ラベンダー

文字数 1,311文字

第二話はラベンダーです。

……花言葉は『沈黙・静寂』『期待』『疑惑』『献身的な愛』など、様々です。

お話はもちろん、素敵なイラストや写真の投稿もどうぞ。

2020/04/25 09:05

「ラベンダー」


 母から引き継いだ庭は、あなたが好きだと言ったラベンダーの畑にしてしまった。


「好きなだけもって帰ってね。今年は紀子さんと三千ちゃんは来ないのね」

「三千が受験だから、ラベンダー摘みはあなた一人で行ってきて、だとさ」

「そう、残念だわ……。泊まっていけるんでしょう?」

「ああ、明日、親父とお袋の墓参りもしようと思ってる」


 板張りの入縁側から、紫にけぶる庭を、二人並んで眺める。


「おまえ、もう嫁に行くつもりはないのか?」

「やだわ、もうおばさんよ。それに……」


 おかしなものね、あなたを想って植えたのに、いつの間にか私が囚われてしまっている。


 ときどき此処から助け出してくれる王子様を夢見たりするけれど、きっと私はまたこの庭に戻ってくるんだわ。


「ねえ、兄さん……」

2020/04/25 09:15
こんにちは!

素敵なコラボなので参加させていただきます。

↑の作品ですが、決して結ばれることのない愛を献身的に捧げてる主人公に胸が締め付けられました(T_T)

素敵です!

ラベンダーは好きな花なのですが、こんな花言葉があるなんて知らず……益々好きになりました。

2020/04/30 15:29

 久々に訪れた君の部屋は、ラベンダーの香りで満たされていた。


「どうしたの? この香り」


 僕が尋ねると君は照れたように伏し目になって、


「彼氏がくれたの。これ……」


 と、机の片隅に置かれた何やら細い棒が沢山刺さった瓶を指差した。


「アロマの、リードディフューザーって言うんだって」


 ラベンダーの香りが君にぴったりって言われたんだって微笑む君を見て、


「あっそう」


 僕は素っ気なくあしらってしまった。暫しの沈黙が部屋に充満していく。君に彼氏ができたなんて知らなかった。君がそんな表情をするだなんて、僕は知らなかった。


 僕は幼馴染みの君が、音楽を好きになったから、楽しそうにギターを弾いていたから、君を誘ってバンドをはじめた。君と同じ時を沢山過ごしたかったから。


 でも君は、僕の知らない世界を見つけて僕を置いていってしまうんだね。君の部屋で作ったその日の曲は、ラベンダーの香りが染み付いた、他人事の曲に思えて、好きにはなれない。

2020/04/30 15:43
里見さん、ご参加ありがとうございます。

青春のほろ苦さを感じる、素敵な作品ですね。

曲にラベンダーの香りが染み付くという表現が、新鮮でした。

ラベンダーの香りと色が、背伸びをしようとする少年少女の姿を彷彿とさせてくれると思います。

2020/05/01 08:52
2020/08/20 13:27

hagioS

こんにちは。「花言葉物語」いろんなお花を楽しませていただき、ありがとうございます!

ラベンダーだけイラストも写真もまだのようでしたので、おそるおそる参加させて頂きました。

2020/08/20 13:35
hagioSさん、ありがとうございます。

ラベンダーのお部屋が華やぎました。

にけさんから頂いたお題で私が小説を書き、hagioSさんがイラストを書いてくださる。

なんて贅沢なんだと、嬉しくなりました。

ラベンダーはいろいろなイラストや写真がたくさんありすぎて、迷った末投稿してなかったような気がします。こんな素敵なイラストをいただけるなんて、幸せです!

2020/08/21 08:10

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