第11話 パレスチナ問題の背景・ユダヤ教におけるイスラエル問題

文字数 2,717文字

 ここで一旦話を逸れるという訳ではないが、イスラエル民族とイスラム世界の確執を説明していく。

 ここにおいてユダヤ民族はイスラエル民族、ユダヤ人はイスラエル人に置き換えていく。理由としてユダヤ人とは蔑称に近い言い方もある。長年の風習なので気にしない方々もいらっしゃるだろうが、神がユダヤ人に与えた名称「イスラエル」を表記していくことにする。

 尚、イスラム教についても同じ様に蔑称は避けることにする。イスラム国という表記などは避け、師などの敬称もしっかり使うものとする。

 そもそもの話は紀元前にさかのぼる。イスラエル民族に現在の領土からエジプトのシナイ半島までが特別な宗教的意味合いを持つ聖地である。
 旧約聖書においてイスラエル民族は現在の土地を神から約束として与えられた土地としてみなしているのだ。
 イスラエルはかつてダビデ王を初めとする王朝で栄えた。ダビデ王の後継者であったソロモン王の時代には「ソロモンの栄華」と呼ばれる程豊かに発展していった。
 しかし、ソロモン王は異教の神々を崇めたことから後の世代は呪われるとしてソロモン王亡き後に王国はイスラエル王国とユダ王国二つに分裂した。その仔細は旧約聖書に載っている。簡単に言うイスラエル民族には十二の部族がおり、それが分裂した結果でもある。
 しかし、イスラエル王国がアッシリアに敗北し、十部族が追放され、 ユダ王国がバビロニアに征服される。エルサレムと第一神殿が破壊され、大半のユダヤ人が捕囚されるのである。

アッシリア帝国征服時、イスラエル民族は他民族との混血を行う様になる。その結果産まれたのがサマリア人である。
 その後、中東方面の覇権はアケメネス朝ペルシアに変わる。

 アレクサンドロス大王の手により、アケメネス朝が滅びるとイスラエル民族はアレクサンドロス大王の支配下に入った。

その後にようやくエルサレムに戻り、再び祖国を創って行き、神殿なども再建していく。

 しかし、ローマ帝国の発展によりイスラエルは国家として属州扱いになる。ここからイスラエルはメシア待望論が強くなる。
 そして紀元頃にイエス・キリストの生誕に繋がる。

 イエス・キリストというと何か偉い人と社会では認識されがちである。それ自体は間違ってはいない。正確に語るとイエス・キリストはキリスト教において人の肉をまとった地上に降臨した神そのものでもある。

 但し、イスラエル民族が望んだのは強い征服者としてのメシアであってイエス・キリストの様に愛を唱える人物ではなかったのである。

 このことからイスラエルにとってイエス・キリストはイスラエル世界を惑わす人物として議会に危険視され、イエス・キリストは十字架刑に処されるのである。

 キリストが天に戻った後、紀元七十年頃からイスラエル民族によるローマ帝国への反乱戦争が勃発し、イスラエル民族は敗北し祖国を失った。民族拡散、ディアスポラと呼ばれる出来事である。因みにこの時にエルサレム神殿が破壊され、そこに埋蔵されていた金銀は後のコロッセオ建設の為に用いられたのである。

 それからローマ帝国では徐々にキリスト教が発展していき国教となり、キリスト教の勝利となった。

 ここで問題になったものの一つがイスラエル民族に対する扱いである。イスラエル民族は最初の啓典の民であったが、同時にイエス・キリストという神を一度殺している嫌われ者でもあったのだ。
 この結果、多くのイスラエル人がゲットーと呼ばれる地区に収容される歴史が形成されていく。
 つまり迫害の歴史である。

 その過程でキリスト教にとって金に仕えることは忌避されていた。旧約聖書でも金貸しの際には利子を取るべきではないとも明記されていた為にキリスト教はイスラエル人に金貸しの仕事を押し付けた。

 結果からいうとロス・チャイルド家を初めとするイスラエル人の成功者が現れ始め欧米社会に経済的に大きな影響力を持つ様になった。
 それでも、イスラエル人はキリスト教に嫌われていたのである。

 その間に中東方面ではイスラム教が誕生し、凄まじい勢いで発展し、エルサレムなどを支配していくのである。

 時代が決定的に動いたのは近代ナチス・ドイツの台頭である。ヒトラーはアーリア人至上主義を掲げ、第一次世界大戦の敗北をイスラエル人が裏から操作したものだと喧伝した。その結果、多くのイスラエル人が失望し、国を追われた。ホロコーストという歴史上最大の惨劇が起こり、イスラエル人達はシオニズムに傾倒する様になった。つまり祖国イスラエルに帰還したいということである。この頃、世界の経済は米英の二国が中心であったが、その両国においてイスラエル人は経済的に大きな影響力を持っていた。それは今日でも同じである。

 大英帝国はバルフォア宣言を初めとするイスラエル国家やイスラム世界に対して二枚舌外交をした結果、イスラエル国家の所有権をめぐってイスラエル人とイスラム諸国の戦争が始まるのである。

 補足しておくとイスラエル国家はイスラエル人、キリスト教、イスラム諸国の聖地である。特にエルサレムはこの三者にとって譲れない聖地であることから流石に国際連合もイスラエル国家にエルサレムを首都として認めることはなかったのである。

 因みに今日においてイスラエル人が祈りを捧げる嘆きの壁とは当時のエルサレムの遺跡である。そこでイスラエル人は苦難の歴史を神に祈っているのである。

 イスラム教では岩のドームと呼ばれる預言者ムハンマドが大天使ガブリエルの啓示を受けた土地としてメッカ、メディナに次ぐ聖地となっている。

 キリスト教においては神の都である。イエス・キリストを讃える聖墳墓教会などがある。

 その後、イスラエル国家は米国の後ろ盾で核兵器を極秘裏に所有し、中東における戦争を有利に進めていった。当初イスラム世界は一致団結に近い形で対抗していた。その為、石油の価格の上昇などで対抗措置をとったこともあった。

 しかし、米国の介入によりイスラム世界も又勢力が幾つかに分裂したのであった。

 簡単にいってしまえば親米よりな国と反米的な国が混在している。サウジアラビア王国はどちらかと言えば親米的であるし、故ホメイニ師が建国したイラン共和国は反米的な国である。ちなみに現在のイラン共和国を率いているのはハメネイ師である。
イラン共和国はシーア派というイスラム教における一割から二割程の教派の最大勢力である。
サウジアラビア王国は王制であり、スンニ派である。
イラク共和国はその両派の混在地域だとみられる。

この辺りに関して大まかな背景の説明を一旦終えようと考える。

それではキリスト教の話に戻るとする。
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