花言葉ものがたり
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文字数 1,298文字
tukinoniwa
花言葉は「栄光」「勝利」「不滅」「永遠」「青春のよろこび」「甘美な思い出」などなど。
どれを選ぶかで、いろいろなお話ができそうです。
「沈丁花」※わずかにBL風味です。苦手な方はご注意ください。
公園に隣接する小さな神社は、沈丁花の匂い。
「まさか泣くとは……」
俺はグズグズと鼻を鳴らすあいつの手を引いて、ベンチに腰を下ろす。
「うるさい! 急すぎだろ! 引っ越すとか。しかも四国? どんだけ遠いんだよ。旅行でも行ったことないぞ!」
「俺だって驚いてるよ。まさか母ちゃんが再婚するなんてさ」
東北の冬は寒いけど、四国は温かいかな? なんて言ったら「バカ!」と一喝された。
「なあ、おまえ勉強がんばれよ」
そう言うと、涙を引っ込めてキョトンとした顔でこちらを見る。
「おまえ俺よりバカじゃんか。同じ大学に行こうぜ? そしたらさ、ルームシェアとかいうやつしねえ?」
たった四年後だよ。
みるみる赤くなるアイツの頭を抱きしめたら、腕の中から涙混じりの「うん」が聞こえた。
satomi333
外回り、次の営業先に向かう途中で沈丁花の薫りが私の足を引き留めた。花を探すとそれはすぐ目の前、高校の校庭の隅っこにあった。フェンス越しでそれは少し寂しげに小さな花を咲かせている。いや、寂しいのはきっと私の方なのだろうか。
校庭では野球部が練習試合をしているようだった。カーンと気持ちのよい音が響き、青空に白いボールがポッカリ浮かんだ。
私に浮かんだのは高3の春の思い出。さほど強くないはずのうちの野球部が、21世紀枠とやらで春の選抜に選ばれた時のこと。
憧れの甲子園球場で1勝を――仲間と共に毎日のように通ったグラウンドには、片隅で沈丁花の花が咲いていた。
大会は第一試合で勝利して、肩を抱いて仲間達と奇跡が起きたと喜び合った。そして点差の開いた2試合目、9回表で自分のフライが試合終了の合図となって呆気なく終わってしまった――
嬉しさと悔しさが一挙に舞い降りたあの春の季節。それはぐるぐる回って、もう10年経ったのか。
大人になったね、と沈丁花の香りは少し寂しく語りかけ、そして同時に、奇跡の勝利のあの高揚感を甘美な記憶で私に思い起こさせた。
私の心の少年が少しだけ目を覚ます。
そして、うわわわ、読んでくださってありがとうございます。初恋とか不器用な恋とか詰めこみたーい、って思い書いたお話だったので、そう言っていただいてすご~く嬉しいです(*^^*)
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