第13話 教会の凋落・共産主義の台頭・ロシアの野心

文字数 2,446文字

 現在では勢力は凋落の一途を辿っている様にも見える。無論、アジア、アフリカでは中心的な宗教になりつつあるし、現代でも屈指の勢力だ。一枚岩でないのが痛いところだが。
 現代の覇権は中華に移る可能性の話はした。つまるところ、共産主義が台頭してきたのだ。それもマルクス主義ではない独裁的な政権が台頭している。今後、世界は技術の進歩と共に中華に覇権の座を一時明け渡すことになるだろう。
 米国や欧州による対中華網は確かに確立しつつある。それがどの程度の効果を発揮するのかは判断し難い。勢いは中華にあるが、技術は欧米がまだ死守している段階なのだから。
 だが、その隙を狙い、ロシアが台頭していることを私達は忘れてないだろうか。
 ロシアは屈指の資源大国である。鉄、石炭、金、ダイヤモンド、原油、天然ガス、木材、あらゆる資源がある。
 国内の人口も億に達し、経済規模も世界のおよそ4パーセントを占めるまで回復してきた。これは米国の経済制裁下にあってもこの数字なのだから驚異的である。
 核魚雷の開発など軍事技術も世界有数である。宇宙産業も高度な技術を有し、国際宇宙ステーションの開発にも携わっているのだから先進国と何ら変わりない様にも見える。
 旧ソ連の崩壊から立て直しを図ったロシアは崩壊からわずか20年程でかつての勢力を取り戻しつつある。それも米国と渡り合える数少ない国の一つとして、だ。
近年ではウクライナに侵攻しようと言う動きを見せるが、北大西洋条約機構の東方拡大に対抗する形で動いている。
もし、ウクライナが軍事を増強し、欧州連合に加盟するなら西側は地中海と黒海の海軍力を掌握出来る。
逆にロシアが中華の台湾侵攻に合わせて動くなら西側は勢力を後退させることになる。
ただ、実際に侵攻した場合、世界大戦が勃発する懸念がある。
 しかし、その実現は中華が望まない道筋だ。中華とウクライナは経済関係において深い間柄にある。
 ウクライナは自国の軍事製品を中華に売っている。
 対して中華はウクライナの巨大な穀倉地帯に眼を付け、農業のビジネスを展開している。
 つまり、ロシアに攻められると中華も困るのだ。特にオリンピックを控えている以上、中華は経済の起爆剤にもしたい上、ウクライナの穀物を欲しがっている。中華からすれば米国にばかり農業品目を輸入に頼るより危険度を分散させておいた方が良いと判断するのだろう。
 だからこそ米国はこの問題が北大西洋条約機構の問題であると共に中華の問題とも認識している筈だ。
 中露の同盟に亀裂が入るのは米国としては歓迎する展開でもある。
 ウクライナの問題はそれ程入り乱れている。
 ロシアとて中華に後塵を拝すつもりがないのも実情であり、かつての超大国としての誇りもある。この情勢下にあっては政治的な利益を獲得しない限り、容易く退却出来ない状況をつくりだしてしまった。
そして、侵攻は現実となった。ロシアは政治的成果をあげるまで撤退はないとみえる。
ロシアは世界に批判されている。その上金融機関を国際社会から閉め出されているが、怖れていない。中華との貿易で外貨を獲得出来るからだ。逆に欧米諸国が投資してきた資産を接収して当面をやりしのぐ手もある。
但し、北大西洋条約機構との貿易の締め出しはロシアにとって痛い。それ故に中華への依存度が高まって行き、それによって国力の回復を図るつもりであろう。
中華には三兆ドルの外貨がある。その三分の一でも投資に回せばロシア経済が復興する。
中華からすれば食糧貯蔵庫が手に入る様なもので両国に利点がある。更に国連での非難決議も疑問である。反対国は少ないとしても棄権した国が多すぎる。これは明らかに米国の国際的影響力の低下と中華の国際的影響力の上昇が顕著に視てとれる。つまりアジア、アフリカを中心に包囲網に経済及び軍事的な抜け穴が存在している。
更に言えば現在の侵攻は黒海の封じ込めも狙っているかも知れない。ロシアに余力はあまりないが黒海を手中に治めた場合、交易中継地点を獲得出来る。ウクライナの豊富な穀物資源に関税をかけることも可能になる。たとえ、関税をかけなくとも交易都市としてロシアの軍事、経済力を底上げする可能性がある。その為の都市開発の需要をロシア企業が担い、経済を一部活性化させる狙いもあるとみえる。ドンバス地方は侵攻理由であり、実際は黒海の既得権を得たい気持ちが窺える。そうなれば、小麦が欲しい中東諸国に更なる影響力を及ぼせる様になる。
 ロシアは強かな大国なのである。
 オリガルヒと言う資本主義勢力を利用しながら経済発展を遂げ、且つ政治はほぼ独裁という形は中華に似ている。

ゆえに我々は油断してはならない。現在、世界で民主主義は危機に瀕しているのだ。米国の若者がそうである様に小さなことからで良い。日本にも国民にとって良い変化が必要なのである。当たり前の様に生活が出来て当たり前の様に投票に行ける社会が必要なのである。人間の心を機械化してはならない。かつて教会が人の在り方を担っていた様に国民にとって健全な生活が必要なのである。その土台が崩れれば民主主義も崩壊しかねない。

この場合、西側の勝利の要件は二つ存在する。
一つは第二次ロシア革命、もう一つは米国の中心であるウォール街が動くかと言うことである。ウォール街は世界の富の中心である。ウォール街が動くと言うことは世界が動くと言う事実と同義なのである。

現在、米国はウクライナとロシアの戦いでウクライナを支援している。だが、国防総省はこの戦争に対して早急な和平を結ばねば敗戦が濃厚だと考えている。

独裁政治は民主主義とは相容れないものである。
しかし、民主主義が倫理的に堕落した時に生まれるのが独裁政治でもある。今の西側を悩ませる不安要素なのである。世界に危機が訪れた場合、独裁者が現れるのは必至でもある。
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