとたんに寒い日が続いた。
「……雪」
玄関のドアを開けたとたんに流れ込んだ冷たい空気に驚く。
「ゆき」
六歳の娘が、私の真似をして外をのぞく。
「春来ないねえ」
娘の声に落胆の色が滲んだ。
春が来たら小学生ね、と言い聞かせているから、早く春が来ないかと楽しみにしているのだ。
このところ私はもっぱら娘の『学校ごっこ』の先生を役をやらされている。
「はるちゃん、匂いをかいでごらん? 春の匂いがするよ」
空気は冷たくても、三月の雪はやっぱり真冬の雪とは違う匂いがするように私は感じる。
「ね?」
と言ったが、鼻をうごめかす娘は、怪訝な顔をしている。
けれども「あ!」と声をあげると、娘は目を輝かせた。
「お花!」
彼女の指の先、うすく積もった雪の下から、黄色い福寿草が顔を出していた。
春が、始まる。
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