花言葉ものがたり
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文字数 725文字
tukinoniwa
作家仲間の日下部良介さんからのリクエストになります。お花のリクエストも受け付けてますので、声をかけてくださいね。
さて、紫陽花は全体としては「移り気」「浮気」「無常」などという花言葉があります。ただ色が変化する花ということもあり、色によって全く性格の違う花言葉を有しています。毒のある個体があったり、花びらのように見える部分はガクであったりと、意外な素顔をたくさん持っている花です。
「紫陽花」
「おや奥様、一足違い」
もぬけの殻の社長室。秘書が、胡散臭い笑顔で私を出迎えた。
「待っててって言ったのに」
「わがままを言っちゃあいけません、大事な会議があったのです」
「で? 私はスケベジジイと一緒に食事をすればいいのね?」
夫の大事な取引先とやらの。
「佐奈さん……」
「なによ?」
「いえ、よく社長に本性を見破られずにいると思って」
「あなたにはわかってるっていうわけ?」
横目で睨んだのに、男に怯んだ様子はない。
まあ『ご主人さま、お帰りなさいませぇ』なんて台詞を吐いていた頃の私を知っているのだから仕方がない。そのうえ私は、夫と付き合い出すまで、この男の所有物だった。
「アンタといると、気分が悪くなる。行くわ」
踵を返した背中に「素敵なネイルですね」と、男が声をかけてくる。
「紫陽花よ。きれいでしょう。私の大好きな花なの」
男に向かって手を突き出すと、彼は恭しく爪先に唇を寄せた。
「たしかにあなたにぴったりですね。移り気、浮気……そして毒がある」
私は頷きながら男ににっこりと微笑んでみせた。
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