ミモザ

文字数 1,047文字

第三話は「ミモザ」です。

……花言葉は『友情』『優雅』『真実の愛』『密かな愛』などです。

2020/04/25 21:56
2020/04/26 08:42

tukinoniwa

「ミモザ」


 バラにラナンキュラスにマーガレット。

 純白から覗く、小さい黄色のミモザ。


 友人の結婚式に出席した彼女を、ホテルまで迎えに行った帰り道。

 助手席のシートに身体をあずけた彼女は、どこか呆けたような顔をして、手にしたウェディングブーケを見つめている。


「疲れたのか?」

「そんなんじゃない」


 夜景が綺麗に見えるという噂の駐車場に車を停める。ふと横を見ると、彼女の目から滴る涙が頬をつたい、顎先からブーケへ落ちていくところだった。


 なにしろ、今日結婚した友達が嫁に行くまでは、自分も結婚をする気はないと、俺のプロポーズを断った女性だ。いろいろ考えるところもあるんだろう。


 が……とりあえずその友人がさっさと結婚してくれて、俺は嬉しい。

 そっと彼女の頭を撫でながら、ポケットの中の指輪の重みを確かめた。

2020/04/25 21:57
2020/05/01 11:33

nagal_nd

失礼します。ミモザで描いた落書きがあったので、お目汚しですが置いていきます。
2020/05/01 11:37
nagal_ndさん、素敵なイラストありがとうございます。

何かを秘めているような横顔。

彼の背景にある物語を覗いてみたくなってしまいます。手の中のミモザは「友情」でしょうか「密かな愛」でしょうか?

2020/05/01 15:09

面白そうな企画でしたので参加させていただきます。

花言葉っていろんな意味があって面白いですよね。


―――――


 昼下がりの空港、行き交う人の波から逃れるように壁際で立ち止まる人影が二つあった。

「どうしても帰らなきゃいけないの?」

 寂し気に尋ねる女性の手にはミモザの花が握られている。

「留学だったからね。余裕ができたらきっと遊びに来るよ」

 答える男性は寂し気に笑った。まるでもう二度と戻ってこられないことを知っているかのように。

「日本が好きだっていってたよね? 住んじゃえばいいんじゃない?」

 声こそ弾ませているようだが、彼女の瞳はすがるようだった。

「そうできれば僕も嬉しいんだけどね。家族を支えないといけないから」

 優しい顔で、彼は友人の頭へと手をのせる。

 彼女は歪みかけた顔を隠すように顔をうつむけると、その視線が手に持つ黄色い花をとらえた。

「これ、あげる」

 顔を下げたまま、男性の前にそっと手が差し出される。

 握られたミモザの花は小さく震えていた。

2020/12/03 15:36
noffさん、投稿ありがとうございます。

切ない短編。

「真実の愛」「密かな愛」

彼女は気持ちをミモザの花に込めていたのでしょうね。

この思いが彼に届くのか。

いろいろな想像をかきたてられる作品でした。

2020/12/04 07:46

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